海戦後
危なかった!あのままだったら旗艦が、銀河一美少女ティリスちゃん号が大損害を受けるところだった!
咄嗟に味方の防空圏へ突っ込んでしまったけど、そのお陰で最悪の事態を回避できたんだから悔いはない。それに、さっきから感じている不思議な感覚は今も変わらない。
そのまま弾幕の中を飛び、目の前に居たセンチネルのスターファイターをアリアの照準補助無しに撃墜できた。
『ティナ、申し上げたいことは山ほどありますが今は控えます。敵艦は旗艦が受け持つので、引き続きスターファイターの撃破を優先して頂きたいと』
「了解!皆は無事!?」
『マスターフェルと一緒に防空圏外縁を飛びつつ、連携してスターファイターを撃破しています。マスターセシリアが初陣とは思えぬ旺盛な戦闘意欲を見せていますが』
「無理はしないように伝えて……っと!」
真下から突き上げてきたスターファイターを相手に逆噴射でビームを避けて、直ぐにスラスターを切り替えて急上昇。飛び越えてしまったスターファイターの背中にビームを叩き込んだ。
宇宙空間は爆散した破片も充分に脅威になる。地球上より遥かに速い速度で飛び回っているし、爆発したエネルギーが減速することもない。
だから接近して破壊してしまうと、破片がこっちのシールドに突き刺さってダメージを受けてしまう。でも、それは仕方無い。
「アリア!照準サポートは要らないから、探知を優先して!」
『畏まりました』
アリアに指示を飛ばした瞬間、閃光が走った。旗艦が発射した大出力のビームが、最後の護衛艦に突き刺さって大爆発を引き起こした。
周りに居たスターファイターが、何機か巻き込まれて爆発するのを確認した。
「よし、後は掃討するだけだよ!」
随分と派手にやってしまった自覚はあるけれど、それでも地球の危機を回避できたから充分かな。
一時間後。完全に掃討が終わった私達は、母艦へ着艦した。
銀河一美少女ティリスちゃん号そのものもあちこちに被害が出てしまった。
「スターファイターは直ぐに整備するけど、戦力はがた落ちしたね。補修用の部品で組み上げてみるけど、全部は無理だよ」
ふよふよ浮いてるフィーレが端末を操作しながらそう愚痴った。私達以外のAI制御させていたスターファイター七機は全滅。
ザッカル局長が付けてくれた無人のフリゲート艦も三隻が撃沈された。予想以上にこちらの被害が大きい。やっぱりセンチネルは強敵だ。
「快勝とは言えないが、初期目標は無事に為し遂げられたな、ティナ」
スターファイターから降りてきたセシリアが、特殊な翼をパタパタしながら上機嫌な様子で声を掛けてくれた。
「お疲れ様、セシリア。大丈夫だった?」
「うむ、初陣ではあったが心躍るものはあった。やはり狩りは良いものだ」
ゼバ星系の人達には、独特な価値観が生まれている。まあ、狩人みたいな感じかな。
まあつまり、メンタル面の心配は要らない。
「クレアはどう?」
「お二人に付いていくので精一杯でした。やっぱり私は争いに向かない性格みたいです……」
ちょっと落ち込んでるなぁ。
「大丈夫、今回は事情があったけどクレアは出来ることをしてくれるだけで充分助かってるから」
パイロット適性が全てじゃない。適材適所って言葉もあるし、出来ることをしてくれたらそれで充分だ。
「あーーっ!疲れたぁ……」
「おねーちゃん、おつかれ」
「フィオレ、ありがとね。どうだった?」
コクピットから飛び出したフィオレは、そのままフヨフヨ浮かびながらフィーレと触れ合ってる。セシリアとクレアの事を丸投げしちゃったからなぁ。疲れるのも当然だ。
「セシリアはやっぱり戦闘全般に才能があるわよ。逆にクレアは周りをよく見てるから、後方に向いてるわ。慣れてくれば、頼もしい指揮官になるんじゃない?
フィーレ、逃げないの。お姉ちゃんに癒しをちょうだい」
「……ん」
そのままフィーレを抱き締めてフィオレは動かなくなっちゃった。今はそっとしておこう。
セシリアとクレアに休むよう伝えて、私はアリアと一緒にブリッジへ上がった。途中でお小言を言われると覚悟していたんだけど。
「それがティナの決断ならば尊重し、サポートするのが私の存在意義です。それに、あの行為はティナ限定で有効であると判断しました」
「ありがとう、アリア」
アリアのサポートが無いと何もできない。それは変わらない。
「本当は、あんな無茶をしたことについてお説教したいんだけどね。今回はティナちゃんが無茶をしなかったら、私達も危なかった。
だから、お説教はまた今度。今はゆっくりと休んで☆」
ブリッジで仁王立ちしていたばっちゃんを見た時は生きた心地がしなかったけど、仕方無いなぁって笑ってくれた。
「ちゃんとお説教も聞くよ、ばっちゃん。でも今は、皆が無事で本当によかった。フェル、ごめんね」
また心配かけちゃったけど、フェルは何も言わずに私を抱き締めてくれた。その瞬間一気に疲れと睡魔が襲ってきて。
「お帰りなさい、ティナ。ゆっくりと休んでくださいね」
フェルの優しい言葉と柔らかい感覚に身体を預けて、私は意識を手放した。
いきなり脱力したティナを見てティリスは一瞬だけ焦りを感じたが。
「意識レベル低下を確認。深い眠りについたと判断します」
アリアの報告を聞いて胸を撫で下ろした。
「あんな無茶をしたらねぇ。フェルちゃん、お部屋で休んでおいで。後始末は大人の仕事だよ☆」
「ありがとうございます」
フェルはティリスの言葉に甘えて、ティナをしっかりと抱き抱えてブリッジを後にした。
残されたティリスは深々と艦長席に腰掛けて、傍にはアリアが控えた。
「あれはやっぱり殿下の?」
「未来予知である可能性が高いと判断できます。ただし、使い方を一切学んでいませんからマナの消費が激しいのでしょう。本来ならば使えない筈ですが」
「ゼバ星系で封印の一部が解かれた結果、かぁ。このまま殿下の素性を隠し通すのは難しいかな?」
「はい、そう判断します。それ故に、本人を護るためにも速やかなる情報共有と訓練を推奨します」
「それを決めるのは女王陛下と王妹殿下だよ。ただ、アードへ戻ったら奏上してみる。
さっ、アリア。ちょっと手を貸して。子供達が頑張ってくれたんだから、後始末くらいは私達がやらないとね☆」
「畏まりました。広域スキャンを開始します」
死闘の末、地球の危機を回避することに成功したティナ達であったが、新たな課題が幾つも現れることになる。前途多難な若者達を見て、ティリスは内心深々と溜め息を吐くのだった。




