アルファ・ケンタウリ星系
クレアからの情報を受けた私達は、直ぐに母艦である銀河一美少女ティリスちゃん号を呼び寄せてセンチネル偵察艦隊が待機している星系へ向けて移動を始めた。
目的地は、太陽系から一番近い恒星系であり居住可能な星としてとして前世でも有名だったアルファ・ケンタウリ星系だ。
二つの恒星が連なってる星系で、直ぐ近くに別の恒星があって三連星なんて呼ばれてるって聞いたことがある。距離は大体四光年くらい。
地球の技術でも到達するには二万年以上掛かるなんて言われていて、当時は宇宙のスケールの大きさを実感出来た良い想い出だ。お隣でこんなに時間が掛かるんだからね。
でも、アードの技術的には直ぐ傍の距離だ。センチネル偵察艦隊と戦うことになるから、軌道上で待機していたプラネット号も呼び寄せた。
それに、ザッカル局長が率いてきた無人フリゲート艦を四隻も付けてくれた。
一般的に無人艦は有人艦には劣るけど、アリアが管制してるから平均以上の性能を発揮してくれる筈。
「あのタイプの偵察機は、航続距離がとても短くて通信装備も貧弱なんです。だから収集した情報を一旦母艦へ送信して、母艦は偵察機から送られてきた情報を纏めて定期的にマザーへ送信します。
あの偵察機をハッキングした結果は、母艦がマザーへ情報を送信するまでまだ猶予があることが分かりました。だから、まだ間に合います」
センチネル相手にハッキングなんてアードでも出来ない芸当だ。改めてノームはアード以上に高い技術力を持っていたことが分かる。
「本当ならあの偵察機を経由して偵察艦隊もハッキングしたかったんですが、その……」
「大丈夫だよ、クレア。ハッキリ言って良いからね」
「はい……出力が足りなくて出来ませんでした」
申し訳なさそうにしてるクレアを見ると、何とも言えない気分になる。通信設備ひとつで見ても、アードとノームの技術力に差があるのが分かるね。
「世の中、上には上が居るんだよ☆」
ばっちゃんはあっさりしてるな。まあ、使えるものは何だろうが利用するだけだ。
「ハッキング出来るなら、何でアンタ達はセンチネルに負けたのよ?」
「私も気になる」
「ちょっとフィオレ、フィーレ」
この姉妹は聞き難いことを!
「警戒している状態では、ハッキングが成功しないんです。それに、ハッキングを試みた相手を取り逃がせばマザーへ技法が流れてしまいます。
そうなると、センチネルは物量だけじゃなくて電子戦能力まで学習してしまいますから」
クレア曰く、ノーム軍は圧倒的な火力で相手を押し潰すのが基本戦術。だからセンチネルはそれに対抗するために、火力を上回る物量戦術に適した進化を果たしたみたいだ。
ばっちゃん曰く、物量が伴った正攻法ほど厄介な戦術はないんだって。
「奇襲、陽動、牽制、策略。これらは全部弱者の戦い方だよ。絶望的な物量に裏付けされた正攻法を取られたら、あとは消耗戦に引きずり込まれて息切れするまで足掻くしかない。
私達は、そうやって負けたんだ」
何処か遠い目で語るばっちゃんの言葉には重みがあった。
「クレアさんが取ってくれた情報によると、敵艦隊は空母型一隻に護衛艦が三隻ですね」
「典型的な辺境探査艦隊ですね」
太陽系が辺境かぁ。いやまあ、天の川銀河の端っこだけどさ。アードもそうだけど、銀河は中心部の方に星が集中してるからなぁ。
「ふむ、狙うは空母型か」
「はい、セシリアさん。護衛の小型艦の通信設備は貧弱です。空母型が発信する前にこれを撃破できれば地球の安全は当分保たれます」
「どうして?偵察艦隊の連絡が途絶えたら確認しそうだけど」
「うん、私もそう思う。どうなの?クレア」
「宇宙は危険で満ちています。センチネルが運用している偵察艦隊は万単位存在して、それら全ての定期連絡にマザーが気を配ることはありません。
例外はありますが、再度そのエリアに偵察艦隊が派遣されるまで数十年単位の時間が掛かります」
「それ、何気に重要な情報だよね?☆」
「ええ、なぜそんなシステムになっているのか私達にも分かりません。マザーの意思なのか、その様に設計されたのか。
例外があるとすれば、明確に交戦中の敵が存在する場合だけです」
「だから、偵察艦隊を殲滅しても意味が無かったのか……」
ばっちゃんの呟きが聞こえちゃった。多分、センチネルとの生存戦争の話だよね。その頃なら明確な敵対勢力としてアードが居たから直ぐに動いたんだ。
『間も無く目的地へ到着します。本艦隊はステルスモードを維持しており、可能な限り接近しますが真正面から交戦した場合不利となります』
「相手の母艦は空母型だもんね。クレア、スターファイターの数はどれくらいになるかな?」
「はい、護衛艦を含めれば百機を超えると思います。
だから、母艦である空母型を速やかに無力化する必要があります」
「ばっちゃん、作戦は?」
「常道なら砲撃を交わしながら距離を詰めて接近戦に持ち込むんだけど、それだとマザーに連絡されちゃうよね」
そうだ。それだと意味がない。ラーナ星系の戦いで分かったことだけど、やっぱり艦艇よりスターファイターの方が小さくて探知され難い。今回みたいな戦いで、これを活かさない理由はない!
「分かった、アリアは船を出来るだけ艦隊に接近させてほしい。
空母型の弱点は知ってるから、私がスターファイターで飛び込んで警報を出される前に撃沈する。
そして、残りの敵を殲滅する。それしかない!」
「スターファイターで対艦攻撃をするつもりですか!?自殺行為です!」
「それが常識的な反応よね。でも、それをやれちゃうのがティナなのよ」
何かフィオレに呆れられたような気がするなぁ。別に難しくないよ?
「相手は警戒してないわけだし、そんなに難しい事かな?確かに弾幕を潜り抜けるのはちょっとスリルがあるけどさ」
「少なくとも、教本には絶対に止めるようにと書かれていたな。
それをやれてしまうのがティナだと聞いたが、フェルが心配する理由もよく分かるよ」
ああうん、フェルが心配そうに私を見てる。また心配を掛けてしまうけど。
「ごめん、フェル。また危ないことちゃうけど、これ以外に地球を守る方法はないんだ」
地球の皆さんを見捨てるなんて選択肢は無い。
「ティナが無茶をしようとしているのは、分かっています。そしてそれは必要なことだと理解しています。だから、私は止めません。帰ってきてくださいね」
「うん、絶対に帰ってくる。約束だよ、フェル」
フェルと抱き合って、私達は直ぐに格納庫へ走り出した。




