星海を渡る想い
『地球から提供されたデータだと、この辺りに探査機がある筈なんですが』
クレアと一緒に編隊を組んで地球の探査機パイオニアの探索を行ってる最中のティナだよ。
具体的に言うと私とクレアのペアが10号、フィオレとセシリアのペアが11号を探すことになったんだ。
方角がまるで違うし、距離も離れているからね。ある程度の予想位置を地球から提供されているし、見付けるのは簡単だと思ってたんだけど。
「うん、まさかこんなにスペースデブリがあるとは思わなかったなぁ」
私達を困らせているのは、宇宙空間に漂う宇宙のゴミ、スペースデブリだ。
これ迄地球人類が打ち上げてきた人工衛星や探査機を含めた、色んな機材の残骸が漂っているんだよね。
これ明らかに一般公開されていない探査機とかあるよね。そう言えば、前世でも極秘に打ち上げられた探査機や人工衛星の都市伝説があったなぁ。
とは言え、こんなものでもセンチネルに発見されたら大変だから私達は見付ける度に位置情報を母艦へ送って回収してる。
多分持ち帰ったら色々不味い物が含まれているような気がするけど、センチネルに発見されるよりは遥かにマシだから、その辺りはジョンさんやハリソンさん達にお任せしよう。政治的なことは良く分からないし、うん。
ティナがまた国際的に見ても色々とヤバい代物を善意で回収して、しかも丸投げされる未来が確定した瞬間である。ジョンさん達は泣いて良い。閑話休題。
『思っていたよりも地球の探査機が多いですね、ティナさん』
「地球人がそれだけ宇宙に関心を寄せていた証拠だよ。ちゃんと地球へ連れ帰ってあげよう。センチネルの事もあるからね」
地球から遠く離れた場所を漂うくらいなら、地球へ帰りたい筈。
物に意思が宿るなんて日本的な考え方だけど、感覚的にそう思うんだから仕方ない。別に悪いことじゃないからね。
まあそれより。
「それにしてもクレア、飛ぶのが上手いじゃん。今回が初めてなんだよね?」
『はい、実際に飛ぶのは初めてですよ。ただ、宇宙を飛ぶのは慣れているんです。
ノームのものと機材は違いますが、基本が同じだから習得も難しくありませんよ』
「ほうほう、クレアって意外とアグレッシブだよねぇ」
クレアって見た目はまさに清楚なお姫様なんだけど、お酒飲んで暴走したり鉱石を量産したり何かと活発な性格してるんだよね。
最近はフィーレと一緒に色々やってるみたいだし、元気になってくれるならそれが一番だ。ジョンさん達には迷惑を掛けないように気を付けないといけないけどさ。
っと、通信だ。
『ティナ、クレア。聞こえているか?』
「聞こえてるよ、セシリア。どうしたの?」
『ああ、こちらは探し物を発見することができた。確か、パイオニア11号だったか。
状態も悪くないし、これから回収するところだ』
「意外と早かったね?」
『セシリアの勘よ。まさかアリアがスキャンするより先に見付けるなんて思わなかったわ』
おー、フィオレが呆れたような声を出してる。確かに凄いな。
『昔から物を探すのは得意なんだ。そちらを手伝おうか?』
「んー、もう少し探して見付からなかったらお願いするよ。先に休んでて」
『承知した。だが、疲れはない。折角の機会だからもう少し経験を積みたい。フィオレ、付き合ってくれるか?』
『言われるまでもないわ。じゃ、私達は適当に飛んでるから何かあったらすぐに知らせて』
「ありがとう、無茶しないでね」
『アンタには言われたくないわ。あんまりフェルを心配させるんじゃないわよ。それじゃ』
うーん、耳が痛いな。
それからしばらくクレアやアリアとお喋りしながらのんびり探していたら。
『センチネル反応検知!ステルスモードの出力を上げます!』
突然アリアから通達が来て、展開していた隠蔽魔法の出力が上がった。って、センチネル!?
『ティナさん!』
「分かってる!アリア、誘導をお願い!地球が見付かっちゃう!」
『畏まりました、ナビゲーションを開始します』
アリアの誘導に従って、ステルスモードで出せる最大速度で現地へ向かうと、そこにはあちこちボロボロになってるけど前世で見た写真と同じ姿の探査機、パイオニア10号が漂っていた。
でも、それだけじゃない。
パイオニア10号がまるで小さなコバンザメのように見える大きな鮫のような機械。
『センチネルの偵察機です!』
「まさか、見付かった!?」
地球が危ない!
『待ってください!アリアさん、通信機の出力を最大に!早く!』
『畏まりました』
「クレア!?」
クレア機のコクピットでは、クレアが眼前に出現した様々な画面を手早く操作していく。言語はこれまでアリアが学習したノーム語が使用されており、何をしているのかはアリアでさえ理解できなかった。
アリアとティナの疑問を他所に、クレアは無心で端末を操作していく。そして数分後。
『ティナさん!あの探査機ごと偵察機を破壊してください!今すぐに!』
「わっ、分かった!
……ごめんね」
指示を受けたティナは、慌てながらもしっかりと照準を合わせてトリガーを引いた。
発射された高出力のビームは寸分違わずパイオニア10号とセンチネルの偵察機を貫き、高エネルギーの濁流を浴びた両機は閃光と共に爆発。
パイオニア10号は永い旅路の末、遂に故郷へ帰還すること無く生涯を終えた。それは、地球を守るために払われた、掛け替えの無い犠牲であった。
「クレア、一体何を……」
『ごめんなさい、詳しい説明はまた後で。今は時間がありません。今ならまだ間に合います!
直ぐ近くに待機している偵察艦隊を殲滅すれば、地球の情報をマザーへ知られずに済みます!』
「センチネルの偵察艦隊が直ぐ近くに居るの!?分かった!アリア、ばっちゃん達に知らせて!」
『畏まりました!』
ティナはクレアの言葉に疑問を抱かずに信じた。それは彼女に対する信頼の証であり、考えるより先に行動する彼女の悪癖が良い方向へ作用した結果でもある。
地球人が知らない場所で、後にケンタウリ海戦と呼ばれる地球を守るための戦いが始まろうとしていた。地球の運命は、またしても異星人の少女達に委ねられたのだ。




