政治
ティナ達がパイオニア探索を始めた頃。軌道上で待機していた銀河一美少女ティリスちゃん号が突然地球から離れ、同時に国内に居た筈のティナ達が姿を消したことで衝撃を受けた合衆国上層部であったが、間も無くジョン=ケラーによる報告によって事態を把握した。
統合宇宙開発局が異星人対策室を介して、ティナ達に探査機パイオニアの回収を依頼した事実を知ることが出来たのである。
政府を介さない姿勢に疑問が生じたが、異星人対策室は政府に対して事後承諾や事後報告が許されている。
これはジョン=ケラーの人柄、そしてアード関連は迅速な対応が求められる故の権限であるが、それを利用するような動きにハリソン大統領ら首脳陣は不信感を募らせた。
交渉の最中ではあったが、統合宇宙開発局の真意を探るために人員を割き、事情を聴くために異星人対策室よりジャッキー=ニシムラ(変身済み)を招集した。
彼は椎崎首相の案内を務めていたが、色々と特殊(配慮した表現)で誤解を受けてしまう可能性を考慮してメリル=ケラーが役目を代わった。
ジャッキーが選ばれた理由は、ある意味最も公正な人物だからである。少なくとも彼は、ケラー一族や異星人対策室の仲間達以外の地球人にまるで関心が無いからだ。
ホワイトハウスにある一室で人払いを済ませ、ハリソン大統領は対面に座ったジャッキーと密会を開く。
「なるほど、その様な事情が。室長から詳細は聴いておりましたが、マインツ主任も小賢しい真似をするものですな」
「依頼そのものは問題ないし、ティナ嬢達が受け入れた以上文句はないが、わざわざ異星人対策室を通して政府に知らせずに依頼を出したのが気になってね」
「大統領閣下の御懸念は理解できます。これは政治的なものでしょう。
現在異星人交流の最前線に立つのは、我々異星人対策室です。統合宇宙開発局の中には、この状況を面白く思わない者達が居るのですよ。
以前から兆候はありましたが、この様な小賢しい真似をするとは」
「ふむ、つまり統合宇宙開発局はアードとの交流の主導権を握りたいと?」
「その通りです。しかしあそこは各国が出資しているので、各国の思惑がモロに影響しますし、セキュリティにも不安があります。
そして今回の仕掛人であるマインツ主任は、能力はありますが人格面に問題がありますな。
個人的な私怨もありますが、彼を相手にすればティナ嬢も不快感を覚えるでしょう」
ジャッキーの言葉にハリソンは眉をひそめた。
「人格面に難があると?」
「彼の頭には栄達しかありません。地球とアードのより良い関係など考えもしないでしょうな。
ティナ嬢達は必ず探査機を回収するでしょう。それも簡単に終わるはずが、わざわざ時間をかけて行っているのです」
ジャッキーの意味深な言い方に、ハリソンは目を見開く。
「……まさか、ティリス殿は察しているのか?」
「その可能性は高いかと。ティナ嬢が最も信頼する地球人は、謎の繋がりがある椎崎首相を除けばケラー室長であることに疑いの余地はありません。
当然、アリアを介してケラー室長及び周辺の情報を収集しているでしょう。
となれば、冷遇されていた統合宇宙開発局時代の経歴や出来事も把握していると見て間違いはありますまい」
「そうなると、直接会わせるのは危険だな」
「無用な問題を起こしている余裕はありません。それに、各国の目もありますからな。付け入る隙を与える必要もありますまい」
「分かった。今後を考えると、統合宇宙開発局内部に手を入れる必要があるな」
「彼処には優秀な人材が集まっていますからな、我々としても出来れば密に連携したいものです。ただし、ケラー室長を冷遇していた連中は別です。後程、リストを作成します」
「君が選ぶのか?いや、君が適任か」
「ケラー室長の邪魔になる者達を排除するだけです。御存知のように、それ以外に興味はありませんからな。私の方でも動きましょう」
多忙を極めるハリソン大統領の下を素早く離れたジャッキーは、一族専用の回線を開く。
その日の夜、ニューヨークにあるビルの一室にて。
「はぁい、ジャッキー。何か手を貸してほしいのかしら?」
マンハッタンに建つビルの一室であるが、何故か室内には世界中に実在する様々な花々が咲き誇る花畑となっており、その中心でラフレシアを模した(匂いも完璧に再現)椅子にゆったりと腰掛けたコーカサス系美女が彼を迎えた。
三十代後半の若さで北米大陸財界に強い影響力を持つ、ケイミー=ニシムラである。彼女は花弁を模した際どすぎる衣類を身に付けており、ニシムラの系統であることを余すこと無く現しており。
「ご壮健の様子で何よりでありますな、姉上。お時間を頂き感謝を捧げます」
我らがジャッキー=ニシムラ(無駄にリアルなミツバチコス)とは腹違いの姉に当たる人物である。
「可愛い貴方のためなら幾らでも時間を作ってあげるわ。それで、貴方のお願いは統合宇宙開発局についてかしら?」
「流石は姉上、お耳が早いですな」
花の蜜で満たされたグラスを傾けるケイミーと、その辺の花から花粉を採取して身体のあちこちに貼り付けるジャッキー。異様な空間が広がっていた。
「ティナちゃん達は、ボイジャーを回収してくれた実績があるわ。交流から外されている統合宇宙開発局としては、接点を作るために探査機回収を依頼するのは不自然なことじゃないわ」
「流石は姉上、ご賢察です。将来的に考えた場合、統合宇宙開発局の協力は必要不可欠であることに議論の余地はありません。
しかしながら、ティナ嬢達を政治利用することは許されません。
いや、この場合彼女達の利益となるならば構わないでしょうが」
「主に動いたのはマインツ主任ね。あの神経質な男にティナちゃんへの配慮が出きるかしら?」
首を傾げるケイミーを見て、ジャッキーは肩を竦める。
「先ず無理でしょうな。大統領も統合宇宙開発局の整理を行うと確約してくださいましたが、それだけでは足りない。姉上のお力添えも頂きたく」
「やり残した仕事を全て片付けるつもりね?ジャッキー」
「はい。ケラー室長の素晴らしさを理解しない者が居るのは仕方ない。
しかしながら、その人柄を利用した挙げ句悪し様に扱う人間には天罰を下さねばならない。
我が一族は忠義を何よりも大切にしてきました」
「それが貴方の忠義なのね、ジャッキー」
「はい。これを機に、交流の促進と本懐を遂げたいのです」
「なら存分にやりなさい。それが地球のためになるんだから」
覚悟を聞いたケイミーは蜜で満たされたグラスを呷り、ジャッキーは集めた花粉団子に思い切り食い付いて派手にリバースした。




