大艦隊来訪
未知の地球外生命体であるアード人、リーフ人との交流が始まって半年以上の月日が経過した。
往復に半月掛かり、何かとトラブルに見舞われる気質のティナ達が地球に滞在している時間はそこまで多くないが、それでもこれまでの交流が地球に与えた影響は決して小さくはない。
既に大量に持ち込まれた“トランク”は災害時等に大活躍しており、消耗品である“医療シート”もティナの意向を汲んで惜しみ無く使用されている。
また、月面にはアードの居留地が建設され、今も拡張を続けている。月に滞在するセシル達も交流の一助になればと積極的に地球側と接触し、“医療シート”に関しては少数ずつではあるが安定して地球へ供給できつつある。
また医療技術を含めて様々な用途に利用可能なラーナフラワーも、地球と共同研究が開始された。
そして歴史に新たな一ページを刻む日が訪れた。ISS及び月面基地からの急報によって、月軌道まで移動していたゲートが起動したと地球に伝えられた。それと同時に巨大な三角形の建造物から、銀河一美少女ティリスちゃん号を先頭に十一隻もの宇宙艦隊が姿を現した。
「地球への事前通達は済ませているな?よし、これより親善飛行を行う!航路プログラムに異常は無いな?開始せよ!」
アードの正式な外交大使に任命されたザッカル局長の号令に従い、無人のスターファイター十機が見事な編隊を組みながら艦隊周辺を飛行。更に艦隊そのものも、銀河一美少女ティリスちゃん号を中心に見事な隊列を組んで地球軌道上へ移動した。
これらの行動は事前に月面の居留地から地球側へ親善のためであると連絡されており、むしろアード側によってその様子を地球全土へ中継していた。
まさにSF映画そのものの光景に人々は熱狂し、一部の悪意を持つ者達は舌打ちをした。
地球軌道をグルっと一周した艦隊はそのまま定位置であるISS付近の軌道上で待機し、銀河一美少女ティリスちゃん号のみが地球では無く月へ降下した。
「お待ちしておりました。直ぐにお部屋へご案内しますね」
乗せていたゼバ星系の生き残り達を居留地へ移すためである。事前に連絡していたため、セシル達が総出で出迎えて生き残り達を受け入れた。優先すべきは妊婦達が安心できる環境を整えること。
ラーナ星系の生き残りは幼い子供と母親達で構成されているので、必要な環境は既に整えられていた。
「改めて、我が部族を救ってくださった勇敢な貴女方に最大限の感謝と敬意を。いつでも頼ってくだされ。何があろうと、何処だろうと馳せ参じます」
代表して長であるフレストが改めて深々と感謝の意を表明し、居留地へ向かう若い夫婦を先導していく。
「ティナちゃん、後は任せてください」
「お願いします、セシルさん。セシリアはどうする?」
「無論約束を違えるつもりはない。貴女の旅に同行するつもりだが、今回は長居するのだろう?」
「まあね、今すぐじゃなくて良いよ。皆さんもセシリアが居た方が安心できるだろうし」
今回の来訪は宇宙開発局のザッカル局長を代表とした外交交渉が主な目的であり、そのために長期間の滞在が予定されている。最短でも一ヶ月以上の滞在は、過去最長となる。
「分かった、その好意に甘えよう。転送ポートもあるみたいだし、必要な時はいつでも呼んでくれ」
ゼバ星系の生き残り達にとってもセシリアの存在は大きい。少なくとも今回の滞在期間中傍に居れば、精神的な安定を得られるだろうと判断された。
「うん。皆さんに元気な赤ちゃんを産んで欲しいって伝えて。それが一番嬉しい恩返しだからさ」
「貴女は本当に……ああ、必ず伝えよう」
笑顔で話すティナを眩しそうに目を細め、同じく笑顔を浮かべて別れた。
ゼバ星系の人々を居留地へ降ろしたティナ達は、再び銀河一美少女ティリスちゃん号へ乗り込んで地球へ向かう。
その際、同行していたハンマーヘッド級駆逐艦よりザッカル局長が移乗する。
「これが地球か……青い星だな。アードに比べればいささか小さいが、陸地が広いのは素直に羨ましいものだ」
「大陸がありますからね。多種多様な文化がある素敵な星ですよ」
笑顔で紹介するティナを前に、ザッカル局長も自然と笑みを浮かべる。
「ああ、私個人としても非常に楽しみだ。是非とも今回の交渉で最低でも友好条約、可能ならば更に踏み込んで双方の交流を円滑化するための取り決めも行いたいものだが」
ザッカル局長の悩みは、地球に統一政体が存在しないことである。既にパトラウス政務局長の方針によって、個別の交渉は行わないと決められている。
ティナはアリアと一緒に出来る限り地球の状態を説明したが、惑星の中に二百を超える国家や地域が存在する状態はアード人にとって理解するのが難しかった。
「今ハリソンさん達が統一政体を作るために頑張っていますけど、まだしばらくは時間が掛かりますから……最初は外交団を派遣する国を集めて交渉してみるつもりですよ。どの国も強い影響力がありますから」
「済まないな、その辺りの差配はティナに委ねるしかない」
「任せてください!」
「ティナちゃん、クレアちゃんやセシリアちゃんの紹介はどうするのかな?☆まあ、クレアちゃんに関してはいつものアレで知られちゃってるけど☆」
前回来訪時にテンションの上がったティナがいつもの様に画像を地球のネットワークへ投稿したが、その際に公表していないクレアも写っていて大騒ぎとなった。
しかもその説明をする前に地球を離れるミラクルを発揮。各国首脳部は頭を抱えたがいつものことである。
「うぐっ……それを言われたら弱いな……同じ失敗はしたくないし、先にハリソンさんや美月さんに紹介した方が良いよね。
いや、先ずはジョンさんに教えよう。どうすれば良いか教えてくれる筈だし」
信じられないだろうが、これは素の発言である。全く未知の異星人及びアード、リーフの特異なハーフと言う特級案件を、地球の為政者達より先に知らされる我等がジョン=ケラーの胃は溶けて再生することになる。まあ、いつものことなので割愛する。
取り敢えず異星人対策室へ連絡しようと本部の映像をモニターへ映し出す。
「え~~~いっっっ!!!」
「勝負に負けるというのは、こういうことかぁああっ!!!ぬぉおおおおおっっっ!!!!」
「エイドリア~ン!!」
何故か巨大化したカレンが、ジャッキー=ニシムラ(かしこさ2)の駆るマラ◯イを殴り飛ばして大爆発させ、ガッツポーズを取る姿が映し出された。
それを見たティナは、虚無の表情で小さく呟いた。
「なにやってんの?」




