フェルのお勉強
フェラルーシアです。私達が惑星アードを出発して六日が経ちました。明日地球へ到着しますね。
この間ティナは、ゼバ星系で助けた人達との交流やザッカル局長と打ち合わせに飛び回っていました。私もアリアちゃん達と一緒にティナを支えていました。
特にゼバ星系の人達の半分はリーフ人でしたから、セシリアちゃんと一緒に間を取り持つことにしました。
まあアード星に居る同胞とは違って、開拓団に居た皆のような感じなのでちょっと懐かしくなって泣いちゃったのは秘密です。
「姫様、あまりご無理をなされずに。時間はいくらでもございますから」
「少しでもティナを支えてあげたいから……ご迷惑じゃなければ、今日もお願いします」
「迷惑など!それでは本日はリーフの歴史についてお話を」
そして私は時間が空いた時にゼバ星系の皆さんを纏めているフレストさんから、リーフ王族について教えて貰っています。
アードを旅立つ前に、ティリス様から内密なお話としてフレストさんを紹介されたんです。
どうやらフレストさんはお母さんの教育係を務めていらっしゃったみたいで、私に足りないリーフ王族としての知識を教えて貰えるようになりました。
セレスティナ女王陛下とのお話で私の出自はもちろん、ティナが将来アード女王になることが確定していることを知りました。その時傍で支えるために、今まで知らなかったリーフ女王へなるための勉強です。ちょっと大変ですけど。
「残念ながら、既に姫様以外で王位を継承できるお方は存在しません。フェルシア女王陛下、皇太子のお三方、そしてフェルト殿下も亡くなられましたから」
「他に居ないのですか?」
「はい。フェルシア女王陛下の代から王族の落命が続きまして……」
つまり、私にはもう頼れる親族が一人も居ないことを意味しています。それはとても悲しいことですが、失う悲しみには慣れてしまいました。その分を埋めてくれる大切な人達に支えられています。
「私以外に居ないのですね」
「はい。おそらくフェルト殿下は姫様に王族の宿命を背負わせぬために、敢えてお伝えしなかったのでしょう。女王陛下や皇太子の皆様が御存命ならば、或いはその様な生き方もございましたでしょうが……」
「お母さんの想いに応えることが出来ないのは悲しいけれど、今のリーフをそのままには出来ません」
ちょっと言い方が悪いですが、ティリス様が仰有るミドリムシ……今のリーフ上層部をそのままにしていたら大変なことになるのは間違いありません。
将来的にはアードとリーフの関係に致命的な問題が起きる可能性もありますし、ティナが女王に就任した時の障害となります。
ティナがやり易いようにするにはどうすれば良いか、答えは明白です。
「姫様……」
「私が女王となって、同胞達を率いる以外に道はありません。リーフとアードの真の融和のためにも」
「ははっ!」
……私は最低だ。本音を言えば、リーフ人がどうなろうとあんまり関心が無い。ティナと一緒に居たいから言ってるだけ。
もちろん、両親の死を無駄にしたくない想いもありますが、それは一番じゃない。
「良いのです、姫様」
「フレストさん?」
私が自分の本音を嫌悪していると、フレストさんが優しげな笑顔と声で話し掛けてくれました。
「王族のための自覚を持て等とは決して申しません。フェルシア女王陛下も常に女王の在り方について悩まれていらっしゃいましたし、フェルト殿下は良くお勉強の時間に部屋から抜け出していらっしゃいました。
勉学よりも友人達と遊ぶことを優先されていて、よく城下町を探し回ったものですよ」
「お母さん……」
お母さんのちょっとお茶目なエピソードを聞いて、何とも言えない感情が浮かびました。意外とやんちゃしていたんですね、お母さん。
「立場が人を作ると言います。姫様はお優しい心の持ち主、女王と成られた暁には、必ずや民を慈しむお方となられましょう。微力ながら、私達もお手伝いをさせていただきます。
ですから、今はどの様な理由でも構いませぬ。ご自身の未来のため、女王へ成られてくださいませ」
「フレストさん……ありがとうございます」
今は自覚も持てないけど、いつか持てる日が来るんだろうか。でも。
「先ずは、アードに住まう同胞の目を覚ませる必要がありますな。その為にもアードに残りたかったのですが、閣下に止められましてなぁ」
「フレストさんが居た方が、ゼバ星系の皆さんも安心できますから」
「うむむ……閣下にも同じことを言われてしまいました」
「あはは……」
お勉強も終わって手持ち無沙汰になってしまいました。ティナはどこかな?
『ティナはブリッジにてザッカル局長と打ち合わせを継続しています。また、マスターティリスと私のアンドロイド端末も同席しています』
「まだ打ち合わせ……邪魔をしない方が良いですね。他のみんなは?」
『マスターフィオレは植物園にて休まれ、マスターフィーレは格納庫にてアースの改良と地球の技術資料の研究中です。マスターセシリアはマスターマコとお話をされています。マスター瑠美はサポートドロイドを率いて調理室で夕食の仕込みを、マスター朝霧はマスタークレアと第二談話室に居ます』
「クレアちゃんが朝霧さんと?」
ゼバ星系の頃からクレアちゃんの様子がおかしい。ティナから聞いた内容を考えたら無理もありませんが、クレアちゃんの責任だとは思いません。
でも、結局は本人の気持ちですから……朝霧さんと一緒なのは気になりますね。
様子を見にクレアちゃん達が居る部屋へ行ってみたのですが、そこには頭を抱える朝霧さんとそれなりに広い部屋を埋め尽くす量の綺麗な鉱物に囲まれてご満悦なクレアちゃんが居ました。これって確か……。
『金、銀、プラチナ、エメラルド、アメジスト、ルビー、ダイヤモンド、サファイア等地球に存在する宝石や貴金属に分類される鉱物です。希少で、地球では極めて高い価値を有しています』
「あー……」
クレアちゃんは、鉱物を全く別の鉱物に変換する魔法が使えます。これはノーム由来の魔法らしくて、普通は変換するにしても同じ量になるみたいですが、クレアちゃんは数十倍に増やせるみたいです。
私達やアード人はあんまり鉱物資源を使いませんが、ノーム人は地球人以上に鉱物資源を使った文明だったみたいで、これは文明を維持するために必要な魔法ですね。
「価格の暴落による地球規模の経済混乱……いや、そもそもこの存在が公表された瞬間金本位経済が崩壊する……!?あらゆる鉱物の価値が劇的に変わる!希少価値がなくなるっ!」
朝霧さんが頭を抱えています。うーん、これ放っておいたら回り回ってティナが困る案件ですね。 でもクレアちゃんのメンタルケアを考えて……よし。
「クレアちゃん、増やしても大丈夫ですけど地球に持ち込んじゃダメですよ?魔法についても説明するのはダメです」
「ふぁい……」
うん、これでよし。




