地球へ
メリクリ!
式典で女王陛下からまさかのお声掛けを頂いた後、ばっちゃんのアドバイスに従って私達はそのままドルワの里へ戻らずに宇宙ステーションで過ごすことになった。
銀河一美少女ティリスちゃん号の艦内に居たゼバ星系の皆さんも宇宙ステーション内部は自由に出歩いて良いらしくて、気晴らしにはなったと思う。
お母さんが手配してくれた治癒術に長けた人達からの診断も受けて、妊婦の皆さんの出産時期は地球到着まで充分に余裕があることがわかった。
月へ向けてメッセージは送信しているし、セシルさん達も充分に準備を整えてくれているだろうから、安心できる。
航海中も出来るだけ負担を和らげてリラックス出来る環境を整えたいと考えていたら、フィーレ達が改装を施していた。
具体的には精神的に落ち着ける植物園の拡張と、余暇を楽しむための娯楽施設の整備だ。地球から持ち込んだ様々な娯楽用品が用意されている。
まあ、大半はアニメや漫画、それに地球の文化や生活が書かれた本かな。
特に紙の本は重宝されていたりする。アードやリーフには、もう紙に書くような文化はほとんど遺されていないからね。地球の本は珍しいみたいだ。カラフルだしね。
地球へ戻る時に一番心配だったのは、ティルの存在だ。正直マコくんへの懐き具合が尋常じゃない。まだまだ小さなティルには早いと思うけど、あの感情は鈍い私にだって分かる。
どう見てもLIKEじゃなくてLOVEの方だ。今だってマコくんにベッタリ引っ付いてるし。だからマコくんが帰るのを嫌がるんじゃないかなって思ってたけど、意外とあっさり認めちゃった。二人の間に確かな絆が見えちゃうね。
お姉ちゃんとしてはとっても複雑な気分である。前世は独りっ子だったこともあって、滅茶苦茶可愛がってる自覚はある。
突然出来た妹だけど、アードに居る間は出来るだけ傍に居るようにしていたし、ティルも可愛らしく甘えてくるから堪らない。
うーん、飛躍しすぎてるな。ちょっと冷静になろう。
「取り敢えず最優先で地球人とアード人が交配可能になる様に研究しておくわ。一年も掛からずに実現できるだろうし、焦らなくても大丈夫よ」
「お母さん!飛躍しすぎてるよ!?」
隣に居るお母さんがとんでもない事を言うからビックリした!
「別に不思議ではあるまい?種族の違いで子が為せない等悲しいではないか。方法の確立は、早い方が良いだろう?」
「うっ……それはそうだけどさ」
アードとリーフのハーフであるセシリアの言葉には説得力がある。マコくんはとティルの件を別にしても、地球と交流が進めばそこに愛が育まれるのは時間の問題。
マコくんは切欠なんだろうなぁ。ますます複雑な気分だよ。
「しかし、まさかこんなにもたくさんの方々を救われたなんて。貴女はやっぱりHEROですね、ティナさん」
「皆が助けてくれたお陰ですよ。でも、その代わりに朝霧さん達を巻き込んでしまってごめんなさい」
「謝らないでください、ティナさん。今後交流が進めば幾らでも機会があるんですから」
予定を大幅に繰り上げてしまったせいで朝霧さん達にもたくさん迷惑を掛けてしまったけど、皆さんは笑って許してくれた。
朝霧さんは初日にパトラウス政務局長と話し合いをしていたみたいで、次回の外交団受け入れについても充分に情報を共有できたみたい。
外交団の滞在先はドルワの里に用意することになった。言うまでもないけど、アードにはたくさんの里がある。けど、地球との玄関口はドルワの里って決まったみたいだ。
「女将さんもごめんなさい。急に切り上げて、マコくんを危ないことに巻き込んでしまって」
「謝らないでください、ティナさん。あの子もティルちゃんも無事だった、それだけで良いのです。皆さんには本当に良くしていただきました。
それに、新しい食材を早く試してみたいので良かったのかもしれません」
上品に笑う瑠美さんが言ってる新しい食材とは、アードの海にたくさん生息している鯛みたいな魚だ。地球の鯛より何倍も大きくて、栄養満点で繁殖力も強くて、しかも光合成するからエサが必要ない。
……我ながら意味不明な生体だけど、気にしない。アードじゃ塩焼きしかないけど、地球ならたくさんの調理法があるし食料問題の解決に役立つ筈。アリアの調べて地球人も食べられることが分かってるし。
これまでアード由来のものを食べたジョンさん達の事を考えると、ちょっと不安になったんだよね。またやらかすのは嫌だし。
私の不安を感じ取ったのか、瑠美さんが躊躇無く鯛の塩焼きを食べた時はビックリした。で、今のところ変化はない。
「むしろ活力が湧いてきますね。今なら幾らでも頑張れそうです」
「それなら良かったです」
もちろん要観察だけど、問題ないなら本格的に交易品に加えるつもりだ。
「またしばらく会えなくなるのは寂しいが、ティナがやりたいことだからね。応援しているからしっかりな」
「うん、ありがとう」
わざわざ見送りに来てくれたお父さんは、ちょっと寂しそうだ。まあ、そうだよね。
今回はザッカル局長が一緒で、戻る時には地球の外交団を一緒に連れて帰ることになるから地球の滞在時間も長くなる。
朝霧さんとザッカル局長が話し合ってたけど、地球時間で二ヶ月くらいは滞在することになりそうだ。今までは数日間だけだったから、ちょっと不安がある。皆が快適に過ごせるように気を付けないといけない。
「でもさ、お父さん。これは大袈裟だよね?」
「地球の皆さんを大勢連れ帰ってくるんだろう?万全を期すのは当たり前だよ。センチネルも居るんだからね」
今回はザッカル局長の乗艦としてプラネット号と同じハンマーヘッド級駆逐艦のネームシップ、ハンマーヘッド一隻と無人のフリゲート艦十隻が一緒に来ることになった。
……なんだかとんでもない大艦隊になっちゃったけど、大丈夫かな?具体的にはハリソンさん達のストレスとか……まっ、まあ安全のためだから大丈夫だよね!うん、気にしないでおこう!
「マコ、またね!」
「うんまた来るよ。ティルも良い子にしてるんだよ?」
良い感じに別れの挨拶をしてる妹達を眺めていると、見送りに来ていたパトラウス政務局長が近付いてきた。
「ティナ大使、忘れては大変だから先に伝えておく。以前来訪されたケラー卿についてだが、女王陛下より栄誉賞とアード永住権が授与されることとなった。
つまり、彼は自由にアードへ立ち入れるしアードへ住むことが出来る初めての地球人となる。彼の献身に報いるための報奨だ。きっと喜んでくれるだろう」
これぞまさにギャラクシーグローバルである。消化器官へのダメージは地球人とアード人の精神的な距離を縮めてくれる画期的な手法である。尚、パトラウス政務局長の表情は同情的であった。




