ゼバ5探索
救難信号を受けて駆け付けたゼバ星系で一番大きな惑星のゼバ5へ降下したのは良いけど、これは困った。眼下に広がるのはとんでもない規模の熱帯雨林だった。
前世のテレビで見たアマゾンのジャングルが可愛く見えるような規模で、五十メートル級の木々に覆われて地面が全く見えないんだから。
『これは困ったわね、着陸するのは難しいわ。救難信号は何処から出てるの?』
「アリア」
『特有の大気と木々による影響があり、詳細な位置は不明です。ある程度は範囲を絞りましたが、地上へ降りて捜索する必要があります』
『つまり、どうにかして降りる必要があるわけね。アンタの旅はいつも退屈しないわね』
隣を飛ぶフィオレが溜め息混じりに言ってる。いやまあ、自覚はあるけどね。
「退屈しないなら良いじゃん、フィオレ。個人的には楽しみでもあるよ」
だって完全に未知の惑星だからね。こんな時じゃなかったらフェルを連れてゆっくりと見て回りたいくらいだよ。
『相変わらずポジティブで何よりだわ。それで、どうする?吹き飛ばして空き地を作る?』
「それは最終手段にしたいかな。出来れば原生生物をあまり刺激したくないし」
緑豊かな星なのに移住に適さないと判断された惑星だ。多分、原生生物が危険な類いなんだろうと……あった!
「フィオレ、開けた場所を見付けたよ。探索エリアの中にあるし、そこを拠点に探そう」
『了解、武器を忘れないでよ』
「分かってるよ」
偶然対策エリア内に見付けた開けた場所に向かって飛んで、万が一に備えて機体は上空に待機させて私達だけが大地へ……うっわ。
「ちょ、なによこれ!?ぐちゃぐちゃじゃない!」
固いと思っていたけど、滅茶苦茶水分を含んだ大地だった。
つまり、地面はほとんど泥みたいな感じだ。常時裸足のフィオレからしたら最悪の感覚じゃないかな。いくら障壁があるにしてもさ。
「履き物履く?」
「断固拒否よ、何かを履くくらいならこの気持ち悪い地面だって我慢してやるわ」
「筋金入りだねぇ」
まあ、フェルだって出来る限り裸足で過ごそうとするし、リーフ人の特性なんだろうなぁ。
まあ、サンダルの私も大して変わらないけどさ。足も取られるし、ちょっとパタパタ飛ぼう。地面スレスレなら歩いてると言えるはず。
「うっわ!?なにこれ、地震?」
地面が揺れ始めたから、地震かなって思ったんだけど。
「ちょっと……嘘でしょ!?ティナ!あれを見て!」
フィオレが指差した先を見てみたら。
「わぁ……ぁ……」
そこに居たのは、巨大な生き物だった。十本の足を持っている象みたいな巨大生物がゆっくりと木々を押し倒しながら進んでる。
『観測の結果、地球単位で体高百メートル程度はあります』
「いやいや、大きさにも限度があるでしょ……あんなのが彷徨いてる星なんて絶対に住みたくないわ」
「私もちょっと嫌かなぁ」
歩く度に地震が起きるような巨大生物と共生する自信は無いかなぁ。ゆっくりと遠くへ行く巨大生物を見送って、私達は顔を見合わせた。
「取り敢えずこの星が非常識で危険な惑星だってことは分かったわ。これで無駄足だったら怒るわよ、ティナ」
「その時はフィオレの好きなものを買って上げるよ」
「言ったわね?約束よ、ティナ」
植物の種とかだろうなぁ。ジョンさんにお願いしよう。ただ、あんまり長居はしたくないから直ぐに行動しよう。
現在位置と周辺の映像を軌道上で待機してる母艦へ送信すると、直ぐに魔法陣が現れてフェルと手を繋いだアリア、クレアが転移してきた。
フェルとクレアは周りを見て、そして足下の感覚に嫌そうな顔をした。気持ちは良く分かるよ。
「言いたいことは分かるよ。私としても長居はしたくないし、出来るだけ早く調べよう」
「そうですね、何だかマナも濃くて嫌な感じがしますから」
フェルの感覚は良くわからないけど、嫌な予感がするのは確かだ。私達は出来るだけ警戒しつつ深い森へ入っていく。
森の中は高さ五十メートル級の木々に覆われて、まるで夕暮れみたいに薄暗い。じめじめしているし、相変わらず足下は泥みたいで最悪だ。
「アリア、わかる?」
「大気中のマナが濃すぎて広域探知を阻害しています。ビーコンの大まかな位置は分かりますが、正確な位置は不明です」
「……大地の精霊たちが私の言葉に耳を傾けてくれません。ここは、生命力が強すぎます」
「つまり?」
「私の魔法にはあまり期待しないでください。どんな影響が出るか分かりませんから」
クレアが申し訳なさそうにしてる。
「大丈夫、いざとなったら逃げるだけだよ」
クレアの魔法はアード、リーフと違うから今も謎が多いんだよね。私達はアリアの導きに従って森を探索した。
三メートル級のカブトムシやクワガタムシみたいな昆虫を見付けて、ちょっとテンションが上がったのは内緒だ。
しばらく森を歩いていると……。
「これは……集落……?」
私達がたどり着いたの廃墟になった、集落だった。
「これって、リーフの様式じゃない!リーフ人の集落だってこと!?」
「っ……ティナさん、こちらを」
フィオレの叫び声を聞きながらクレアの側に駆け寄ると……っ。
「……また、間に合わなかったのかな……」
「ティナ……」
集落には大勢のアード人やリーフ人の遺体が遺されていた。そしてそれ以上に多くの……カマキリかな?二メートルくらいのカマキリみたいな生物の死骸があった。
身体から力が抜けるのを感じて、直ぐにフェルが支えてくれた。
「センチネル反応無し、原生生物の襲撃によって壊滅したものと推定されます」
「アリア、救難信号はここから?」
「いいえ、違います。ここより北方の方角から今も発信されています。距離が近付いているのか、反応も強くなっています」
「ん……分かった。埋葬してあげたいけど、今は確認を急ごう。みんな、良いかな?」
「はい、ティナ」
「良いわよ。生き残りが居るなら助けたいし」
「異論はありません。ですが、せめて祈りを」
「うん」
私達はその場で亡くなった人達に祈りを捧げて、信号が強くなる方角へ進み続けた。相変わらず地面の状態は最悪だけど、しばらく歩いていたら……。
「わぁっ!?」
「ティナ!?」
突然なにかが飛んできて、私の目の前を掠めて地面に突き刺さった。
慌ててフェルとアリアが前に出てくれて、私は咄嗟に飛んできたものを見て。
「矢……?
……フェル!アリア!待って!」
直ぐに反撃しようとしたフェルとアリアの手を掴んで止めた。
「ティナ!?」
「撃たないで!私達は救難信号を受けて助けに来たの!お願いだから話を聞いて!私達は敵じゃないよ!」
出来るだけ大きな声で呼び掛けてみた。そうしたら、近くの大きな木の陰から女の子が現れたんだ。
「同胞の言葉……まさか、天外の者か?」
私達はびっくりして声を出せなかった。彼女の右側はアードの翼、左側はリーフの羽。髪の毛は綺麗な銀髪のショートカットなんだけど、あちこちに金のメッシュが入ってる。
右目はアード人に多い金色、左目はリーフ人に多い若草色。アード人とリーフ人の特徴を半分ずつ持った女の子だった。




