日本の反応
政治の季節です。色々控え目です(リアルの惨劇を見ながら)
時は戻り富士山での勢揃いが果たされた日の夕方。正午前に慌てて日本へやって来たティナは、困ったような笑みを浮かべている椎崎首相に対して全力で土下座を敢行して別の意味で話題となった。
とは言えこれはフランスの件とは全く関係の無い案件であり、流石のティリスも苦笑いを浮かべる程の事態であったから好きにさせたが。この事は現場に集まっていた大勢の報道陣によって大々的に報道された。
『ティナちゃんの開幕土下座頂きました』
『この娘、日本へ来る度に何かやからしてるなww』
『もはや日常なんだよなぁ』
『取り敢えず元気そうで良かったよ』
『地球人が怖いなんて思われてたら大変だったな』
『今思えばフランスの事件って大事だよなぁ……』
『シンプルに地球滅亡の危機だったからな。フランスとブリテンの謝罪も受け入れたらしい』
『しかもお咎め無しときた』
『天使かな?あっ、天使だったわ』
『でもこれで変なこと考えるやつが増えるだろうなぁ』
『間違いなく増えるな。ティナちゃんは優しすぎるんだ』
『もしかして、俺達ティナちゃんの慈悲がなきゃとっくに滅びてる?』
『今気付いたのか?』
『それが分からない奴が多いんだよな。日本にも居るし』
『ともあれ、久しぶりの土下座を見れたんだ。よしとしよう』
『椎崎首相のしょうがないなぁって顔がなんとも……』
『お母さんに失敗したことを謝ってる娘にしか見えないww』
『ヤ◯ト、MS群を背景に首相へ土下座する異星人が居るらしい』
『今日も平和だな』
日本のネットでは突如出現したロボット軍団や宇宙戦艦への話題もあり、特に問題視されず流されたが。
しかし、夕方に急遽招集された緊急国会の場は騒がしかった。政府はフィーレが作り上げたこれらの作品群のスペックを隠すことなく公表。
理由としては、原作に忠実に作られているため簡単に調べることが出来るからだ。下手な憶測が流れる前に公表して無用な混乱を避ける狙いがあった。
だが、それを面白く思わない勢力も存在した。
「椎崎首相、今朝急に出現したロボット群や宇宙戦艦についてご質問します。どのような経緯で作り出されたのですか?」
「あれらの作品は、リーフ人であるフィーレさんが技術検証のためにアニメ作品を見て製造したものです。経緯についての詳細も公表していますので、改めて確認していただければと思います」
「そうでしたか。いやぁ、私も若い頃はヤ◯トにハマったものですよ。作ってくれたことに感謝ですな。是非ともこの目で見てみたいものです」
「まだ計画段階ですが、ゆくゆくは一般公開も予定していますよ」
「それはありがたい!我が国の新たな観光名所になりますな」
「総理にお尋ねします。公開されたスペックですが、原作となったアニメを忠実に再現していると記載されていますが」
「私もあまり詳しいわけではありませんが、未知の機構やエネルギーについては魔法やアードの技術で可能な限り再現しているとか」
「それは興味深い。私も見に行きたいですよ。アッ◯イが好きでしてなぁ」
この議員に対して、参考人として参加している豪徳寺センター長が親指を立てたのは言うまでもない。
「地球外技術研究センターの豪徳寺センター長へお尋ねします。今後もガン◯ム系列のロボットが作製される予定なのでしょうか?」
「ご返答致します。今後の予定については、フィーレさんの気分次第と申し上げるしかありませんなぁ。
彼女は未知の発想力を必要としているのですよ。それ故に我々も可能な限り幅広いジャンルの作品を紹介している最中なのです」
「つまり、今後は別の作品の機体が作られる可能性があると?」
「否定はしませんし、断言も出来ないのが悔やまれます」
「それは良いことを聞けました。個人的にはキン◯ゲイナーを勧めたいですな」
「それはそれは、後程ゆっくりと語り合いたいものですな」
政府与党、更に野党からも好意的な意見が多数出て賑やかではあったが穏やかに質疑応答の時間を消費していった。
そして最後に立ったのは一人の女性議員、迫水静香。そう、ティナとティリスを糾弾して大問題を起こした人物である。
発生当初国内外から猛烈なバッシングを受けて議員資格の剥奪まで浮上したが、その後一部マスコミによる露骨な火消しと政府閣僚の不祥事を隠れ蓑として有耶無耶にし、今も所属政党の急先鋒として議員を続けているのだ。
もちろん今もバッシングを受けていることに変わりはないが、マスコミの露骨な援護を受けている。
「総理にお尋ねします。これらの兵器群を放棄する明確な時期を教えてください」
「お答えします。廃棄する予定は今のところありません。これらの作品群はフィーレさん個人からの贈り物であり、ティナさんの了承も得られていますよ。大切な観光資源として保存に取り組みたいと思っています」
「廃棄する予定がない?それは大問題ですよ、総理!公開されたスペックを見る限り、どれも恐ろしい兵器ではありませんか!」
「迫水議員、落ち着いてください。道具は所詮道具なのです。
大切なのは、扱う人間の心持ちです。政府としても、軍事利用するつもりは一切ありませんから御安心を」
「落ち着けるわけが無いでしょう!あんな兵器を持ち込ませて、更に供与されたのですよ!
あんなもの、平和国家である日本に相応しくありません!」
「繰り返しますが、心持ち次第なのです。政府としても取り扱いには細心の注意を払いますし、アード側からの技術指導の下に万全の体制で保存に望みます」
諭すように語る椎崎首相に対して、迫水議員はヒートアップしていく。
「あんなにも危険なものが日本に現れて、周辺諸国に不信感を持たれていることを理解しないのですか!?」
「ですから扱いは慎重に……」
「椎崎首相!政府は、貴女はアードによる地球侵略の片棒を担ぐような真似をして国民を危険に晒すのですか!」
突如飛び出した迫水議員の暴言に議場は騒然となった。椎崎首相でさえも目を見開き、固まってしまう。迫水議員は構わずに言葉を続けた。
「フランスで発生したアードによる恫喝をお忘れですか!?現地の方々がどれ程怖い思いをされたか!」
「先に手を出したのは現地の方ですよ!? むしろ威嚇に留めて報復をしないことを決断したアード側の配慮は見習わねばなりません!」
「威嚇を正当化されるのですか!? 化けの皮が剥がれましたね、総理! 貴女はアードの操り人形よ!」
「正当化しているわけではなく、まして操り人形でもありません。迫水議員、落ち着いてください」
「もし操り人形でないのならば、何故中華国による要請を無視されているのですか!? アジア全体の利益のために、日本が持つアード技術の速やかな開示。そして日本の安全と地域安定のため、今回供与された危険物を預かってくれると申し出てくれたではありませんか!」
あまりにも露骨な言葉に椎崎首相も頭を抱えて。
「議長、迫水議員は少しお疲れのご様子です」
「うむ、質疑応答はここまで」
「議長!まだ話は終わっていませんよ! 総理! 言論弾圧ですよ!」
「静粛に! 静粛に!」
騒然とした国会、椎崎首相は深く溜め息を吐くのだった。




