そして始まる交流の旅(アポ無し)
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なんだろう、またやらかしたような気がする。いや、気のせいかな?私まだなにもしてないし。うん、気のせいだと思おう。
地球側にも受け入れの準備があるとばっちゃんから指摘されて、確かにその通りだと思って一日軌道上で待機することにした。ジョンさんにもお話をしてみたけど、受け入れてくれた。何故か困ったような笑顔を浮かべてたのが気になるけどさ。
地球に降りるまでに調整をしたいってフィーレの要望もあって、スターファイターはギャラクシー号を含めて全機展開したままだよ。もちろん私やフィオレは定期的に休んでいるけど、AI制御の九機はそのまま展開して艦隊の周りを哨戒してる。
やっぱりアリアが制御しているからか、他のAI制御の機体に比べて動きが鋭くて滑らかだ。これならセンチネルのスターファイター相手でも充分に戦えるんじゃないかな?
格納庫へ戻った私は、見学に来ていたジョンさん達とそのままお喋りをしてる。話題が尽きないんだよね、不思議とさ。
「以前もお話しましたが、ISSには私の弟が居ましてな!私等とは比べ物になら無い優秀な弟でして、今回の任務が終わったらそのまま月基地の勤務になるみたいですな!」
「へー、ジャッキーさんの弟さんが月へ?」
絶対にキャラが濃い人なんだろうなって思ってしまうのは、偏見なんだろうなぁ。
「ん、何だか地球人の基地が賑やかだよ。前より工作機械が増えてるし」
ふよふよ漂いながらフィーレが投影した映像を見せてくれたけど、確かに地球人の月面基地ではたくさんのドローンや工作車みたいな車が行き来してる。
ややこしいから地球人の基地を月面基地、私達が作ってる大使館を含めた拠点を居留地と呼ぶことにした。
「これもティナのお陰なんだよ」
「ジョンさん?」
「実はティナさんがこれまで持ち込んでくれたトランクの一部を、試験的に宇宙開発へ転用しているんですよ」
宇宙開発最大の問題は、地球からロケットやシャトルを打ち上げる際に重量制限が厳しいと言う点だ。私が生きていた頃に比べれば格段に良くなっているけど、打ち上げに必要な燃料が大半を占めるのは変わらない。つまり、一度にたくさんの物資を運べないんだよね。
でも、トランクを使えばこの問題はあっさり解決する。トランクはせいぜい旅行バックくらいの大きさなのに詰め込める物資の数は飛躍的に増える。提供してるトランクは最低ランクだけど、それでも超大型トラック数台分の物資を運べる。しかも大きさを問わないんだから、そりゃあ月面基地の建設も捗るよね。
これまでの数十倍の物資を纏めて運べる。大きな機材だって地球で組み立ててそのまま運べるからなぁ。
それに、宇宙ならトランクを狙う不届き者が手を出せないから管理もし易いんだって。
「地球上にある限り、盗難の可能性は常に付きまといます。しかし宇宙ならば出入りする人間を極限まで少なくすることが出来ますし、名簿も揃っているし素性まで把握できます。
おそらく宇宙以上に防犯環境が整った場所は無いでしょう」
ちなみに今医療シートやトランクは合衆国北部、五大湖周辺に新設された異星人対策室新本部で大切に保管されている。
セキュリティに関してはアリアが監修しているから地球で最も厳重な保管場所になるけど、世の中に絶対なんて言葉はない。
だって空想の世界だった魔法も実在するし、更に言うなら私は転生者だしねぇ。
使う以上本部から出すわけだから、最初は極力危険の少ない場所で試したい。だから宇宙開発への利用が提案されたみたいだ。
「宇宙開発の大きな難問であった物資輸送問題もこれで解決したよ。つまり、月面基地の拡張に合わせてこれまで計画されてきた事業を一斉に開始できるんだ」
「打ち上げ費用の大幅な削減が為されましたからね。これまでロケット一基で打ち上げられる物資は極めて少なかったのですが、複数のトランクを使えば一度に大型貨物船並みの物資を宇宙へ運ぶことが出来ますし、更に保管する場所も小さくて済みます。
そしてなにより」
「なにより?」
「アードとの交流で得られるメリットを大々的に喧伝できるんだよ。人間、目に見えるか達の利益がある方が賛成し易いものだからね」
「あー、確かに」
これまでも医療シートの効果とかは現場で示せたけど、トランクはあくまでも物を運搬するための道具だ。一般の皆さんには中々実感できないかもしれない。
でも、宇宙開発と言う目に見えるメリットがあれば。
「もちろん手段は山のようにありますが、先ずは宇宙開発です。我々もトランクの扱いに慣れる必要がありますからね」
「まあ、難しい話は任せておきなさい。ティナ、君の活動を後押しするのが私達の仕事だからね」
「ありがとうございます、ジョンさん、朝霧さん」
支えてくれる人が居るだけで私は頑張れる。後はばっちゃんやジョンさん達に任せて、私はどんどん交流していかないと!
翌日、いよいよ地球へ降りる段階になってばっちゃんから提案があった。
「使節団の皆さんは私が合衆国へ送り届けるから、ティナちゃんはフェルちゃんと一緒に早速交流を始めて良いよ☆」
「良いの?」
「勿論☆」
ジョンさん達の事はばっちゃんに任せた方がいいかな。多分、難しい政治や外交のお話になるだろうし。
「わかった。ジョンさん達の事は任せたよ?」
「任せて☆」
よし、任せるならもう細かいことは考えないようにしよう。ジャッキー=ニシムラ(スパイ◯ーマン)さんの提案で動画も撮ることにしてるし、あちこち見て回りたいしね。
「ティナ、私行ってみたいところがあるんです」
「じゃあ目的地はフェルに任せて良いかな?」
「はい、一緒に行きましょう!」
フェルも楽しそうだし、一緒に見て回るのも良いな。まあ、フェルは日本が気に入ってるみたいだし日本の何処かだろうしね。
「フィーレったら目を離したら徹夜するんだから。私は後でフィーレを連れて降りるわ。カレンに地球の料理をご馳走になる約束してるし」
「分かった。後でね、フィオレ」
「フェラルーシア、あんまりティナから目を離さないでよ。絶対にやらかすから」
「あはは、分かっていますよフィオレちゃん」
「否定できない……」
何とも言えない気分を振り切って
、フェルと手を繋いで転移する。身体がふわりと浮くような浮遊感を感じた後、直ぐに着地する。
……んん?ちょっと高いところに居るみたいだ。足下の感覚からして建物の上に立ってる。そして周りを見渡せば西洋風の建物がズラリと並んでる。日本じゃない……?
私を中心に十二本の大きな通りが放射状に広がっていて、そして遠くには前世で写真なんかで何度も目にした特徴的な電波塔……って!
「ここパリじゃん!」
フランスに来ちゃった!?
ティナinパリの旅(アポ無し)




