地球への帰路
次回は中旬頃になるかもです…
四日目正午に私達は、惑星アードを離れてゲートからハイパーレーンへ入った。これから七日間掛けて地球へ戻ることになるんだけど、ジョンさん達が快適に過ごせるように気を付けないといけない。
特に親善大使とか言うのに任命されてしまったし、今まで以上に気を張らなきゃね。まあ、やり過ぎて空回りするのが私なんだけどさ。
地球との交流を加速させるには、合衆国と日本以外の国へ積極的に行かなきゃいけない。これまではその辺りはハリソンさんたちに任せてきたけど、ばっちゃんが言うにはそれだと他の国へ行くのに時間がかかるらしい。意見が纏まらないとか。
「ティナちゃんが行きたいところへ行けば良いんだよ☆地球人にティナちゃんの行動を制限する権利はないし、そもそも制限することなんて出来ないからね☆」
「それだと迷惑にならないかな?」
「ティナちゃん達が来訪して迷惑に思うような国は無いよ。むしろ次の来訪先を政治の道具として扱っているから、いつまでも話が纏まらないんだ。ティナちゃんは親善大使なんだよ。自由に交流して良いの」
ばっちゃんが言うなら間違いは無いのかな。ただ、ジョンさんはもちろんハリソンさんや美月さんにも伝えないとね。
色々考えることが増えたなぁと思いながら自室から出ると。
「なにしてんの?ばっちゃん」
「ティナちゃんも晴れて親善大使になったんだから、ちゃんとした服装をしないといけないじゃん☆」
そこには何故か魔女っ娘みたいな格好をしたばっちゃんが居た。いやなんで?
「親善大使とその格好の関連性を述べよ」
「え?だって地球じゃ魔法を使う女の子は皆こんな感じの服を着るのが礼儀だって書いてあったよ?☆」
「女の子(1000歳)」
「笑うな☆」
「で、フィオレもなにやってんのさ?」
隣に居たフィオレはいわゆる三角帽子を被ってるし。
「里長が被るように言うからよ。これが地球の正装なんだとか。変な風習よね」
「いや違うから、そんなの普通の地球人は被らないから。ばっちゃん、なに吹き込んでんの?」
「だって地球で魔法薬作りをする時は、これを被ってイ~ッヒッヒッヒ!とか笑いながら鍋をかき混ぜるのが当たり前なんだよ?☆」
「鍋なんてあんまり使わないんだけどなぁ。てか、そんな笑い方しないといけないの?」
「そんな決まり無いから安心して良いよ、フィオレ。ばっちゃんもフィオレに変なこと吹き込まないでよ」
「地球の常識だよ?☆」
「それは一部の人の常識だから」
またばっちゃんが変な知識を手に入れてフィオレに変なこと吹き込む珍事が起きたけど、基本的には平和だ。
今回の航海では救難信号を受信しないように設定されている。個人的には反対したかったけど、今の艦隊にはジョンさん達が居るんだ。地球の使節団である彼らを危険に巻き込むわけにはいかない。だから、もし今危険な状態の人が居たとしても助けることは出来ない。
歯痒い気持ちはもちろんある。でも、ジョンさん達まで巻き込むのがどれだけ問題になるか理解しているつもりだよ……ごめんなさい。
さて、暗い気持ちはこれくらいにして私はフィオレと一緒に新設された彼女の研究室を訪ねた。フィオレの同行が決まった時に大急ぎで新設したみたいだ。
中は結構広くて高性能な換気システムが用意されている。魔法薬を作る関係から大気の状態には細心の注意を払う必要があるからね。私?残念ながら作れない。魔法薬作製にはマナが必要不可欠だからね。
材料を組み合わせて下地を作り、最後にマナを注ぎ込むことで魔法の力を持たせることが出来るんだ。当然マナの基礎値が低すぎる私にとっては本気で命懸けになる。だから作らない。
「足りないものとか無いかな?」
「基本的には私物を持ち込んであるし、足りないものは里長が手配してくれたから問題ない。里に残してきたものは、諦めるしかない。代わりは手に入るしね」
「それなら良いけど……聞いたよ。追放処分なんだって?」
私個人としては悲しい結末になってしまった。フィオレは騙されていただけなのに、姉妹揃って里から追い出される結果になってしまったし。
私の言葉を聞いたフィオレは、側にあるテーブルに腰掛けて……笑ってる?
「別に問題ないよ。フィーレの居るところが私の居場所だから。もっと重い罰が降ると思ってたし、拍子抜けかな」
「いや、追放処分は充分に重い罰だと思うよ?」
「重くないよ。だって、私は親友の親に手を出した奴等の一味なんだ」
「でもそれは」
「分かってる!ティドルさんが散々私を庇ってくれたし、ティアンナさんもティナも優しいから私を許してくれた。でも!それに甘えるのは私自身が嫌なの!」
「フィオレ……」
「だから、これは私なりの償い。地球とアードのためにティナがやってることを全力で手伝う。何だってやる!必要なら地球人と寝たって良い!」
「そんなことさせないよ!」
「分かってる。これは覚悟の話。良い?ティナ」
真っ直ぐ私を見てくるフィオレの目には、強い決意を感じた。責任を感じてほしくないけど……フィオレが落ち着くなら。
「分かった。まあ、私は相変わらず良くやらかすからフォローをお願いするよ。それとフィーレの制御役ね」
「ティナがやらかすのはいつものことじゃん。フェラルーシアも苦労してるなぁ」
なっ、何も言い返せねぇ……。
っと、急だなぁ。私はフィオレが投げ渡してきたボトルを受け取った。
「それ、新作だよ。地球の新鮮な野菜とリーフ由来の薬草を混ぜてみたんだ。疲労回復にちょうど良いよ。ついでにちょっとハイになる」
「危なくないよね……?」
「大丈夫大丈夫、先にフェラルーシアが飲んでくれたけど元気になってたし」
「フェルが?それなら安心……ひゃあっ!?」
後ろから耳元に息を吹き掛けられて、抱きしめられた。この感触、まさかフェル!?
「ふふふっ、ティナ見ぃ付けた」
「ちょっとフェル!?落ち着いて!」
明らかにヤバい効果が出てるじゃん!
「フィオレさん、ティナを貰っていきますね?」
「あー、うん。ごゆっくり」
「ちょっとフィオレ!助けて!フェル!まだ昼間……あっ!」
そのまま私はフェルの部屋に拉致されて、その日は帰れなかった。色々凄かったよ。二度と作らないように言わないと。
何があったかって?……察して。
フェル
「御馳走でした(意味深)」




