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帰省

本日もよろしくお願いします。

 惑星アードの空に浮かぶ無数の人工島。アード人の大半はその人工島で暮らしてる。

 数少ない大地は大半が穀倉地帯になってて、アード人の食料事情を支えてる。

 僅かな区域には王族が住んでるかな。アードには王制が残ってて、今も女王陛下が君臨してる。

 まあ、優しくて聡明な女王様だから平和なんだけどね。二千年以上生きてるって噂もある。

 今の女王様が即位してからアードは平和で、最盛期を迎えてた。宇宙でセンチネルに出会うまではね。




 その人工島の一つにある集落。ドルワの里が私の故郷だ。

 森の中にある大木の上に作られたツリーハウス、木々を繋ぐ通路があちこちに延びてる。

 進んだ科学技術を持つ私達だけど、何故か居住区だけは昔ながらの集落のままだよ。

 もちろん家具とかは科学技術をふんだんに利用してるけど、初見だと森の隠れ家にしか見えないね。

 種族の性なのか、地面に居るのは落ち着かないんだよねぇ。歩くより飛ぶ方が好きだし。

 もちろん家の中で飛ぶことはないから、足も退化しないんだけどさ。




 私は約1ヶ月ぶりに故郷へと戻ってきた。ただ、まだ昼間だから里の皆も仕事をしてるからね。静かなものだよ。




「住まいの形式は私達と似ていますね」




「あー、リーフ人も似たような感じだっけ?不思議だよねぇ」




 私の隣を飛ぶフェルが珍しそうに集落を見つめてる。私は翼をパタパタ羽ばたかせてるけど、フェルの羽はあんまり羽ばたかない。

 リーフ人は滑空するように飛ぶなんて聞いたことがあるけど、飛び方1つとっても違いがあるから面白いよねぇ。

 私達も鳥から進化したなんて言われてるけど、別に鋭いくちばしも爪もない。翼がある人間なんだよね。進化って不思議だ。





 取り敢えず集落にある私の家にフェルを招いた。頼もしさを感じる大木に穴を空けて、中の空間をそのまま家にしてる。地味に三階建て?の豪邸だ。

 知らない人が見れば、大木に玄関と幾つかの窓があるようにしか見えないね。




「ただいまー」




「お邪魔します……」




 私が堂々と、フェルが控え目に挨拶しながら玄関を潜ると、リビングにある椅子に座って本を読んでいた眼鏡のイケメンさんがこっちを向いて優しげな笑顔を浮かべてくれた。




「お帰りなさい、ティナ。大変だったろう。おや、お友達かな?」




 名前はティドル。今世のお父さんで、魔法省に務めてるエリートさん。国政にも携わってるんだって。

 ただ、家だと怒ったところを見たことがないくらい優しいお父さんだ。




「ただいま、お父さん。友達を連れてきたんだ」




「初めまして、フェラルーシアと申します」




 深々とお辞儀をするフェルを見て、お父さんも少しだけ驚いてるね。




「これは……まさかリーフ人の女の子と仲良くなるなんて、凄いじゃないか、ティナ」




 リーフ人は居住区から滅多に出てこない。あんまり社交的じゃないんだよね。

 もちろん此方から関われば邪険にはしないし歓迎してくれるけどね。




「まあ、色々あったんだ。詳しくはお母さんが帰ってからで良いかな?」




「ああ、もちろんだ。ティアンナも毎日心配していたからね、元気な姿を見せてあげなさい」




「もちろん。フェル、私の部屋に行こ?」




「はい。ではティドルさん、また後で」




「ゆっくりしていきなさい」




 うん、お父さんは相変わらず優しい。うちはお母さんも優しいから、下手をすれば我が儘になる。私は前世の記憶があるから、道を外さなくて良かったけどさ。

 …………いや、宇宙に興味津々だから充分に異端児か。




 私の部屋でフェルとのんびり過ごしていると、お母さんが帰宅した。相変わらずの美人さんだけど、研究者らしく白衣を身に纏ってる。背中に翼を出すための穴がある特別製だよ。




「お帰りなさい、ティナ。局長から話は聞いているわ。お友達が出来たみたいね?」




「私には勿体ないくらい良い娘だよ」




「フェラルーシアと申します。ティナに助けられて、今は一緒に旅をしています」




「ティナの母のティアンナよ。うちの娘と友達になってくれてありがとう。そして、お悔やみを申し上げるわ」




「ありがとうございます」




 お母さんも帰って来たし、私は今回の旅で起きたことを両親に話した。次の旅では船を使いたいから、手回しとも言う。




「ふむ、地球か。争いが絶えない文明みたいだね」




 お父さんにも簡単な資料を渡した。極秘じゃないし、情報の取り扱いに関しても局長から一任されてるし。




「けれど、文明に活気があるとも言えるわ。今のアードは停滞しているから」




 センチネルの脅威を前に惑星に引きこもる道を選んだアード人は、文明の発展も停滞してる。

 まあ、惑星そのものも粗方開発してるし、新たなフロンティアとして宇宙が選ばれたわけだからね。

 その宇宙から閉め出されたんだから、発展の余地が無い。

 政府も永いこと現状維持を何よりも優先してる。争いもなくて平和だけどね。




「アードは長年満たされた環境にある。そのせいか、出生率は目に見えて減っている。ティナだってうちの里では本当に久しぶりの子供だったからね」




「満たされた環境は生物の生存本能を退化させるって学説もあるわね。だからティナは宇宙に目を向けた」




「うん、地球との交流は間違いなくアードにとって刺激になる」




 良くも悪くもね。地球時間で2ヶ月後に訪問する予定だけど、どんな対応をされるか正直分からない。

 歓迎してくれると嬉しいけど、どうかなぁ。




「それで、船が欲しいわけね?」




「うん。フェルも居るし、何とならないかな?」




「そうね、局長次第だけれどもし正式に許可が出たら掛け合ってみるわ。ただし、許可が出なかったら諦めなさい」




 文明を見つけた以上、交流するか否かを決めるのは政府であり局長でもある。

 まあ政府は無関心だから、最終的にはザッカル局長の判断次第となる。

 アリアが作ってくれた報告書は、ありのままを記載してある。局長もこのままだとアードに未来がないことは理解してるはず。

 大々的な交流は無理でも、私が地球と接触する許可は貰えると思う。




「分かった。それで、次の出発までフェルをうちに泊めたいんだけど良いかな?」




「ああ、もちろんだよ。フェラルーシアくん、自分の家と思ってゆっくり過ごして欲しい。ティアンナ、構わないね?」




「もちろんよ。色々あっただろうし、ゆっくりしていって。貴女が望むなら、リーフ人の集落に案内してあげるわ」




 優しい笑顔を浮かべる両親に、フェルも嬉しそうな笑顔を浮かべた。




「ありがとうございます」




 色々あったし、正直疲れたから何日か休ませて貰うつもり。もちろんフェルもね。





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