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最初の旅の終わり

体調も少し落ち着いて参りました。少しずつ再開して参ります。

 フェルとちょっとした贅沢をして数日。エナジーカートリッジから作られる料理、味は悪くないけどなにせ高価なんだよね。

 むしろ、フェルが気にしてあとの食事は栄養バーにした。此れも悪くはないんだけど、フェルにとっては初めての食感と味みたいで喜んでくれた。ちょっと複雑。




 ゲートを抜けた私は引き続き恒星系の調査をしたけど、予定を繰り上げる必要がある。フェルのことを本星に伝えないといけないからね。

 だから行程を大幅に繰り上げることにした。




「アリア、最大ジャンプでどれくらい?」




『ティナの指定する目的地まで一気にジャンプすることは可能です。ただ、推定で10日前後の時間を要します』




「構わないよ、アリア」




 フェルと親睦を深める良い機会だし。それに、フェルは同行を申し出てくれたけど“ギャラクシー号”のコクピットは狭いし“トランク”の中じゃ外の様子なんて分からない。

 地球を発見するかフェルの保護を手土産に小型でも良いから船が欲しい。




『ではゲートにデータを送信。目的地を設定、長距離ワープに入ります。目的地のゲート到着予定は10日前後を想定します』




 目の前にあるゲートが再び開いてワームホールが生成される。私は迷い無くゲートへ飛び込ませて、極彩色の光で満たされたハイパーレーンに入った。ここから目的地までずっとこの景色だ。




「アリアもちゃんと休んでね。何かあったら直ぐに知らせて」




『分かりました。ティナもゆっくりとお休みを』




「ありがと」




 私はそのまま座席を反転させて、“トランク”の中へ入る。

 リビングにある大きなソファーにフェルが座ってた。うん、本を読んでるね。アードの歴史。地球で役に立つと思って持ってきたんだけど、フェルが興味を持ってずっと読んでる。




「ただいま、フェル」




「お帰りなさい、ティナ。お仕事は?」




 私が声をかけると顔を上げて笑顔で迎えてくれた。和むなぁ。そしてようやく“さん付け”をやめてくれた。うん、距離が一気に縮まったよ。




「今回の星系には何もなかったから、直ぐに終わったよ」




 赤色矮星の星系だったけど、惑星は二つだけ。どちらもガス惑星で、生物は確認できなかった。調査も直ぐに終わったから良いけどね。




「次のゲートはどのくらい先ですか?」




「予定では10日後かな。一気に8万光年……8万パース進むよ」




「途中の調査は良いのですか?」




「たくさんあるけど、フェルが居るからね。早めに調査を終えてアードに帰らないといけない。フェルがどちらを選ぶにしても、船が欲しいからね」




 惑星探査を本格的にやるには船が必要になる。“ギャラクシー号”はスターファイターだから、スキャンくらいしか出来ないしね。




「ティナ……」




「まあ、フェルを保護しただけでも大手柄だよ。規模は小さくても船を使わせて貰えるかもしれない」




 いざ地球と交流を始めた時も、やっぱり船の方がなにかと便利だし。




「アードにはまだ宇宙技術が残されているのですね」




「新しく開発はされていないけどね。ほとんど過去の遺物扱いだよ」




 “ギャラクシー号”もそうだけど、アードに遺された宇宙技術は宇宙開発局が管理してるけど、新規に開発や生産はされていないんだ。

 遺された遺物を管理・維持してるだけ。パーツは山ほど在庫があるから当分は大丈夫だけど。

 もし地球との交流が上手くいけば生産や開発が再開されるだろうけどね。




「ティナ以外に宇宙を旅している方は居ないと?」




「居ないと思うよ。少なくとも宇宙開発局は知らないと思う」




 極秘扱いをされてるなら仕方ないけど、私が知る限り居ないんだよね。センチネルの脅威はアード人の記憶に強い恐怖を刻み付けた。惑星アード自身も大規模な認識阻害魔法で隠す程にね。




「それはつまり、その……」




 すんごく言い難そうにするね。いや分かるけどさ。




「私は変わり者かな。この宇宙には無限の可能性がある。確かにセンチネルは怖いけど、それ以上の魅力があると思わない!?」




 本格的な調査が可能になれば、惑星に降りることだって出来る!データを眺めるだけじゃつまらないし、この目で見てみたい!




「ティナの情熱は理解しました」




 あっ、優しい笑顔をされちゃった。ちょっと興奮しすぎたかな?恥ずかしい……。




「とっ、とにかく!先ずは調査を優先するから、しばらく“トランク”の中で過ごすことになるよ。フェルには窮屈かもしれないけど」




 万が一を考えて空き部屋をひとつ用意しておいて正解だったよ。寝具一式は揃ってるし、フェルだってまだ皆を亡くしたばっかりだから一人になりたいこともあるだろうからね。

 むしろこうして私と笑い合えるんだから強い娘だと思う。私なら何日も塞ぎ込む自信があるよ。自慢にもならないけど。




「しばらくゆっくり出来ますね、ティナ」




「距離があるからねぇ。目的地まで往復で一ヶ月は掛かる」




 ただ、それは最短ルートを使った場合だよ。地球との交流が始まっても、宇宙探検はやりたいからね。




「フェル、しばらく二人きりだよ」




『私は除け者ですか?』




 アリア!?




「うわっ!?ビックリしたぁあっ!」





「アリアさん!?」




『私はAIです。どうか気にされずに』




 いやいやいや!おもいっきり拗ねてるじゃん!気持ち悲しそうな声だしてるし!




「そんなこと無いよ!アリアだって大切な仲間なんだから!ねぇ!?フェル!」




「はっ、はい!アリアさんも大切な人です!」




『本当でしょうか?』




 だから拗ねてるって!本当にAIなのかな!?感情豊かじゃんか!言ったら更に拗ねそうだから言わないけど!




「とっ、とにかく!目的地までは時間もあるし皆仲良くしていこう?」




「はい、たくさんお話をしましょう。もちろんアリアさんも」




『光栄です、マスターフェルーシア』




「私もフェルで構いませんよ?」




『畏まりました、フェル』




 うん、柔軟性が高すぎる。いや、こんなものかな?帰ったらお母さんに聞いてみよう。




 それから10日間、私達は何事もなく穏やかに過ごした。娯楽は少ないけど、フェルとお互いの話をしたりして退屈はしなかったかな。何度かエナジーカートリッジのご飯も食べた。

 フェルは焼き鳥を気に入ってくれたけど、私が食べると変な感じがする。やっぱり共食い?うん、深く考えないようにしよう。




 10日後、私はコクピットに戻った。




『ゲートアウトします』




 極彩色の景色が終わり、また無限に広がる星の海が視界一杯に広がった。




「アリア、広域探知を」




『畏まりました。広域探知起動……』




 まあ直ぐには見付からないよね。探知圏内にあるならゲートを設置した時に地球を見付けてる筈だし。

 まして“ギャラクシー号”はスターファイター。探知機能は決して広くはないよ。





『周辺に生命反応は検知できませんでした』




 だよねぇ。




『しかし、人工物と思われる反応を検知しました』




「えっ?」




 こんなところに……人工物……?

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