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転生聖女さんの無自覚な軌跡  作者: ゆめのなかのねこ
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【第08話】ハインさん

「すっきり」



翌朝、目を覚ますと体は一切のだるさもなく、完治(?)していた。


いやあ焦った。


ただ、汗はかいていたのでシーツを選択する羽目にはなったが。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「昨日の夜、急に体が熱くなって、風邪ひいたかと思いましたよ~」


朝ごはんをいただきながらメロウさんに話をする。


ちなみに今朝のメニューはオムレツだ。

私の味付けをメロウさんが気に入りほぼ毎朝これになってる。


「そうなの? 大丈夫?」


「はい、今はいつも通り」


「そう、もし辛くなったらいつでも言ってね。休んでいいから」


「ありがとうございます」


自分もつらいだろうに。

『”メロウさんの体調、何とかしてあげたい”』なあ。


<§YUIノ±ΔΛMEROUΦΨ>


「・・・え?」


「どうしたんだい?」


「いえ、何か聞こえたような・・・気のせいみたいですね」


「ふうん?」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



数日後、食材の買い出しの為に町に出ると、

聖女が失くなったと大騒ぎになっていた。


なじみのお肉屋さんで聞いた話によると、

聖女がいた国は次第に魔物が活性化し、

作物もちゃんと世話をしていない畑は、

あっという間に枯れてしまうようになったとのこと。


逆に聖女すごいな。と思ってしまった。

これからは便利なものに寄り添いすぎた国民の人たちも大変だなぁ



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



チリンチリン


「わっ、誰か来た!

 はーい! じゃメロウさん、行ってきますね!」


「ええ、よろしくね」


カウンターのすぐ後ろにあるスペースでお茶をしていたら、

ドアについている鈴がなったので応対をするために表へ出た。

私がここに来てから初めてのお客さんだ。


(わーお)


カウンターの前にはイケメンが立っていた。

私が驚いていると、相手も私を見て驚いたような顔をしていた。


その後ろには男女2人の姿もあった。


「あ~、あの、いらっしゃいませ。 どのような御用(ごよう)ですか?」


(初仕事なの。お手柔らかに頼むよ、イケメンさん!)


私は渾身の愛想笑いをして要件を聞いた。


「あ、ああ、・・・ばあさんは奥かな?」


「え? メロウさんですか? 呼んできますね」


「うん」


お客じゃないんかーい。


(おっ)


私が振り向くとすぐ後ろにメロウさんはいた。

私の対応が心配になってこっそりついてきていたのだろうか。


今のやり取りも聞いていたようだ。


「おや、めずらしいですねぇぼっちゃん」


「ああ、久しぶりだな・・・ん?」


「どうかしましたか?」


「いや、ずいぶんと顔色よさそうだなと」


「ええ、一時はもうダメかと思ったんですけどね。

 そういえば、最近はイスから立ち上がる時の痛みも・・・」


二人は親しげに話をしている。

行っていいとも言われず動けずに後ろからその様子を見る。


「ところでその子・・・新しい人かな?」


「ああ、この子は違うよ。

 色々と身の回りの世話をしてもらっているの」


「いや、しかしさっき私の対応をしてくれてたが?」


「あら、確かに・・・」


二人の顔がこちらを向いた。


「ユイです」


「ありがとう。メロウがとても楽しい毎日を過ごせているようだ」


「え、いえ?」


(なぜお礼を? これが仕事ですし、貰ってますしお金)


「君はどうしてここで?」


「え? お金を稼ぐ必要があって・・・」


なぜそんな質問をされるのかがわからずメロウさんを見る。


「いいよ、説明してあげな」


「え?」


そういわれたらするしかない。

というか、このお客さん暇なのかな? お客さんじゃないの?

それともこのお店のオーナー?出資者?

メロウさんが雇われ店長・・・って感じではないな。


私の話はまあいいけどね。

既に笑い話にしているからね。


「えと、あまり人にするような話でもないんですけど」


私はここに来るまでの経緯をかいつまんで説明した。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「その後この国のギルドで仕事を探していたらここを紹介されまして、今ではいろいろと教わりながらここにいます」


私はこの人生で一番の短い冒険譚(ぼうけんたん)を話して聞かせた。


「なるほど、大変だったね・・・」


「いえいえ、今は幸せなのでいいです」


後ろの二人も同情の目を向けている。

というかしゃべるのはこのイケメンさんだけで、後ろの2人は全くしゃべらない。


「しかしユイは、急な質問に対して受け答えもしっかりしてるね。

 今の話もちょっと聞き入ってしまった、話もうまい」


「いえいえ、このくらいは。だって私に起きたことですよ?」


私は両手の手のひらを胸の横に広げておどけて見せる。


「いや、感心しているよ。

 それで、ユイはこのお店を継ぐの?」


「いえ。

 ああ、ええと、色々と魔道具について教えては頂きましたけど・・・」


私はメロウさんを見る。


「この子は良くしてくれてね。

 こんな先がないお店を任せたら辛いことばかりですよ。

 このお店は、私の代で閉めます」


「そうか・・・」


「そうだぼ・・・ハイン、もし私が死んだら、この子を連れて行ってくれないかい?

 とても器量がよくってよく気付くし、嫌な顔せずに色々やってくれるのよ」


(え!?)


「ふむ?」


「メロウさん、ありがとうございます。

 でも私が出きるのは、おしゃべりや、ちょっとしたお世話ぐらいですので」


「・・・そう?」


「はい、後の事はこの仕事が終ってしまったら考えますので。

 ありがとうございます。」


「そう・・・」


「ハインさん、初対面の私に色々気を使ってくれてありがとうございます。

 それではごゆっくり」


「ああ、またな」


私はせっかくの訪ねて来てくれたお客さんとの会話を、これ以上邪魔したくないなと思い、

会釈をしてバックヤードへ引っ込んだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「ユイ」


バックヤードで魔道具修理の手引書をぼんやり眺めていると、メロウさんに呼ばれた。


「はーい」


「お土産を貰ったんだ、次のお茶でいただこうかね」


「おお~。あ」


バックヤードから顔をのぞかせると、イケメンさんが1人だけ残っていた。


「ユイ。それではまたな」


「あ、はい。またです」


最後の1人はイケメンスマイルでそう言って出て行った。

びっくりした。

なんのフェイントなの?


その後はお客が来ないお店で私は店主の話し相手になった。

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