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転生聖女さんの無自覚な軌跡  作者: ゆめのなかのねこ
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【第06話】魔道具修理店りゅうのひとみ 1

「ここかな」


”りゅうのひとみ”


ギルドに指定されたお店に向かってみると、

かなり(さび)れた・・・いや、年季(ねんき)の入ったお店が目の前に現れた。


ドアは閉まっており、クローズと書かれた札が下がっていた。

私はお客ではないので遠慮なくドアノブに手をかけた。


ガチャ、ギィィ・・・ チリンチリン。


ドアを開けながら薄暗いな、と思った瞬間にドアについていたベルが子気味の良い音を立て驚いた。

ある程度ドアを開けると伸びた針金がレールのような部分から外れて、くるりと戻っていき、そのちいさな衝撃で鈴が揺らされ音が鳴るようだ。


「・・・こんにちは~。

 ギルドの斡旋(あっせん)で来ました~」


私はなるべく明るい元気な声でお店の中に話しかける。

返事はすぐきた。


「おや、もう来たのかい?」


声はカウンターの奥から聞こえて来た。


「いらっしゃい。見ない顔だね。この町の子かい?」


少しして高齢の女性が少しつらそうにしながら歩いてきた。


「違います、先ほどこの街についたばかりで」


「へぇ、そうなのかい。

 しかし最近でもあんたみたいな子がいるんだねぇ」


「え?」


聞いてみると、旅をして、次の旅費を稼ぐためにその土地で住み込みで働き、観光し、

お金がたまったらまた旅に出る・・・というのを繰り返している人種がいるらしい。

そういう生き方も、ずいぶんと面白そうだが、メンタル強くないと無理そうだ。

将来の事とか考えた時に。


「ああ、私はそういうんじゃないですよ。今回が初めての旅でしたし」


「そうなのかい。まあ確かにそれにしては幼すぎるとは思ったけどね。

 荷物もないし、ってあんた、なんて恰好してんだい!?」


高齢の女性は私の荷物がない事を言いながら服を見て悲鳴のような声を出した。


「あはは、えと、ユイと言います。 よろしくお願いいたします」


「・・・メロウよ、よろしくね」


メロウさんは急いで私をバックヤードに入れてくれて、

そのまま奥の小部屋に連れて行った。


店舗と住居が一体となっているタイプのようだが、それにしてもずいぶんと広く小さな部屋も多い気がする。


「とりあえず、この店で昔用意した作業着なんだけど、

 その恰好よりはずいぶんとマシなはずよ。

 サイズが合うものを自分で選んで持っていきなさい」


「あ、ありがとうございます!」


小部屋にはクローゼットがあり、メロウさんがその1つを開けると

何着かの作業着が掛けられていた。

私は自分の体に合いそうな2着を取った。


作業着と言っていたが、邪魔にならないデザインでフリフリも付いており、とてもかわいいものだった。

年代物なのか、ちょっと黄ばんでいる部分があるのが残念だ。


「大事にします」


「そうしておくれ・・・って、ユイちゃん、下着は?」


「あ、そういうのも無いですね」


私は当然のように言い放つ。


「あなたなんてこと・・・お金あげるから買ってきなさい!」


メロウさんは憤りを感じているような顔をして、強めに言われた。


「え、いいんですか?」


「いいもなにも、あなたそういえば手ぶらだけど、荷物もないの?」


「はい、あ、一応両親からもらったこの小袋ぐらいですね・・・」


「・・・家出じゃないのね?」


「違いますよ。

 両親とは話をして、ギルドの登録費用を用意してもらって出てきました。

 今は空っぽですけど、この小袋です」


私は小袋を開いて見せた。


「そう。 あまり聞くことじゃないかもしれないけど。

 こんな小さくてかわいい子を、追い出す親がいるのね。

 じゃあお金はそれに入れるのね?」


メロウさんは自分の財布からお金を取り出し、私が開いた小袋に入れてくれた。

ちゃり、ちゃりーん。


「え、すいません、こんなに・・・」


「いいのよ。ほら、今から行ってきなさい。

 あ、この作業着に着替えてからよ!」


「も、もちろんです!」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



私はかわいい作業着に着替え、急いで教えてもらったお店を回った。

この辺の地理が分からなかったので、ギルドで貰った地図にしるしを入れて貰った。


貰った金額から、おそらくは数日分の予備も買えという事だと思い、3枚づつ下着を買った。

この世界に生れ落ちて、初のパンツ、初パンだった。


「戻りました~♪」


「お帰り、ご機嫌(きげん)そうね。買えたの?」


「はい、3日分買いました」


「そう、おつりは持っていなさい、何か足りないものが出たらそれで買うようにね」


「まだ働いてないのに、何から何まで、すいません」


「ふふ、あなた。

 こういうときは、ありがとうって言うのよ」


メロウさんはようやく笑ってそう言った。


「・・・ありがとうございます」


私も笑ってそう答えた。

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