【第05話】シオコツ王国 地方都市グエツ
シオコツ王国 地方都市グエツ
女性ばかりのパーティー、気高き野薔薇と別れて、私は一般の列に並んだ。
冒険者として活動している人とは入り口が違うのだ。
ちらりと気高き野薔薇のいる方向を見るが、小屋がありその姿は見えなかった。
すんなり入れなかった人が詳しいことを聞かれる小屋のようで、兵士さんの後ろに3人の冒険者がついて入っていくのが見えた。
私と言えば、簡単な質問に答えたらそのまま中に入れて貰えた。
無料だった。
(わお!)
街に入ると沢山の人の往来があった。
服もしっかりしており、靴も履いている。
外の壁も重厚感があり圧巻だったが、中の広がる街並みも素晴らしく興奮した。
地面も建物も石造りだ。
その一方で。
(ひいい、恥ずかしいよぉ・・・!)
当然ながら街の人たちは私の恰好に驚いたように見ていく。
特にオヤジ達からは好評のようで、なめ回すような視線が来た。
一度通り過ぎたけどこっそり戻ってきて、私の足なんかを見ている。
私の周りをくるくると回るおかしな人の流れが出来上がっていた。
(ううう)
しかしこれは、こんな格好をしている自分が悪い・・・。
私は下着をつけていないので、こんな貧弱な服、ぺろりとめくられたら全部見えてしまう。
(気高き野薔薇のお姉さまが言っていた通り、
早くお金を稼いでいろいろ買わないと・・・まずはパンツかな?)
入ってすぐにある街の案内板を見つけそこに向かう。
そこでも視線は痛かった。
(ええと、あった。冒険者ギルドは大通りをまっすぐか・・・)
道がそうなら仕方がない、人が多い大通りをまっすぐ向かおうじゃないか。
下手にわき道から行って迷うよりはいいはずだし・・・。
ちなみに、案内板の場所からすでに冒険者ギルドは見えていたので、
人に場所を聞きながら行く必要はなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
冒険者ギルドにつくと冒険者風の人以外にも、沢山の街の人が居た。
羞恥の視線に耐えながらカウンターへ向かう。
(ふひー)
「こんにちは、今日はどのような御用ですか?」
私のような田舎者にも慣れているのか、受付のお姉さんは優しく聞いてくれた。
「仕事を探してます。あと、ギルドへの登録もお願いします」
「あら、ではまずはギルドへの登録からね。
保証金と発行手数料で5000円ですが・・・」
お姉さんは心配そうに私を見る。
「あります、はい」
両親からもらった小袋だが、ちょうど5000円入っていた。
私は小袋から5000円を取り出しカウンターに乗せる。
お姉さんは小銭だらけのお金を素早く数えてからほっとした顔をした。
「はい。
ではこちらの用紙に必要事項を記入ください。文字は書けますか?」
「はい、大丈夫です」
お金は出してしまったので、もう後には引けない。
もし返してもらっても、それはそれで手詰まりだろう。
この世界では仕事のあっせんも冒険者ギルドで行っている。
両親と気高き野薔薇のお姉さんに聞いた通りだった。
(あ・・・)
ふとスキルところで手が止まる。
鑑定を受けられなかった弊害がさっそく現れてしまった。
「ああ、スキルなどは記入しなくても大丈夫ですよ。
戦闘に関することや、回復関連のスキルは重宝されますので、書いた方が有利な場合も多いですが」
「そうなんですか?」
「ええ。ですが、少しでも戦闘に関するものであれば、是非申告してくださいね。
なしと書かれるよりはいいので」
戦闘関連のスキルか。
痛そうだから嫌だな。
「では無しで」
「はい」
不備がない事を確認し用紙を返すと、必須の講習を受ける事になった。
今日は自分しかいないらしいので、すぐにやってくれるとのこと。
言われた場所へ向かう。
講師をしてくれたお姉さんは私の恰好を見てびっくりしていた。
そして小声で、えろッと・・・。
ここで習ったのは大きく2つ。
1つ目は街の中での暮らしについて。
私の考えている、仕事のあっせん関連。
この街の住人であれば、冒険者登録は必要なく斡旋してもらえるが、
私のようなよそ者は冒険者登録をして身分を証明しないといけない。
2つ目は、いわゆる冒険者としての話。
注意事項や薬草の採取方法、低レベルのモンスターの情報など。
追加費用を払うとモンスターの倒し方の講習を受けられる。
費用は出世払いでもいいらしい。
「これはいいかな・・・」
「いいの? まあいいけど」
「はい、私は戦闘スキルもないので、モンスターと戦うつもりはないんです。
この街で仕事を探すときにいるから取ろうと思っただけで」
「ああ、そういうクチなのね。
いいわ、お疲れ様、これで講習は終わりよ。
今は重要なところだけ説明したけど、この冊子にはもっと
いろんなことが書かれているから、目を通しておいてね」
「はい。ありがとうございました」
礼儀正しくお礼を言うとにっこり笑われた。
(これで終わりか)
意外とあっさり終わったことに驚いた。
内容も常識的なことばかりだったな。
「はい、これがあなたのカードよ。
なくしたら・・・どうなるんだったかしら?」
「1100円の再発行手数料がかかります」
「正解よ。
じゃあ仕事斡旋をしているのは2階になるから。
いい仕事見つかるといいわね」
「はい、ありがとうございました」
他に問題が出るかと思ったら、これだけだった。
私そんなにモノ無くしそうかな?
「あと、服買いなさいよ」
「そうですね、あはは」
講習を受けた後はその足で2階の仕事斡旋のカウンターへ向かう。
私は下から覗いてくる住人や冒険者風の男性の視線から逃れるように、壁側にそって、お尻を抑えながら階段を上った。
後ろから、なんなんだお前ら、階段の前で止まるな!邪魔だ、どけという声が聞こえて来た。
もっと怒られろ!
斡旋のカウンターでお姉さんに色々と話を聞き、住み込みで掃除などの雑務をする仕事を探してもらった。
「じゃあこの地図を見ながらお店を目指して、ご主人にこの紙を渡してね」
「はい、ありがとうございました」
ちなみに紹介料だが、募集をした側が支払うシステムとのことで、
ここでの支払いはなかった。
私が立ち去る後ろから、「えっ、えろッ」というお姉さんの声が聞こえた。
薄いから、歩くたびにお尻側の短い布がなびくんだよなぁ・・・。