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転生聖女さんの無自覚な軌跡  作者: ゆめのなかのねこ
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【第47話】外伝 さとがえり

時は戻り、結婚式が終わってしばらくして、だいぶ落ち着いた時、

私はふとあのボロの実家が恋しくなった。


そこでハインに相談をしたところ、教会本部で平気だったのだから大丈夫だろうと

私を送り出してくれることになった。


村をでて初めての帰郷(ききょう)だ。

私は鼻歌を歌いながら計画書をハインに提出した。


・あしたおやつのあと実家にかえる。

・お昼前に戻ってくるのでご飯はお城で食べる。


私の適当な計画書をハインは笑って受け取ってくれた。


「じゃあハイン、みんな、お昼前には戻るから」


翌日、朝ごはんを食べた後、だらだらと過ごした後、おやつの時間が終わってから私はみんなにそう声をかけた。


「ああ、気を付けて。

 ご両親にもよろしく伝えてくれ」


「うん」


「ユイ、気を付けてね」


「うん」


「・・・・」


「アミさん、お昼にはもどるから、一緒にご飯食べようね」


「・・・うん」


私は後ろ髪を引かれる思いを断ち切って出発する。

ハインは本当はこちらから挨拶に行きたいが、遠すぎるのと、立場的に難しいと申し訳なさそうに言っていた。


まあその辺は私は気にしてないんだけど。

やっぱ挨拶はしてもらった方がいいのかな?



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



聖女スキルで透明になり、出発だ。


まずは教会本部の入り口に転移する。


案内の人が入り口の前に立っているが、私は透明になっているので気づかれない。

中では今も引継ぎとか、改善の会議をやっているのだろうか。


まあ私ができる事はやった。

後は自分たちで何とかしてほしい。


私はそこから飛び上がり、まっすぐ私が生まれたマカニロ村を目指す。

ひゅんと飛んで、あっという間に村に着いた。


「おお、上から見るとこんな感じなのね」


空から見下ろすと点々と村人が畑を耕したりしているのが見えた。


(ううむ、なんちゅう恰好だ・・・)


この村の外に出て、あらためてここの衣服の異常性に気づく。


一応、私がこの村に生れ落ちて、すぐに異常性には気づいていたが、

改善したいなと思いつつ、気づいたらいつの間にか慣れてしまっていた。


後はその労力に対し、帰ってくるものは報酬ではなく、新たな労働、っていう感じがあったし。



相変わらず私が見下ろす先の村人たちは薄い布をまとっていた。

中には服になっていないものを巻き付けているだけの人もいる。


「私、あの恰好で都会の町をうろついていたんだよねえ」


冒険者パーティー気高き野薔薇に連れ出してもらって、隣の国の地方都市グエツで、

私はあの恰好でしばらくのあいだ、街を歩き回っていたのだ。

慣れとは怖い。

あの時も確かに恥ずかしかったけど、それでも町を普通に歩けていた。


今ならあの恰好はで街どころか家の外に出ようなんて考えられない。


姿を透明にしたまま実家の前に降り立つ。


中からは人の気配がした。

ドアなんてなく、すだれのようなものが入り口に下げられているだけだ。

私はそのまま中に入った。


さて姿を現そうかと思ったら、若い母が炊事をしていた。


(えっと、呼び方はおかあちゃん、おとうちゃん、よし。・・・って!)



私の母は若くてぴちぴちしている。

何歳で私を生んだんだってぐらいには。


そして例にもれず薄い布の服を着ており、大事な部分こそ隠れていたが、

かまどの火を見るために頭を下げたときに、形の良いまんまるのお尻がこちらに突き出された形となった。


もちろん下着なんか履いていない。まるっとモロ見えなのだ。


「えっろ!」


「え? ユイ?」


「あ、はい、私です」


私は姿を現す。


「まあ、帰ってきたのね」


突然姿を現した私に、母は特に反応せずににこりと笑ってそう言った。

母は昔からこんな感じだった。


「うん、里帰りね? 帰ってきてはいないから」


「ふふ。とても元気そうでよかったわ」


「おかあちゃんもね」


そういって母につられ私もにこにこ、二人でにこにこと笑った。


「ユイ、いい服着てるわね」


「おかあちゃんもね」


「え?」


「・・・おかあちゃんってさ、すごいいい体してるよね・・・」


私はぶしつけに母の体をなめるように見た。


「えー? そう?」


「私が男だったら抱いてるね」


「何言ってるの。でもユイになら抱かれてもいいかもね」


そういって若い母は大きな胸をゆさりと持ち上げてみせた。

若干服が持ち上がり、下半身が丸出しになる。


「やめてよ気持ち悪い!」


「ユイが言い始めたんでしょ」


「そうだった、ごめんごめん」


そういって二人でけらけらと笑った。

このやり取りは久しぶりだ。


前世の記憶がある分、精神年齢が高かった私は、

本当に会話がしたかったときは遊びに行かずに母とおしゃべりをしていた。


どんなフリをしてみても、母は乗ってくれる。

そんな楽しかった記憶がよみがえる。


私は座敷(ざしき)に座り、両手を後ろについて、足を投げ出した。

母はご飯を作りながら時折振り向いて話しかけてくる。


「それでどうしたの?」


「ちょっと、様子を見に来た」


「ふうん?」


「私結婚したよ」


「え! 誰と?」


「ハインって人」


「へぇ。どんな人?」


「ん~・・・いい人だよ。頑張って守ってくれようとする」


「ふうん? なんの仕事してるの?」


「オージ、いや、王様なのかな?」


「王?」


「うん、コーンドルグっていう、ここから2つ国境を越えたところの王様よ」


私はあっち、と指をさす。


「・・・本当なの?」


「うん」


「めかけ?」


「違うよ、ちゃんとした方のおくさん」


「・・・よくわからないけど、幸せなのね」


「うん」


「そんな幸せなおくさんになったユイは、一人で歩き回ってていいの?」


「え? ああ、許可はとってるよ」


「そうなの」


「うん」


そういいながら私は周りを見渡す。

そういえばこの家は、建て直すと言っていたが、まだのようだ。


「その旦那様の事、おかあちゃんと、おとうちゃんに紹介してくれるの?」


「うん、服買ったらね」


お尻丸出しの母は紹介できないからな。

ハイン困るだろうなー。


「服? 今着ているのじゃダメなの?」


「ダメだね。 今度、持ってくるから」


「ユイが着ているような服だと、ここでは目立っちゃうわね」


「じゃあ、向こうに行く時だけ着ればいいよ」


次からは転移で行き来できるから、

まずは私の部屋に二人を通して、

ちゃんとした服に着替えてもってからハインと挨拶してもらえばいい。


「ふふ、じゃあ楽しみにしてるわね」


「うん、あ、これお土産。二人で食べて。私もう帰るから」


私は素朴ながらも甘いクッキーを一つ包みテーブルに置いた。

これは私とアミさん、アユさんで昨日暇つぶしに焼いたものだ。


「おとうちゃんには会わないの?」


「うん、そろそろ時間だから。

 おとうちゃんは、また来るからその時ね」


「わかったわ」


私はばいばい、と言ってからお城の自分の部屋へ転移した。

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