【第45話】外伝 教会の今の体制をぶっ壊す!
教会についてハインと相談したが、やはり真っ黒らしい。
どこから改善していけばいいかという事だが、
上の老人と一部のおじさん達をバッサリ切って、新しい人間を立てる以外の道が見えなかった。
「ねえ、ハイン、それって命を奪うってこと?」
「彼らはちゃんと犯罪してるからね。
代表と幹部の何人かはそうなると思う。
もちろんほかの国と連携してとなるだろうから、数年以内にとはいかないだろうけど」
「それ、情報漏れて逃げられないかな」
「無いと信じたいが・・・むう」
どうやら粛清は無理っぽい。
「ハイン、実はね」
「ん?」
「一回、二人で話をしない?」
私はちらりと周りを見回した。
「分かった。いったん休憩にしよう」
「「「はっ」」」
「ユイ様、30分ほどでよろしいですか?
それとも午前の会議はこれで終わりにしますか?」
家臣の1人がキリッとした顔でそう聞いてきた。
期限を確認するのは大切なことだ。
さすが”私が仕込んだ”だけはある。
「ええと、そうね・・・」
「まあ、午前の会議は終わりでいいだろう。
午後は夕方にまた集まってくれ」
「「「はっ」」」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
家臣たちが資料を片づけ出ていき、使用人さんがお茶を入れてくれた。
「さて、ユイ、どうした?」
「ごめんねハイン。ただ、この話をあの場ではしたくなくて。
それに、この話をハインがOKしてくれたら、あの後の話し合いが全部無駄になるからさ」
「ん? そうなのか?」
「うん、そうなの」
「わかった。
では聞かせてくれるか?」
ハインは紅茶のカップをテーブルに置き体をこちらへ向けた。
「うん。実は、聖女スキルの中には、人格改変というスキルがあるの」
「じ、人格改変?」
ハインがうわずった声を上げた。
「うん。こうありなさいと伝えると、その通りに生きようとする。
そんなスキルよ」
「ええ・・・?」
「それでね、実はハインの家臣さん達も、
ちょっと素行が良くない面があるというか・・・」
「え?」
「かけたの。さっきの3人にも。すでに」
「え? 3人って、今出て行ったあの3人か?」
「うん、でも安心してほしい!
ただ、他国に情報を売らないようにしてほしいとか、
ハインに協力して、この国がよりよくなるよう、協力をしてって事しか言ってないから!」
「え? え? ・・・待ってくれ」
ハインは驚いた後、しばらく目をつむって考え始めた。
私はハインの思考が終わるまでお茶を飲みながら待った。
辛そうだ。
それもそのはず、あの3人はハインの幼馴染なのだ。
これは言うつもりはないのだが、実はこの人格改変のスキル、他国の人間にも使った。
本当はこの国の主要な人にだけにかけたかった。
真面目じゃない人も結構いたので。
でも、そうさせてくれない人もいた。
例えば、あまり会いたくなかったので避けていたら、とうとう偶然を装って廊下で話しかけて来た他国の王妃様。
あの国の王妃様はこれからは自国と同じぐらい、この国、コーンドルグ王国を愛して手をかけてくれることになっている。
でも結局はその見返りとして、小さなお願いは聞くことになったので、引き分けなのだが。
だって、あんなに一生懸命な王妃様に、何の成果も持たせずに帰らせるのもかわいそうに思えたので・・・。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「・・・分かった」
「ん?」
「教会の上層部に直接会って、”正しくあれ”と、聖女として命じた、という事であれば
教会の体制ががらりと変わったとしても問題とはならないだろう」
「おお、さすがハインね。
実は私もそうしようと思っていたの。
一部の政界の人も巻き込むつもりだから文句はでないよ、いい方に傾くわけだしね」
「ああ。それに、できるだけ償いもさせるようにすれば、
トップに君臨し続けても、あまり文句は出ないかもしれないしな」
「ああ、彼らにはやめてもらうよ?」
思わず冷たい声が出た。
「え?」
「だって、犯罪してるんでしょ?
納得しないよ。それだと誰も。私も。
だから、後継者を見つけて、引継ぎをしてもらうの。
でもそれはやっぱ、体制が変わりきってからかな」
「そうだな、しかし、体制が変わるまでの間は許すのか?」
「許すとかはないよ。
だって、罪を犯した人をさっさとどけてしまったら、新しい人が、
前任者の起こした問題と、その罪の償いに足を引っ張られて
ちゃんと活動ができなくなるでしょ?」
「確かにそうだな」
「だからね?
”犯罪を犯していたのは自分たち。 今からはそれを償うために活動をする。
どうか新しい人たちを、そのことで足を引っ張らないでほしい。
罪はすべて私が償う”みたいな事を、大々的に発表させてからだね」
ハインは驚いたあと少し考えて口を開いた。
「ユイ、本当によく考えつくな。
しかしそこまでの事が可能なのか?
人格改変で、方向性を伝えたとして・・・
あいつらは今までもずっとあのイスにしがみついていたような奴らなんだぞ?」
「きっとできるよ。確信してるわ」
「そうか・・・ユイはそれやるにあたって、どうしようと考えているんだ? 作戦はあるのか?」
「話は簡単だよ、実際に会いに行くの。
そして、こう生きてほしいって言う。
賛同してきたら今後はこうやるといいんじゃないって更にやってほしいことを提案するわ」
「そうか。もしもはないんだな?
帰ってこれなくなるなんてことは・・・」
「無いよ。大丈夫。
長年聖女を抱えていたからって、聖女をどうこうすることはできないよ。
聖女には洗脳も効かないから」
厳密には、システム以外の、とはつく。
下手に洗脳されて、システムからの指示が受けられなくなったらシステムの仕事が増えるからね。
そういう意味では聖女が本当に解放されるのは、死んでからってことになるか。
まあ私は幸せに人生を全うするつもりだけど。
システムさん、よろしくね。
「そうか、わかった。ユイに任せる」
「ありがとう。
聖女のための組織が真っ黒じゃ、示しがつかないからね」
「・・・そうだな」
私はにこりと笑い、ハインは少しだけ顔が引きつった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
後日、教会本部から来ていたお誘いに対し、ぜひ訪問したいことを伝えたところ、
すぐに準備をしてお迎えに上がると返事が返ってきた。
その手紙には到着後のパレードや、各政界のトップの人との面会などの要望があったので、全部受けた。
関係者という事だろうから、ここでまとめて世直しをしよう。
ハインはお留守番で、私だけが教会本部へ向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
馬車に揺られること数日、教会本部に着くと、上層部の人たちが全員揃って待っていた。
「みなさん活動お疲れ様です。
今日はお誘いいただきありがとうございました」
とにこりと笑う。
結婚式の時とは違い、ハインがいなかったからだろうか、ちょっと雰囲気が違った。
私は誰一人とりこぼさないように、この場で作戦を実行することとした。
「実はみなさんに、お願いがありまして」
「なんでしょう」
「はい、実は・・・」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その後のパレードでは街がひとつになって祝ってくれた。
これからいろいろ変わるから、みんなも頑張ってねと心の中で応援した。
路地裏の方がちらりと見えた。
ボロボロの服を着た子供たちが不思議そうにこちらを見ていた。
その日の午後から、滞在している間この国の各政界のお偉いさんが面会にやってきた。
そのたびにハインと一緒に考えた、”お願い”をしていく。
もともと彼らはこういうのに慣れていたのだろう。
”また何もわかっていない聖女が理想を掲げている。
こうあるといいですね、だと? ばかめ!”
みたいな思考をしているのがまるわかり。
それもお別れの挨拶をするころには、
”まあそう生きてみるのも悪くはないかな。試しにそうしてみるか。”
に考えが変わっているのだ。
これで数年後にはこの国も”さすがは教会の本部がある国だな”と言われるような国になるだろう。
任務完了!




