【第44話】エピローグ ヘルプ
シオコツ王国 地方都市エッグ
そこに滞在するある冒険者のパーティーが助けを求めていると話が来た。
普段はどこかでストップが掛かるような内容だった。
なぜそんな話が仮にも王妃の私のところまで届いたのだろうと思ったが、その直後にぴんとくる。
「それは女性だらけのパーティーですか?」
「はい、そのようです。パーティー名は、気高き野薔薇というそうです。」
「懐かしい!
ハイン、その人たちは、私を村から連れ出してくれた恩人たちなので、会いに行ってもいい?」
私は報告者から視線を外し、ハインに許可を求める。
「わかった。では私も行こう」
通信の魔道具で先触れを出し、その30分後に私はハインと護衛数人を引き連れ、地方都市エッグへ転移した。
「ありがとうございます。
彼女たちは人格もよく、我々をたくさん助けてくれてくれまして」
「そうだったんですか」
「はい、以前あなたが聖女として発表されたときに以前の関係を聞きまして」
宿屋へ足早に向かいながらこの町の偉い人と思わしき人が説明をしてくる。
「ここです。あ、ミイアさん」
「え?」
宿屋の入口には包帯ぐるぐるのミイアさんが居て、よっと手を上げてきた。
「お久しぶりです」
「お久しぶり。ふふ、立派になったね。服も」
「ふふ、はい、おかげさまで」
「へまをしてしまってね。モンスターは倒すことはできたんだけど」
「すいません、私が新人を押し付けてしまって」
「誰も悪くはないよ、あれは運が悪かったんだ」
町長さんが謝罪をすると、なんでもないとミイアさんは返した。
「こっちだ」
ミイアさんは部屋へ案内してくれたが、ひょこひょこと歩いている。
左足がダメになっているのが分かった。
部屋に入るとみんな大けがをしていた。
特にひどいのが・・・
「リンダが私たちをかばって瀕死の重傷を。
私たちはどうなってもいい、うちらのリーダーを助けてほしい」
メンバーたちから覚悟をした目を向けられる。
「わかりました」
私は両手を胸の前で組む。
「この人たちに回復を」
温かい光が部屋の中を満たし、その中を沢山の白い羽のようなものが舞い散る。
前回入れっぱなしにしていた聖女エフェクトも発動したようだ。
聖女エフェクトは聖女スキルの1つで、普通は少し光るぐらいなのが、ゲームのようにド派手になる。
「・・・今までの古傷も含めて全部治った」
リーダーもすぐに目を覚まし、みんなで抱き合って喜んだ。
その後にお礼を貰う。
「あの時助けてくれたから、こちらも助けることが出来、恩返し出来ました。
あの時は自分の事ばかりでろくにお礼が言えなくてごめんなさい」
「何を言っているんだ、お礼ならちゃんと言えていただろう。
私たちはむしろ感心していたんだぞ」
「本当ですか?」
「本当だ」
その後少し話をした後、傷は癒えたが、体力はそのままなのでしばらくは休むよう説明し宿を後にした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
招かれざる客。
「ユイ!」
転移をするためぞろぞろと夜の広場へ向かっていると、急に私の名前を呼ぶものがいた。
元婚約者だった。
建物の影から出てきた彼は勇者だ。
「話がしたいんだ」
「・・・あなた一人なの?」
「一人で来た。仲間は宿にいる」
いやな予感しかしない。
そう思っているとハインが肩を抱いてきた。
その姿に元婚約者は動揺する。
そしてその口から出てきたのが。
「・・・ユイ、お前のことは俺たちが見つけたことにしてくれないか?」だった。
いや、雰囲気からしてよりを戻そうとか、うちのパーティーに来てくれって絶対言うつもりだったでしょ。
「さすがに意味がわからないわ」
「くだらないな。ユイ行こう」
「そうね」
「あ、ユイ待って・・・」
なおも言い寄ろうとしたもと相方は、この町の兵士さんたちに拘束されていった。
見つけたって、同じ年に村に生まれた幼馴染だったでしょうが・・・。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
支援要請
「ユイ、少しいいか」
「うん? どうしたの?」
ある日私がアミさんと同じソファーで仲良くまったりしているとハインが疲れた顔をして部屋に入ってきた。
ちなみにアユさんは1人掛けのソファーの方に座って紅茶を飲んでいた。
「ドリアー王国より魔王軍との戦いで多数の怪我人がでているとのことで支援要請がきた」
ドリアー王国は私が生まれた国の名前である。
「えっ?」
魔王は海をわたった隣の大陸にいる。
隣と言っても陸地からあちらの陸地は望遠鏡を使っても見えない距離で、
海に出て、魔法で加速した船で20日ほどかかるらしいが。
「えと、魔王がこの大陸に攻めてきたということなの?」
「いや、どうやらあの国が無駄にちょっかいをかけているだけらしい」
「あほらし」
「そうだな」
「勇者パーティーが壊滅状態だってのも、魔王側が生かして逃がしてくれたんだよね」
「確かにそうかもしれないな。
で、すぐ怪我を直してしまうと、治したこちらにまで火の粉が飛んでくるかもしれん。
行く必要はないと思っているが、一応話をしておこうと思ってな」
「あの時声をかけて来たのは、この為だったのかな?」
「そうかもな」
「ま、死んで無いなら回復魔法使える人も同行しているだろうし、ゆっくり治してもらえばいいよ。
ポーションもあるだろうしね。
て言うか、私が向こうにいったら、なんやかんや言われて帰してもらえなさそう」
「可能性はあるだろうな」
「まあ転移で無理やり戻れるだろうけど・・・」
「ユイはこの国の王妃、それはおかしい」とアミさん
「そうね」とアユさんも同意する。
「そうだな。
それともうひとつ、たまには家、まあこの王城の事だろうな。
ここから出るよう、ユイの両親からも添え書きがある」
「王都から離れたあの貧乏な村の両親が、
国の正式なお手紙に添え書きを?」
「そうだ」
「それはあり得ないかなぁ」
私はこの能力を得てから、実家にはこっそり帰っている。
もちろんハインには話をして。
「もし両親が巻き込まれる可能性があるなら、
しばらく城に滞在してもらうことも可能だぞ」
「あ、そうだね。
どういう状況になっているか今夜会いに行ってみるよ。
その時にこっちに来ないかって、相談してみるね」
「わかった。じゃあいろいろと準備しておくよ」
「ありがとう」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その夜、私は実家に転移で帰った後両親に話をした。
両親は最初遠慮していたが、最終的にこの国に移住することになった。
でも王城は無理という事で、この国の農業をやっている集団の仲間に入れてもらった。
農民に護衛がついたヘンテコな状態となったが、これは私もハインも譲れなかった。
前と比べ家も立派になり、食糧事情も改善されたためか、妹と弟が生まれた。
かわいくて仕方がなくて、時々遊びに行っている。




