【第43話】エピローグ 巡礼
巡礼という名の外遊。
巡礼といいつつ、行先は各国が頑張って整えたリゾート地だ。
各国の思惑としては、なんとしても恩恵を受けたい。
そのお礼としてささやかながら、おもてなしをするという事らしい。
巡礼以外にもいろんな国から遊びに来てほしいとお願いが届いた。
私宛で来る手紙も全部お城の人が開封してチェックしてもらうようにしているので
抜け駆けとか、そういったことは起きない。
「聖女なんだから贅沢なぞ期待せずに来い」といった国もあったらしい。
でも聖女が滞在すれば、その国には富が生まれるのにそれは矛盾するだろうと、その国にだけは失礼だと謝罪を求める手紙を返したらしい。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ハインの部下の人が巡礼と言ったときに、私は盛大に嫌な顔をした。
「ハイン、まず言っておきたいのは、私も面倒くさいという理由だけでは断りたくないという事なの」
「ん、ああそうだな」
「よくは覚えてないけど、聖女の里で学んだことにも、誰かを救えなんて一言だってなかったし」
「そ、そうなのか?」
「うん。過去の聖女がそうしたのだったら、それはその人の性分でそうしたのか、後々話を捏造されたかじゃない?」
「まあ、今までの聖女は総じて、大げさに話が盛られてはいるだろうな」
出た、意味のない忖度。
「ハインは、もともと私があまり外に出るの好きじゃないことは分かってるよね?」
「それはもちろんだ」
「あまりかまわれるのは疲れるの。ハイン以外は!」
言葉を選びながらしゃべっていたら、最後とんでもないことを口にしてしまった。
「ふふふ、わかった」
ハインは満足そうに笑った。
部下さん達はあっけに取られたり、ほほえましそうに笑っていた。
ま、まあいいか。
という事で、いろいろと条件を加えてもらい、最終的に私は巡礼という名の外遊には、一応了承をした。
部下さん達に私は結構わがままと思われているかもしれない。
しかし私が求めるのは観光でも偉い人との繋がりなんかじゃないのだ。
当初、毎年、1年の半分以上をかけて世界の国を回るスケジュールだったらしい。
この国はこの季節が素晴らしいとか言い訳していたけど。
「忙しく移動し続けるのは嫌、私は忙しいのは嫌なの。今だってギリギリなのに」
そういうと1年ではなく、数年に分けて回れないか検討を始めた。
1つの国は1回滞在したら次は3年後とか、その分滞在期間を延ばすか?とか。
それでも十分だるいなあと思った。
私はインドアなのだ・・・。
そもそも前の聖女さんは外遊してなかったでしょうに。
なめられてる。
そんななか、みんなが真剣に検討しているのにハインは私の顔を見てニヤニヤしている。
「・・・あの。巡礼の期間を減らしてもらう代わりに、
各国に私専用の部屋を用意してもらえれば、その期間ごとにそこへ転移して作業をやったり、読書をしたりする・・・ってのはどうですか?」
と提案してみる。
というのは私がいる場所が豊かになるからだ。
私はそこに存在するだけでいいのだ。
なかなかの良案だと思ったが。
「夢中になって、帰るのを忘れたりしないか?」
「あまり国を離れられると、砂漠化がまた再開するかもしれない」
「滞在時間に偏りが出て不満が出るかも」
「そこだと何かあった時呼びに行けない」
と、いろんな理由で不採用となった。
他にも転移で回ることもできるけど、地域の人たちに顔を見せる為に馬車で移動してほしいらしい。
なので時間がかかる。
最終的に国はたくさんあるので1つの国につき、3年に1回。
ある国を超えていく必要がある場合だけは、そこに国を転移で飛ばしてから馬車で移動することになった。
その国の領土に入った瞬間から滞在時間はカウントですか?、と言ったら全員から笑われた。
恥ずかしくなり部屋を出ようとしたらハインに捕まって抱きしめられた。
「休憩しよう」
とハインが言うと、みんなが部屋を出て行った。
「すまないな。ユイは体が小さいし、子供のかわいい抵抗をしているようにしか見えないんだ」
「むう・・・わがまま聖女、って言われてそう」
「そんなことはない。あっても、気にする必要はないだろ」
「まあ確かに」
「前の聖女は閉じ込められていて、そんなことはしてなかったけど、数代前の聖女は各国を回っていたらしい」
「旅行好きの聖女だったのかな」
「それはわからんが、庶民に混じって食事をするのが好きだったとか」
「へぇ」
とにかく、巡礼に行くことが決まったのであった。




