【第42話】エピローグ 変化
結婚、聖女として発表と、大変なイベントをこなし、
私はこれでもかとゆっくりとした日々を過ごしていた。
これがもし宝石や服などを買いあさってわがままを言いまくる王妃だったら問題があっただろう。
特にこの国、今は貧乏だし。
でも私はその逆で、ただひたすら部屋に引きこもっていた。
もちろん暗い部屋に1人でという訳ではなく、
王妃として用意された部屋の中で仲の良い人たちとゆっくりしていただけだ。
王妃とか聖女関連で適度にやることもあるし、
それ以外は本を読んだり、お菓子を焼いたりもしている。
「う~ん、これぞスローライフ」
私はソファーの上で伸びをした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
私が平民から王女さまとか聖女さまになったように、周りにも変化があった。
変化その1 アミさん、アユさん
この二人は私専用の騎士となってくれた。
私からハインにお願いして、二人へ要望を出し、二人が答えて来てくれたのだ。
「ユイ、疲れてない?」
「アミさん、大丈夫だよ」
「そう、座らなくていい?」
「ずっと座っていたからお尻が痛くなったの」
「じゃあ座って休まなきゃ」
そういってアミさんが私を抱えようとする。
「ちょ、ふふ、わかりました、座りますね」
アミさんはかいがいしく私の世話を焼いてくれる。
最近は私を妹というよりは、自分の子供だと思っているふしがある。
もしくはペット?
「ユイ」
アミさんがクッキーをこちらに差し出そうとしている。
一生懸命なのがうれしいが。
「わかりました。ではみんなでいただきましょう」
「それは良い考えね」と1人用のソファーで本を読んでいたアユさんも同意する。
「わかった」
この量を食べさせられたら夜ご飯が入らなくなる。
危なかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
変化その2 私が生まれた村からの手紙
「ユイ、いいか?」
「なあに?」
ハインがそろそろいいだろうと1つ話をしてきた。
「え? マカニロ村からですか?」
「ああ。 村長より、”沢山のお願い”が書かれた紙が届いていてな。
あまりにも自分勝手な内容ばかりで、悪いがこちらで勝手に断った。
そもそも大半が自分の国にやって貰うべき内容、規模だったからな」
「ええ・・・」
確かに行動力のある村長だったけど、なるほど。こうくるか。
「ユイのせいじゃないさ」
「ありがとう。
それで、”沢山のお願い”とはどういったものだったの?」
「ん、そうだな、村の建物の建て替え、自国の王都への道の整備、
大きな商会の支店を作る、冒険者ギルドの支部を作る、
など、まあ栄えている街と同じにしろという内容だ」
「うわあ・・・」
自国の王都への道って、完全に関係ないじゃん。
「あとは昔の聖女の物語を読んだんだろうな。
村の真ん中に果物がなり続ける木を植えてほしいとか、自分の家の前に井戸を掘ってほしいとか、
村人を祝福して、移住者が来たら特典としてそれも祝福を、など、まあいろいろだな」
「村長・・・さすがになあ」
「ユイが村が嫌になって出て行った事を理解できてないようね」とアミさん。
「最低。ユイは村を出てよかった」とアユさん
「うん、そうだよね」
「それと、ユイの村はもともと聖女の祝福が届かない場所にあり、それでも十分やっていたという話だったが」
「う~ん・・・それも聖女の力だったんでしょうかねぇ」
私は自分の手を見る。
正式にはその時は聖女ではなかったけど、システムが私を次代の聖女として保護していた、と考えると辻褄は合った。
「聖女になる前の話ではあるが、モンスターや害獣が出なかったそうだな」
「はい」
「ユイが気にする事じゃないよ」
「そうよ、ただそこに生まれたというだけなんだから」
「アミさん、アユさん。そうですね、あまり考えなすぎないようにします」
そういうと3人は安心したような顔をした。
後日村には、他国の事なので手を出すことは難しい。
国際問題に発展する可能性もあるので自国に依頼をするように。
その際は、聖女からの要望ではないことも記載するようにと返事を返した。




