【第39話】結婚式と聖女発表(2)
挨拶には順番がある。
1番目が各国の王族達。
2番目が各国に支部がある教会。
3番目が各国のお偉いさんたちだ。
王族達の挨拶のあと、教会のトップのおじいさんの順番が来てハインがピリッとした。
というのも、私はこの教会に誘拐されていたからだ。
(ただし教会側は説明をしてお連れしただけの一点張り)
結局その途中で私は逃げ出し、狼の聖獣が私を聖女の里に連れて行ってしまったので
その計画は失敗に終わったのだが。
しかしおじいさんはそんなことお構いなしだった。
「ユイ様。
お会いしてはっきりしました。あなたは本物です。」
「ありがとうございます」
私はぺこりと頭を下げた。
「ユイ様。
我々は聖女様のためだけに存在しています。
ぜひいつでも足を運んでください。お待ちしております」
「ええと・・・」
おめでとうすらなくて驚いてしまった。
この人がトップなら誘拐だって平気で指示を出しそうだ。
目をしっかり見ると、嫌な思考が流れて来た。
カビ臭い、支配欲にまみれた思考だ。
のどに引っかかるような嫌な感覚があり、うがいがしたくなった。
(黒いな。これはいろいろ裏でやっていそう。
あとでハインに相談しよう)
聖女のためにある組織が黒くては示しがつかないぞ。
「今日は私とユイの結婚式でもあります。
祝いの言葉を頂けないでしょうか」
ハインがそういったので私はハインの腕をとる。
「・・・ふむ、おめでとうございます。
ではユイ様、いつでもお待ちしておりますので」
おじいさんは不機嫌そうにそういって去っていった。
トップともあろう人が、勧誘がヘタクソすぎるでしょ。
まあ、トップだからこそ、普段勧誘なんてせずヘタクソなのかもしれないけど。
後でハインに話を聞いたところ、あまりの態度に私を誘拐したことに対するちょっとした嫌味とけん制を込めた言葉を言えなかったそうだ。
”ユイは自分と結婚した、祝いの言葉をくれ”もまあまあの口撃だったとは思うけどね。
まあどちらにしろ、この組織なんとかしないと・・・って感じではある。
そのあとは各国の重要人物の番となった。
こちらは結婚式の後の挨拶ではなく、聖女としての顔合わせになる。
先ほどとは打って変わり、本当の顔合わせのような感じだ。
聖女発表の際に口が悪くなってしまった人たちも居たが、
先ほど言っていた批判の言葉は出なかった。
心の中は知らない。
人が多すぎるから、もう気にしても仕方ないなと考え笑顔で対応した。
明日のパーティーもこの調子で何も起きなければいいのだけど。




