【第38話】結婚式と聖女発表(1)
コーンドルグ王国の王子ハインと、聖女ユイの結婚式はつつましやかに行われた。
それは王族として求められる品位は失わず、各国の王族に恥じないようなものだった。
つつましやかなのはお金がなかったからだ・・・。
それでも通常より参加者が多くなってしまった原因は、同時に今代の聖女の発見と発表をする旨を招待状でお知らせしていたためだ。
結果、すべての国の王族より参加する旨と、その国の有能な人物や、顔合わせをさせておきたい人物がいるとの事ので、
追加で数十名参加したいと返事をしてきたのだ。
そうなると規模を大きくする必要があった。
王族同士ではご祝儀を包む習慣がない。
しかし全員をもてなすとなると、すでに国が傾いている今、破綻の可能性が出てくる。
もし国が破綻してしまったら、見栄を張って式を豪華にするからと国民からも怒られてしまうだろう。
いろいろ考えた結果、やんわりと、しかし絶対にわかるように、
”長く続いた財政難のため、多くの席を用意したくてもできない、ギリギリです”と正直に書いて、
参加者は数人に絞ってもらい、滞在期間も王族は5日間、それ以外の方は1日は面倒を見るが、
それ以上はVIP用の滞在施設に自費で宿泊費の支払いをしてもらいたいことを伝えた。
このアイディアは聖女が出したもの”
と書いたのだ。
本来なら許されない暴挙かもしれない。
そこで最後の行だ。
この世界が聖女が一番尊重されるのだ。
私は貰ったスケジュールが書かれた紙を見る。
1日目の夕方に結婚式と聖女の発表
2日目は午前中は国内の広間でのお披露目の後馬車でのお披露目パレード。
夕方からはまた1日目のメンバーとお城でパーティ。
3日目も同じように午前中は国内の重役さん達との顔合わせ、午後が各国の王族の女性とのお茶会などになる。
話すことないんだけどどうしよう。
ちなみに魔道具の話題はやめた方がいいらしい。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
1日目
「ユイ、準備はいいか?」
「うん」
式の前に控室で段取りを確認したり、ゆっくりしていると時間が来たようだ。
会場の方は何度も交渉をして人数を絞って貰ったかいがあり、最初に予定していた会場に全員入れることができた。
全員とは、王族以外を含めた全員である。
通常王族の結婚式は他国の王族さん達と、自国の重要人物だけで行われる。
でもウチは今お金がないのだ。
ドアの裏から千里眼を使い会場を見ると、やはり王族以外が同じ会場にいる事を良く思っていないようで、
何人かの王族は他国の明らかに王族とは違う服装をした人たちに嫌そうな視線を送っていた。
「それでは定刻となりましたのでハイン第一王子とユイの結婚式を始めたいと思います。
あちらをご覧ください」
司会役の人が私とハインがいる入り口を方向を手で示した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
式は問題なく終わった。
他国の王族達の値踏みするような視線のおかげで半減したけど、うれしくてずっと笑っていた。
「みんな祝福の言葉をありがとう、これで愛するユイと夫婦となることができた」
ハインが挨拶をした後、続けてユイが聖女であることを伝えた。
幸せそうな顔をして王妃となったばかりのユイが聖女だと発表したことで、
しばらくの間だれも制御ができないほどのざわめきが起きた。
その中にはやはり、という顔をした人も何人もいた。
先ほどまでのほんわかしたムードが政治的な色を帯びた。
大っぴらにではないけど、口々にこの国がひとりじめか!とか、聖女を王族にするとバランスが崩れる、
だから庶民を娶ったのかとか、それとは分けるべきではとか、愚かな、などの批判的な言葉も多く聞こえてきた。
全員がそうではなく、周りの雰囲気に困惑した顔の王族の夫婦が何組かいたが、かわいそうなことをしたなと思った。
今、この会場にいるお客さんたちは、聖女スキルですべての発言、表情、汗のかき方で簡易的なウソ発見器をかけた状態となっている。
悲しいことに、結婚の祝福をしてくれているのはほんの一握りだった。
逆に、私たちへの批判を口にする人を馬鹿にした目で見ている人もいた。
やはりハインの言う通り、メインは聖女が誰なのか、そしてこの国の位が底辺であるために、
多少なら批判を口にしてもお咎めがないとたかをくくられていることが分かった。
そして彼らのほとんどは、発表された聖女をどうやって自国へ持って帰ろうかと会議をしてから来たに違いがなかった。
私は黙って批判的な人を頭の中のメモ帳にかきかきする。
場を沈めたのは各国の王族たちである。
今後自国への恩恵を少しでも得るために、どうふるまうのが一番かを天秤にかけ、あらたな聖女の祝福をし始めた。
それに倣い、王族以外の参加者たちは口を閉じたのだ。
(いろいろ盛り上がっているところ悪いけど、傷つくなあ)
これはハインたち予想通りの動きだった。
あらかじめ言われていたとはいえ、この変わり身の早さ。
祝福の言葉は表向きで、手に入らないと分かれば、後々お願い事をしやすいようにしているだけなのだ。
正直微妙な気持ちにはなったけど、示さなければ始まらないとハインから言われたことを思い出し、気持ちを取り戻した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
式の後そのまま聖女の発表とした訳だが、それで終わりではない。
そのまま対面での祝いの言葉を頂くらしい。
ハインと私は用意された椅子に座り、挨拶の行列が私たちの前にできた。
ハインと私にそれぞれおめでとうと、今度お茶しましょうねといろんな国の王妃様からお誘いを受けた。
その中には先ほど感じた、心から祝福をしている王族の女性も含まれていたので心からの笑顔で返した。
途中疲れて来たのでこっそり聖女スキルのヒーリングをエフェクトOFFで私とハインにかけた。
気づいたハインがにこりと笑いかけて来た。
一方で、並んでいる人の中には心の中では私の事を絶賛見下している女性もいた。
そういう人はたいていしっかり態度に出ている。
庶民の出、しかも山の上の村の生まれだと情報が出ているようだ。
「ユイ様、私がこの国にいる間に、ぜひお茶に呼んでくださいね。
いろいろとお話したいこともあります」
「はい」
相手は笑顔だけど、有無を言わせないじっとりとした圧を受ける。
そこははいと言っておけとハインに言われていたのでそう返事をした。
この場で断るというのも英雄だけど、さすがに自分以外の部分で国同士に摩擦が起きるのはまずいものね。
何人かの王族と話をした後にやってきた夫婦はとても印象のいい夫婦だった。
それもそのはず
「よく来てくれたな。姉さんも」
とハインも嬉しそうに言った。
王様の方は友人で、王妃様の方は、どうやらハインのお姉さまのようだ。
「2人とも、おめでとう!
ハイン、よくやったな!」
そう言ってニカリと笑った。
「ハイン、これまでもいっぱい苦労してきたけど、
これからはさらに忙しくなるわね」
とお姉さまもにこにこと笑っている。
「あはは・・・頑張ります」
お姉さまの言葉にハインは苦笑しながらそう返した。
というのは、私が聖女の里に籠っているときに、ハインのお父様、国王は病気で亡くなっていたのだ。
それからはずっと忙しい日々をハインは過ごしている。
「もう前みたいに冒険者としてうちの国に来ることは無いだろうけど、
いつでも歓迎するからな。
手伝えることがあれば、いつでも言ってくれ」
「ああ、その節は本当に助かったよ。
これからも頼りにさせてくれ」
後から聞いたがこの2人は同い年で、同じくらいの規模の国の王子同士で親交があったそうだ。
「うむ。
・・・ユイさん、ハインのいいところはもういっぱい知っていると思うからここではあえて言わない。
ハインを、この国を、そして余力があれば、この世界もよろしく頼むよ」
「はい」
「それでは後がつかえているようだから」
「またね、お茶しましょうね」と王妃さま
「はい、お姉さま、ぜひ」と私。
この国とはうまくいきそうだ。




