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転生聖女さんの無自覚な軌跡  作者: ゆめのなかのねこ
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【第36話】みんなとの再会

コンコン。


クローゼットの中を眺めているとドアがノックされた。



「はーい」


「ユイちゃん!」


ドアを開けると仕事仲間のニーナさんから抱き締められる。


「ユイちゃん、おかえり!

 無事に帰って来れたって聞いたよ。本当?何もない?」


「ご心配お掛けしました。

 ニーナさんが思うような悪い事は無かったよ」


「・・・そっか」


「うん。ご心配お掛けしました。

 無事に戻ってくることが出来ました」


「うん、良かったよ・・・」


「ニーナさん心配してくれたんだね」


「当たり前よ」


「ふふ、ありがとう」


「ユイ、お腹空いたでしょ。

 今ミルさんが腕によりをかけてご飯を作っているから」


「1年ぶりなので楽しみです」


ミルさんはこの宿の腕の良いコックさんだ。

どの料理を食べても美味しかった記憶しかない。


ニーナさん達と少し話をしたあと、仕事があるからと帰って行ったが、

少しすると他の同僚が訪ねてきてきて無事を喜んでくれた。

まだこの後も何組か来るそうだ。


「ユイ、無事で良かった。

 何かあったらいつでも相談してくれ。

 あと、アユとアミも心配していたから会った時には何があったか話してやってくれ」


ハイン率いる高ランクパーティーメンバーのアクセスさんも顔を見に来た。

アユアミ姉妹にも知られているようだ。


「わかりました。ありがとうございます」


アクセスさんにそう返事をしたタイミングで料理が運ばれてきた。


「あ、ミルさん、ご無沙汰しておりました。

 呼んでもらえたら食堂に行ったのに・・・」


「疲れてるだろうと思ってな。

 まあ無事で良かった。 旅行だったのか?」


「ふふ。そう答えられたらよかったんですけどね。

 しっかり誘拐されました。行った先は違いましたけど」


「ん、そうか。まあ無事に帰ってこれたようで良かったよ。

 さあ冷めないうちに食ってくれ」


「わあ、デザートまで。

 ありがとうございます。頂きます」


「ふむ、では私はこれで」


アクセスさんとミルさんはそう言って戻っていった。


私もあれが良いとアクセスさんがミルさんに言っている辺り、交流があるようだ。

まあ長期滞在者(?)だから知り合っていても不思議ではないか。


私はその姿を見送ってから部屋に戻り、料理に手を付けた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



食事を終え、幸せな気持ちで食器を返却に行くと、

ちょうどオーナーが帰ってきて、もうすぐでハインが来ると教えてくれた。

問題なければ応接室で待っていてほしいと言われる。


(まあ私の部屋にはハイン、入ってこないからなぁ)


それはそうと、お腹も満たされ久しぶりに魔道具をいじりたくなった。


「オーナーさん、久しぶりに魔道具をいじりたいんですけど、

 壊れたランプとか無いですか?」


そう言うとオーナーは苦笑し、

「いっぱいありますよ」と言って部屋を出て行った。


オーナーの部屋に取りに行っていたのだろうか。

そういえば今回は応接室だ。


きっと兵士を沢山引き連れて来ても大丈夫なようにだろう。

冷静だな~。


そして数分後、4つのランプを抱えて戻ってきた。

まだあるそうだ。


1年分あるのだろう。

これは忙しくなりそうだ。


「改装工事ですが、こんな状況で、どうするか正直迷ってます」


「え?」


「ユイさんも見たでしょう、外の砂を・・・。

 客が来ないんです。

 他の宿も状況は同じで、そうそうに廃業した所もあるんですよ」


「そうなんですね・・・」


改装工事しないとランプはまた壊れるけど、お客来ないとなるとなぁ。

この宿がなくなるかもと思うと悲しい気持ちになった。



「ふふ、まあ私はそう簡単には宿をたたむつもりはありませんよ。

 最後の一軒になるつもりで、意地でも続けるつもりです」


「そうなんですね。私も協力します」


宿が半分機能していなくても地元の方が来るレストランもあるから

他の宿よりは戦えるのかもしれないなと思った。


「・・・おや?」


オーナーがドアの方を見る。

ドア、というより廊下から誰かが走ってくる足音が聞こえた。


コンコン!


「どうぞ」


「オーナー、久しぶりの雨です!」


「ほ、本当ですか!」


オーナーと一緒に窓を開け外を見てみると、

びっくりするほど大粒の雨がすごい音を出しながら地面に降り注いでいた。


システムが私がいる場所の解析を行い、先程の私の発言、

この宿を手伝う、つまり”この地に留まる”という意思を受けて調整を始めたようだ。


みんなは突然の事に困惑しつつも嬉しそうに笑っており、

私はそれならまあいいかと思うことにした。


今後も、ちゃんとは覚えてはいないけど、その時が来た時に思い出すことが多々ありそうだ。


私はテーブルに戻り、オーナーはみんなのところへ向かった。


ハインがすぐに来るならばと、私は聖女スキルの加速を使った。

これは自分の周りの時間を早くするスキルだ。

ちなみに余計に年を取ったりなんてことは無いので安心して使える。


1つ、2つ、3つとランプを直していく。

一応確認はするが故障の原因は同じなのでポンポン直っていく。


4つ目のランプも無事に直り、カポリと小気味のよい音を立てながら

フタをはめ込んだ所でバタバタと下の方から騒がしい声と足音が聞こえてきた。


こちらです!というオーナーの声も聞こえた。


(お、来たかな?)


頭の片隅でそう考えながらも視線はランプに。

粛々(しゅくしゅく)と魔力ネジをしめていく。


「よし、終わり!」


テーブルに直った4つ目のランプを置いたタイミングで

「こちらです!」とまたオーナーの声と複数の足音が近づく。


すぐにドアが、少しだけ荒々しくノックされる。


「はい、どうぞ」


私が加速を解除して、そう返事をするとすぐにドアが開き、ハインが勢いよく入ってきた。

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