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転生聖女さんの無自覚な軌跡  作者: ゆめのなかのねこ
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【第32話】聖女の里(3)

(よっこらせっと)


大きな犬の背から降りて、伸びをする。


「からだ痛っ・・・ん?」


ふと全く動かない犬が気になり正面に回り込んでみると、

犬は目を閉じてピクリとも動かなくなっていた。


寝ているのとは違う感じがした。


「・・・お疲れ様。ここまで運んでくれてありがとね」


ふさふさの毛を撫でながら、自然とそんな言葉が口から出る。

犬は返事をするかのように、小さくふしゅっとだけ鼻息を吐いた。


(ここは街の中心かな?)


周りを見回し、全ての道がこの広場から放射状に延びているようすからそうアタリを付けた。


(すごいな、この規模の街が全部廃墟で遺跡だなんて、ワクワクが止まらないんだけど)


伸びる道の左右に建てられている建物の数からして、相当な大きさの街であることが分かる。

それがそのまま廃墟となり、更に年月が経ち、遺跡に昇格したものなのだろう。


これだけの規模ならあらゆる施設があったはずだ。

もしかしたら本屋や図書館などがあって、

そこにはまだ読むことができる、状態のいい本があるかもしれない。


もし本がダメでも、魔道具や、装飾品なんかは残っているはずだ。

ここからは見えないけど大きな屋敷なんかを見付けられたら、何かスゴいものがあるかもしれない!


1人悶えていると、ふと広場の中心にある石の祭壇にある、

自分の腰くらいの高さの台座が目についた。


(何か中途半端な大きさの台だな。

 用途不明なところが遺跡っぽくてむしろいいけど・・・光っている?)


「これはどういう使われ方をしたんだろ」


「乗ってみようかな」


「え?」


ふと、私は何かを口走った。


なんだろうと考えていると、自然と体動き、

あれよあれよという間に私は本当にその台の上に乗って、

胸の前で手が交差するポーズをとる。


ちなみに私とは反対側に、台に上る階段があってそこから登った。


(体が勝手に・・・なにこれぇ・・・)



ぱっ!


(!)



一瞬で目の前の景色が変化した。


(え、すご)


目下に広がる、見渡す限り広がる森。

天井は岩。光源は見当たらないが、綺麗に全部見渡せる。


森の中にちらほらと石造りの人工物が無数に見えた。

他にも住居らしきものも見えたが、ここにも人は居ないようだ。


地下遺跡郡(ちかいせきぐん)・・・」


そして歩きだして気付く。

自分が居た場所がピラミッド状になっていたことに。


更に。


「・・・あ」


数歩歩いたところで唐突に自分がこの試練所でやるべきことが分かった。


(そっか、先代の聖女さんも、そのまた前の聖女さんも、いや、聖女さん全員がここで修行したんだわ)


先輩聖女達が真剣に試練に(のぞ)んでいる映像が頭の中に流れた。

先輩聖女達は深呼吸をしてから両手の手のひらを自分の背丈の倍はありそうな石造りの柱に押し付けて、魔力を流し込む。

すると体が光り、石の中に吸い込まれていく。

しばらくすると疲れた顔をして出てくる。


(私も今からこれをやるのね。

 ・・・ふふ、先輩達、負けませんよ!)


そう考えたとき、表情は引き締まり、背筋もピンとのびた。


ここは試練を受け、クリアした分だけ力と相応の知識が得られる、そういう空間だ。

そしてここに入れるのは1人1回だけで、期限は1年間、その間は何度でも試練に挑むことはできるが、それを過ぎると外に出されてしまい、二度と入ることはできない。


(う~ん、覚えることが多いなぁ)


すでに聖女教育が始まっているようで、聖女についての知識が今も頭に入り続けている。

その中にはここから外に出た時に忘れてしまうモノもあった。


この試練所で、試練をクリアするのにだけ必要な知識で、クリアしたらもう必要とされないものなどだ。


ある知識を持って、何かをやりとげる。

過程は忘れるがスキルは手に入り、そのスキルは外に出ても残る。


(ほうほう、今、地上に流通している魔道具は、太古の超文明のほんの一部、

 日本でいう、小学校の理科で習うレベルのものだけなんだ・・・)


こういうちょっと面白い話も含まれていた。

しかしそれだけではない情報、知識もある。


その情報、知識があるが為に、外で生きていく上で精神に悪い影響を及ぼしてしまうもの、

知っていてもどうすることも出来ず、ただ怯え続けることになる、知らぬが仏、的な情報もある。


(マンガ、ラノベ、ゲームがある世界から来た私なら平気だけど、

そういうのがない世界から転生して来た人は死ぬほど恐ろしいだろうな)


「なんて怖い世界なの」


思わず体がブルりと震える。


この世界の底知れない(やみ)(すく)み上がり、

頭がどうにかなりそうになるが、無理やり精神が安定させられる。

この感覚に脳が気持ち悪さを感じる。


『ソうよ、外二出たら忘れられルわ』


その声にぞくりとした。


今の発言は、私の口から出たものだった。

でも私が意図したものではない。

何か冷たい細い金属の棒のようなものが頭に深々と差し込まれた感覚の後に、口が勝手にしゃべったのだ。

その影響だろう、口がしびれてうまくしゃべれなくなった。

もうめちゃくちゃだ。


「・・・ふふ」


私は急に面白くなり、うでまくりをした。

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