表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生聖女さんの無自覚な軌跡  作者: ゆめのなかのねこ
28/48

【第27話】ユイ、さらわれる(2)

「ぜえぜえ・・・()かないじゃん・・・」


なぜこんな面倒なことに。


びくともしないドアを前に現実逃避とばかりに、

私はこの馬車に乗せられるまでの経緯を思い出した。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「あの」


「はい?」


仕事があるハインを見送り、宿へ帰っていると後ろから兵士さんに呼び止められた。

さっきいた兵士さんと同じ格好だ。


「ユイさんですよね」


「はい」


「突然で申し訳ありません。

 ユイさんは、狙われているので保護するよう言われてきました」


「え?! でも私は違うって・・・」


聖女ではないと言いかけて慌てて口を閉じる。


「先程のは演技で、実際のところ、聖女はユイさんで間違いありません」


「え。

 ・・・よく分からないんですが、ハインの所へ向かうんですか?」


「いえ、我々はハイン様とは別で動いています」


(んん?まあそうか。

 でないとさっき別れた意味が分からなくなるもんね。

 あれ? じゃあどこへ?)


そんな事を考えていると、目の前の男は更に口を開いた。


「我々は、ユイ様を、・・・聖女様だけを護る組織です」


「え?」


男は少し疲れた風に見える笑顔で、やさしく子供を(さと)すようにそう言った。

なにか分からない怖いものを感じ、背筋がゾクリとした。


「でも、杯は反応していませんでしたけど」


私がそういうと男は自分の後ろにいた男に視線を向け、その男が前に出た。


「・・・レイズと申します。

 実は先程ハイン様がユイ様に聖杯を渡し、確認をした時に、自分もあの場におりました」


「えっ? あ」


兵士さんはみんな同じ服、鎧を纏っていたので正直覚えていないが、居たのだろう。

そういう空気を出している。

私と言えば、ハインのことしか見てなかった・・・・。


目の前の兵士は「気にしないでください」と気さくな感じで言い、更に言葉を続けた。


「あの場では反応しなかったことになりましたが、実はしっかりと反応がありました。

 外にいたほかの者も確認して間違いありません」


「そうだったんですか?」


「はい」


「これ以上は、ここは危険なので移動しながら話をさせてください」


「えと」


「誓って、我々はユイさんに悪いことをしません」


 そういって、目の前の男達は私に(ひざまず)いた。


「ええっ!? わっ、えと」


「失礼します、聖女様」


「わっ!」


迷っている隙に抱き抱えられ、近くに停められていた馬車に乗せられた。


「え、え」


男達は馬車に乗り込んでからも何度も申し訳ないと頭を下げてきた。

私は困惑と恐怖で頭が真っ白になり、ただただ頷くことしか出来なかった。


その間にも馬車は動いており焦りが募る。


「こちらをどうぞ」


私が固まっていると、男が紙を渡してきた。


「・・・これは?」


「はい、これからお連れする場所です。」


「ええと、近くにこんなの、あったかな?」


「ここからは少し離れていますね」


男は苦笑する。


「しかし安心してください。

 我々が必ず安全にお連れいたしますから」


「そ、そうですか」


この人、笑顔怖い・・・。

従っている間は何かされることは無さそうだけど・・・。


助けを求めるようにパンフレットに視線を戻す。

一般人に配っている施設などを紹介したもののようだ。


「・・・立派な建物ですね」


「これは我々の教会、本部の建物ですよ」


「教会、本部、なんですね」


「はい」


(教会ってことは、ドリアー王国、前の聖女様が居たところか。やっぱり・・・。

 この建物、教会というよりは宮殿、いや、寺院って感じ。

 はっ、現実逃避してた)


「次代の聖女となったユイ様は我々の、いえ、世界にとって貴重で大切な存在、なくてはならない存在なのです。

 ケガをしたり病気になったりして命を落とすと大変ですから、保護したいのです」


男は一呼吸置いてゆっくりと説明を続ける。


「先程は騙すような形を取ってしまい、申し訳ありませんでした」


そういうとその場にいた男達がフカブカと私に頭を下げた。


平謝りをする男達に私はなにも言えなかった。

なぜならこの時既に、私はこの男達に完全にビビってしまっていたからだ。


(ひえぇ・・・怖いって・・・)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ