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転生聖女さんの無自覚な軌跡  作者: ゆめのなかのねこ
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【第26話】ユイ、さらわれる(1)

私は(さら)われた。


状況が理解できずに、ただただ焦っていると、馬車が急に止まった。


もう明け方だ。

(さら)われたのが昨日のお昼過ぎで、今はもう明け方だ。


ドン!


(わっ)


すぐに何かにぶつかる衝撃と馬の悲鳴が聞こえた。


「・・・っつ、何だ?」


その声に男の1人のが前のカーテンをめくりそとの様子を見た。


「おい? あ? おい、大丈夫か?」


外を見た男が外に向かって声をかけている。


「どうした?」


「誰か数人で道をふさいでいる。

 あと、御者(ぎょしゃ)が台から落ちたっぽい」


「我々の動き、見られていたのか」


「まあだろうな。

 でなきゃあいつらはただの盗賊だ」


「数的にはギリギリだが、やるしかないな」


御者(ぎょしゃ)はケガしているのか?

 俺は馬を操れないぞ?」


「この暗さでは矢は当てられないだろう。

 あいつらもまだ道のかなり先にいるようだし、

 多分道をふさぐ集団を見つけて慌てて馬を止めた衝撃で落ちたんだとは思う」


先ほどの衝撃は馬と馬車がぶつかった音?


「御者は昨日、朝から普通に起きていたらしいからな、半分寝てたのかもな」


「確かに急な出発ではあったが、それでもプロだろ」


「まあ、御者にはこの後も夜通しで頑張ってもらわにゃならん。

 何にせよ、囲まれる前に外に出るぞ」


「仕方ないな」


男たちは冷静に話をしていたが、その視線が私に向いた。


「ユイ様」


「あ、はい」


「少しだけ、外します」


「すぐに戻りますよ」


「ここにいて下さいね。

 向こうに付けば、みんなが(うらや)むような生活が待っていますよ」


男達はこちらを安心させるようににこやかに笑いそう言った。


(いやいや、人さらいのセリフかよー。

 もし私がそんなに偉いんだったら、向こうに付いたら即効でクビにするよう言ってやる!)


私は心の中で舌を出した。


バタン、ガタガタ、ガタガタ。


(ん? 何をしてるの?)


ドアが閉まった後に、続けてガタガタとおかしな音が聞こえてきたのでドアの窓からそっとカーテンをめくり外を見ると、男が(ぼう)を差し込もうとしている。


(ああ、(かんぬき)ね。抜かりはないと)


外からドアを開かなく出来る馬車なんて確信犯(かくしんはん)過ぎるでしょ。


男たちは(かんぬき)をしっかりと差し込んだ後に前の方に歩いていった。

前のカーテンから外を見ると、1人増えていたので御者さんだろう。無事だったようだ。


(ドアから抜け出すのは無理か。

 そもそも街からかなりの時間を走ってきているから、抜けられたとしても歩いたらどれだけかかるか・・・)


街から離れていると言うことはモンスターが出る可能性があるということ。

戦う力を持たない私だと、モンスターから逃げ切ることも難しいだろう。


やがて遠くから金属同士のぶつかる音が聞こえ始めた。

やはり敵だったようで、争いが起きてしまったようだ。


(てか、この争いって、私を得るためにってことだよね? まじか・・・)



『国に居るだけでいいんです。それだけでユイ様は裕福な暮らしが受けられるんですよ』


そんな事をさっきまで一緒に馬車に乗っていた男は言った。

そんな事を言われたけど、全く自覚がない。


本当に私が“聖女”なのか?

手渡され、今までずっと握りしめていた紙を見る。


(あの聖杯は反応しなかった)


でも、してたらしい。


今は心当たりがある。

あのへんなメガネをかけていた人だ。


みんなが隊長さんらしき人を見ているとき、あの人は私を見ていた。


あれがないと黄金の杯に変化があったことがわからないという事かもしれない。

木箱に入っていたのにその変化に気づけるのはどういう事だろう。

思いっきり光って見えるのかな?

それとも、触った私が光るとか?


私が光っている姿を想像して、ふっと笑ってしまった。


盗聴防止の魔道具が4つで効果があるのと同じで、メガネと杯の2つが対になっており、

一緒に使うことで意味がある魔道具だったのかもしれない。


(というか、めちゃくちゃ戦ってるな。

 夜通し起きててよくそんなに動けるな。さすがはプロか?

 でもそんな状況だからこそ、目の前の敵にしか目が行っていないはず。

 今のうちに私が出来ることは・・・ん?)


馬車の中、窓の外と何か無いか一生懸命探していると、外をかなりの人間が身を隠すように移動しているのが見えた。

あの街からはかなり離れているのに、なぜここにこんなにたくさんの人が。


月明かりでハッキリとは見えなかったが、服装からしてどうやら街の外、この辺で生活をしている人のようだ。

その人たちが向かう先を見てみると、大きめの洞窟が目に入った。


(何とかしてあそこに紛れ込めないかな)


このままこの馬車の持ち主の国まで連れていかれたら、もう2度と外の世界には戻れないかもしれない。

安全かもしれないけど、それは嫌だ。


いちかばちか、あそこまで行って騒ぎが治まるのを待って、街に戻ろう。

そしてハインに(かくま)ってもらうんだ。

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