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転生聖女さんの無自覚な軌跡  作者: ゆめのなかのねこ
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【第24話】黄金の杯(2)

ハインに冒険者ギルドへ連れてこられた。


すでに話は通っているようで、そのまま貸し会議室に案内される。

中は学校の教室くらいの広さだ。


「ユイはそちらへ」


「あ、はい」


部屋の奥の席に座らされ、ハインが私の目の前の席に座った。


「じゃあ頼む」


「ハッ」


ハインの合図で兵士さんが部屋の四隅に置かれていた魔道具を起動していく。

私はそれをじっと見る。


キュイィィ・・・


「それは、盗聴防止用の魔道具ですね?」


「ん、そうだ。良く知って居るな。さすがユイだ。

 見たことあるのか?」


「どうも。

 メロウさんのお店で見たことがあります。

 全く同じではないですけど、似たものがあって、それで効果について教えてもらいました。

 珍しいもので、4つで1つの魔道具として動くんですよね?」


「そうだ。

 しっかり勉強しているな」


「ふふ、でしょ~」


私のどや顔にハインはくすりと笑った。


兵士さんたちは準備ができたようでハインに合図を送る。

お偉いさんぽい兵士さんがハインの両側にどかりと座り、私をじろりと見て来た。


なんだなんだ、怖いんだけど!


私が尋問されるとしたらメロウさんの遺品ぐらいしかない。

どれか取り上げられちゃうのかな。


あの謎の魔道具?

回路図大全だったら嫌だな。もっと読み込んでおけばよかった。


お偉い兵士さんが木箱をハインの横に置き、ガタガタと開け始めた。


ハインはこの兵士さんたちのリーダーなのかな?

結構、偉いみたいじゃん? ちょっとかっこいいぞ。


思わず尊敬(そんけい)のまなざしを向けてしまった。


「ふふ。今日のユイは表情がコロコロと変わって面白いな。

 さて、ここで話すことはこの部屋の外には聞こえない」


「うん」


「つい先日、聖女の捜索が行われたことを伝えたと思う」


「え? ああ、グエツの話ですね」


「そうだ。

 あの話には続きができた」


「うん、なに?」


「グエツに起きていた豊かになる現象だが、あの後無くなったんだ」


「あ、そうなんだ」


「ああ、そして今はその現象が、この国で起き始めた」


「・・・ん? それはこの国で収穫量が増えたってことなんですか?」


「ああ。すごいぞ。

 それに目に見えて壁の外の緑が増え始めたんだ」


「へぇ 植物がですか?」


「そうだ。この国は近年砂漠化が進んでいてな。

 その進行が止まり、逆に植物が増えているんだ。

 例えば、この街の壁の外側の何も生えていなかった地面がずっと草原みたいになっている」


「おお、砂漠が草原に。すご!」


・・・話が読めてきた。


豊かになったところに聖女はいる、ってことだよね。


それで、今はこの国でその現象が起きている。

てことは聖女がいる。この国に。


そんで私1人を呼び出してする話ってことは、私がそうじゃないかって事だよね。


うわ、心拍数上がってきた。

勘違いだったら恥ずかしいけど。


「それは、うれしいですね」


「そうだな。

 それでいくつかの国の人間が、この国、コーンドルグ王国、

 いや、もっと言えばこの街、マスタドだ。

 ここに生まれ変わりが移動したのではと探し始めたのだ」


「・・・なるほど」


「俺たちも移動履歴があるから調べられた。

 まあ実際には女のリデア、アミとアユだな」


「ん? ああ、なるほど」


「俺たちは高ランクのパーティーだから、

 ちょうどその頃にその国を移動をしたってのが記録に残っていてな」


「なるほど。あれ、私は?」


「そうだ、ユイも一緒にこの街に来た。

 だがユイの存在だけは、まだ洩れていない。

 でも何かの拍子に声がかかる可能性がある。他国の諜報員にだ。

 君の幼馴染とか、洩れるルートはいろいろ考えられるからな・・・」


「ああ、まあ確かに。

 あの、調べて、仮に私がもしそうだとなったら、どうなるんですか?」


これ以上の()らしはつらい。私から切り込んでみる。


「教会が先に見つけていた場合、丁重に扱われるだろう。

 そして神殿の奥での暮らしが待っている」


「ん? なるほど」


「なに不自由なく望んだものが与えられるらしい・・・」


「それって、外には出れないの?」


「行事以外では外に出られない。一生教会の中で生きることになるだろうな」


「ええ・・・それは嫌だな」


「現在、各国の諜報員がこのマスタドの街の中を駆け回っている。

 大きな町だが、諜報員が入ってもう数日が経っている。

 もう、いつユイに声をかけてくるかわからない状態なんだ。

 諜報員に発見された場合も同じだ。

 説得され、だめならやんわり脅されて、無理やりにでも連れていかれて、それから外にはきっと出れなくなる」


「・・・そう聞くとめちゃくちゃ怖いですね」


「怖いぞ。

 やつらは手練れ揃いで、見つけたら聖女を巡って争奪戦も起きるだろうな」


「争奪戦・・・。

 確かに聖女がいる国が豊かになるというなら・・・。

 それは人が血を流すレベルの話なんですか?」


「そうだ」


作物の収穫量どころか、砂漠化が止まり緑が増えるくらいの

影響を及ぼせるとなると、そうなるのか?


しかしそう考えると聖女とは、人というよりは環境改善の魔道具みたいな扱いだな。

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