表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生聖女さんの無自覚な軌跡  作者: ゆめのなかのねこ
21/48

【第20話】採用されてはやひと月

採用されてはやひと月。


この期間の間に起きた出来事を上げるとしたら、

まずアミさんとアユさんは地元へ帰っていった事。

オーナーの配慮でしっかりと見送りをさせて貰った。


次に私に与えられた使命、ランプの魔道具はあっという間に全部が治ってしまった事だ。


それもそのはず、原因がほぼ同じでブレーカーが切れてしまっていた、というものだったからだ。

ブレーカーが切れたことによりほかの回路が守られていたので、私はブレーカーをつなぐだけで治せたのだ。


その作業を1日中(ごはんと休憩時間はしっかり頂いた)やっていたら、3日後にはもう壊れた魔道具はなくなっていた。


そして最後に・・・


「ユイちゃん、オーナーが呼んでるわよ」


テーブルをフキンで拭いているとミヤージさんからそう声をかけられた。


「あ、ありがとうございますー。

 ではここだけ終わらせてから・・・」


「ここは良いから、ホラそれ貸して」


「分かりました。あとはここと、そこのテーブルだけです」


「あいよ」


「では宜しくお願いします」


「あーい」


ミヤージさんにフキンを渡し、私は早歩きでオーナー室へ向かう。



コンコン。


「どうぞ」


ガチャリ。


「ユイです、失礼します」


ペコリと頭を下げ中を見て動きを止める。


(やっぱり)



中にはここへ連れてきてくれたパーティーのリーダー、

ハインさんがソファに座ってこちらに手を上げていた。


にこりと笑ってから中に入る。


「さあ座って」


「おはようハイン。それでは失礼して」


最初こそリーダーとか、ハインさんと呼んでいたが、

ここに来た後、本人たっての願いで今はハインと呼び捨てにしている。


二人に(うなが)され、ハインの隣に腰を下ろす。


最初ハインは一人掛けのソファに座っていたが、

二回目からはオーナーが一人掛けに、ハインと自分が二人掛けのソファに座っている。


ここに雇われるようになってからもハインは時々私の様子を見に来てくれている。

大体週に1回のペースだろうか。


とは言ってもハインはオーナーと話をしたあとに私を呼ぶのでついでのつもりかもしれないが、

おばさまとの約束を守っているんだなと感じ、好感度は上がるばかりだ。あとは紳士。


ちなみに今仕事中だったけど、ハインが来ると必ず呼ばれる。

従業員さんたちもそうなることが周知されており、普通に送り出される状態だ。


「さあどうぞ」


「ありがとうございます」


今から行われるのはお茶会だ。

それでも従業員さんたちから反感が沸かないのには理由がある。


というのは私がみんなに紹介された時の話だ。


「今日から一緒に働いてもらうことになったユイさんです。

 メインの仕事はランプなどの魔道具の修理、メンテナンスで、

 手が空いている時は他の仕事も手伝って貰おうと思っています。

 それと時々、とある来客がある時だけ、仕事から抜けてもらって

 接客をして貰うつもりですので、みなさんもその時は協力をお願いします」


「「「「はい!」」」」


(え?)


とこう、一番最初に紹介をされたのに加え、


「それとユイさんのお陰で、みなさんに良いことがひとつあります」


「「「「?」」」」


「ユイさんが魔道具を修理することでかなりの費用が浮く予定なのですが、

 その浮いた幾分かをみなさんの給料に、ほんの少しですが、反映しようと思っています」


「「「「おおお!!!」」」」


「まじか!」


「女神だな!」


「英雄だ!」


(そうなの? 治せなかったらどうしよう・・・)


「今まで魔道具の修理代がかさんで、なかなか上げられなかったけど、

 ユイさんのお陰でそれが出来るようになりました!

 オーナーとしてもようやくみなさんの要望に添って、

 賃上げが出来てとても嬉しいです! ユイさん、ありがとうございます!」


「「「「ユイさんありがとう!」」」」


オーナーがみんなの前で、横にいる私に頭を下げると、みんなが息ぴったりにお礼を言ってきた。


「ユイさん最高だな」


「うむ、増えたお給料で、欲しかったものが買えればモチベーションが上がって、仕事もはかどるぞ!」


「そうなるとお客さんの満足度も上がって、お客さんが増えて、更に給料が上がって、いい事しかない!」


「それって、いいことが1つじゃないってことじゃないですか、最高です!」


(えええ?なにこれ、下手に辞められなくなってない?

 てかやられた! この場にいる人、全員グルなんだ!)


「ど、どういたしましてですぅ」


笑顔だけどみんなの圧が凄い。

私は押しに押されて情けない声でそう言う事しかできなかった。


更に聞いた話だが、ダメ押しで給料明細にもわざわざ”ユイさんの恩恵”という1項目が作られ、

多い人達ベテランさんで大体2万円ほど上乗せされており、

給料のあとは必ずお礼を言われたり、(おが)まれている。


あとは個人的な魔道具の無料相談や、修理があれば格安でしたりもした。

そのお陰なのかもしれないが職場の空気が良く働きやすい。


「ユイ、どうですか?」


「とてもおいしいです」


「ふふ、良かった」


ということで今日もオーナーとハイン、私でお茶をいただく。


会話もややパターン化しており、そろそろこのお茶会はなくなりそうな気もしている。


例えば合間にハインは私の最近について質問してくる。

仕事はどうか?

いつも通りみんな優しくフォローしてくれて楽しいとか、そんな感じだ。


そういうとハインはオーナーに向かってわがままを通してしまって申し訳ない、ありがとう的なお礼を言う。


オーナーは、こちらこそこんな優秀な人材を紹介していただいて助かります、みたいな返しをする。

ランプなどの修理代だけでこの宿の出費の3~4割を占めていたそうだ。


その後は、「それは良かった。ところでユイ、何か困ったことはないか?足りないものでもいい」と聞いてくる。


「今のところはないですよ」


と私が返すのも、やや恒例となっている。

最初のうちはお菓子とかお願いしていたが、これは最近必ず持参されるようになった為だ。


「遠慮はいらないのに」

とハインは少し困った顔をする。


「ふふ」


「そうですよ、ハインさんはたくさん稼がれていますからね、

 何でも言うだけ言ってみたら良いんですよ」とオーナー


「いえいえ、持ってきてくださるお菓子もお茶もとても美味しいので、それだけでも十分頂いてます」


毎回持ってきてくれるお菓子はどれも美味しく、相当なランクのものと見ている。

最上級かもしれない。


ちなみに、このお茶会で頂くものと、個人的に貰えるお菓子を別で用意されており、

個別で貰ったお菓子は部屋に持ち帰って、週に2日ある休みの日、一人の時に頂いている。



今日もいつも通りの流れだなと思っていたら、オーナーが切り出した。


「ところでそろそろユイさんの事情を伺いたいと思うのですが、いかがでしょうか?」


ハインがこちらを見た。

私は少しだけ考えて口を開く。


「そう、ですね。

 うん、特に秘密にしないといけないわけでもないので」


「そうだな。追手がここまで来るとは思えないが、一応話しておくと良いだろう」


「そうですね。では、お茶会のネタにしちゃいます」


私は事情を話した。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「なるほど。

 追手と言う単語が出たので少し身構えてしまいましたが、そう言うことなら納得です。」


「すいません、こちらから言うべきでしたね」


「いえいえ、ユイさんは悪くないですから」


「ありがとうございます」


「しかし事情は分かりました。

 もし連れ戻しがあったら従業員全員でユイさんを守りますよ」


「ほ、本当ですか?

 いや、さすがに迷惑掛かりますよ」


「問題ありませんよ。私たちはそんなにやわではありません。

 それに月並みのセリフにはなってしまいますが、ユイさんはもう我々の大事な仲間、家族ですから」


「俺も居る」とハイン。


感動しようと思ったら、ハインの横やりで感情がフラットに戻される。

その後に急におかしくなった。


「・・・ふふ、では、その時は宜しくお願いしますね。ハインも」


「お任せください」


「ああ、頼りにしてくれ」


私の重い話が終わった後は、私の鑑定の話になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ