【第15話】高級宿のリーズナブルな朝ごはん!
次の日。
zzz・・・ぱちり。
(ぬ・・・?)
すこしベッドの中で、もぞもぞと足をこすり合わせた後に、意を決して伸びをし、むくりと起き上がる。
「くぁぁ・・・ベッド大事だにゃあ」
というのは、起きてすぐに体がどこも痛くないことに気づいての感想だ。
馬車の旅では毛布にくるまるだけで、結構辛かった。
ぽてぽてと歩いて鏡の前に立ち、手櫛で髪を整える。
(ほんと、寝ぐせ付かなくなったな、なんでだ?)
マニロカ村にいるときや、グエツのメロウさんの家にきた最初のころは盛大に寝ぐせが付いていた。
おかげでその分早起きしないといけなかったが、しばらくして寝ぐせが付かなくなった。
メロウさんの家のシャンプーが良かったのかなと思ったが、それにしては効果が出るのが中途半端に遅いような。
たまたまかなとほっておいて、気づいたらそれ以降は寝ぐせとおさらばしていたという感じだ。
試しに髪をちゃっちゃとみつあみにして、手を放す。
ぱっとほどけてまっすぐになった。
CMかな?
そういえば昔に比べて髪が固くなった感じがする。
ちなみに寝相が改善したのかと言えば、そんなことはない。
まあそんなことはいいとして。
先ほどから鏡に映る自分の服に目が行く。
昨日アミさんに買ってもらったパジャマだ。
「ふふふ」
昨日のことを思い出し、思わず顔がほころぶ。
このパジャマは薄くて軽いのに、とてもあたたかく、ぐっすり眠れたのはこのパジャマも関係していたのだと思う。
いいベッドに、いいパジャマ。
背中や首元に少しひんやりとして汗をかいた感じがあるが、触ってみると既にサラサラしている。
名前は忘れてしまったけど、何かのモンスターの素材が使われた高級品らしい。
いくらしたか教えて貰えなかったけど、アミさんはお店の人にお勧めされるまま購入していたな。
一生懸命な顔をしていてかわいかった。
「考えてみればこの世界に来て、パジャマを着たのはこれが初めてだな」
メロウさんの家でも私は下着で寝ていた。
夏なんかはパンイチだ。
さて、温かく着心地が良いのでしばらくはこの格好でもよかったが、これではトイレにも行けない。
名残惜しかったが普段着に着替えるとする。
脱いだパジャマはクローゼットのハンガーにかけた。
「いいねぇ」
少しの間ニコニコと掛けられたパジャマを眺めた後、そっとクローゼットの扉を閉める。
「さて」
とはいえお腹は空くものだ。
朝御飯を頂くために私は部屋を出て鍵を閉め一階の食堂へと向かうのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「わお」
食堂に着くと朝だというのにほぼほぼ席は埋まっていた。
服装的に地元の住人らしき人も多く、和やかに談笑している。
ここは宿の利用客だけではなく、普通のレストランとしても営業しているようだ。
レストランスペースの入り口には立て札が置かれている。
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今日のメニュー(セット)
・ホワイトシチュー
・焼き立てパン
価格 500円 (先払い)
支払が終わってから着席ください。
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「ふむふむ」
私は500円玉を取り出し、立て札の前で待つ。
後ろに数組並んだところでウエイトレスさんがパタパタとかけてきた。
「いらっしゃいませ!
今日のメニューは、当店自慢のホワイトシチューと焼きたてのパンとなります。よろしいですか?」
「はい、頂きたいです」
「では500円となります」
「はい、これで」
握りしめていた500円玉をウエイトレスさんに渡すと、
ウエイトレスさんはそれをエプロンのポケットに入れてから
空いている窓際の席へ通してくれた。
窓から外をみるとそこは宿の中庭で黄緑色をした葉を揺らしている木が見えた。
「はいどうぞ」
すぐにウエイトレスさんが水の入ったコップとホワイトシチュー、パンをトレイに乗せて持ってきた。
「ありがとうございます。いただきます」
「あいよ!ごゆっくりね~」
ウエイトレスさんはにっこりと笑い、
そう言ってほかのお客さんのところへ行ってしまった。
(硬っ)
パンはとても硬く歯が立ちそうになかったので、
手でちぎって口のなかを切らないようにシチューに浸したりしながらゆっくりと食べた。
少しして斜め前のテーブルに運ばれてきたコーヒーらしきものに
ちょっとだけ興味を引かれたが、別料金らしいので注文はしなかった。
(アゴが痛い・・・)
かたいパンは浸しても外皮(?)部分は何度も噛まないと嚙み切れなかったのでアゴが疲れた。
必死でかみついていたおかげか、食事が終わる頃には目もすっかり覚めた。
朝ごはんを食べ終わり、回りを見回したが知り合いは誰もいなかった。
2人の姉妹以外にも、アクセスさんという男性もしばらく泊まっているはずだが。
ちなみにその2人の姉妹からは昼まで寝てると思うと聞いていたので、そのまま自分の部屋に戻ることにした。




