【第13話】コーンドルグ王国 マスタド2
「これからどうするの?」
馬車を下り、アミさんと並んで伸びをしていると、
アミさんの実のお姉さん、アユさんが聞いてきた。
「まずは宿を取ろうかと。
それからギルドで仕事を探します」
「じゃあ私たちと同じ宿にしようよ」
じっと話を聞いていたアミさんがそう提案してくれた。
「え、いいの?」
「もちろん!」
後ろの人たちを見ると、にっこりと笑い頷いてくれた。
「じゃあご一緒させていただこうかな」
「やった」
アミさんが私の腕を取って歩き出した。
私はうれしくなった。
実は別れるのが少し寂しかったのだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「えぇ・・・ここですか?」
「そう」
たどり着いたのは、どう見ても高級と分かる、大きく立派な宿だった。
私が躊躇していると、ハインさんが
「ユイは女の子で1人だから、このぐらいの宿にしておいた方が安全だよ」
と言った。
まあトラブルで、損害がでてお金が無くなるよりは、
快適に過ごしてお金が無くなる方がいいかと考え、またもやアミさんに引っ張られる形で中に入った。
「ハイン様、これはお久しぶりですね。
今オーナーを呼んでまいりますね。
そちらにおかけになってお待ちください」
中に入るとフロントの男性よりそう声がかかった。
どうやらこのハイン率いる高ランクパーティとはなじみのようだ。
オーナーとやらを待つために、みんなでソファーに並んで座る。
アミさんがこの街のおいしい甘味処を教えてくれる。
すぐにオーナーがやって来てみんなで挨拶をして、私も自己紹介とかやった。
そんなことをしていると、宿の手続きもいつの間にか終わっており、鍵を渡されてしまった。
泊まるつもりではいたけど、ちょっとびっくりした。
これからつく仕事次第では、ここを出ないといけなくなるが、
せめてハインさんやアミさん、アユさん達と別れるまではここに居ればいいかと考えた。
(んん?)
しかし、どうやら泊まるのは私以外はアミさんとその姉のアユさん、
それからアクセスさんという弓使いの男性の3人だけだった。
この空気でほかの宿に行くとは思えないので、家があるのかもしれない。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「では行ってまいります」
「行ってらっしゃい、いい仕事見つかるといいね」
「はい、ありがとうございます」
「行ってきます」
フロントの男性にそう言って見送られ宿を出た。
この街の冒険者ギルドへ向かう。
さっそくこの街で仕事を探すのだ。
当分は自由時間のようで、アミさんとアユさんが付いて来てくれた。
アミさんが私の手をにぎってくる。
「ねえ、帰りに買い物しようよ」とアユさん
「買い物ですか? 付いて来てくれたお礼に、付いてきます」
「やった」
「ふふふ」
「どこ行くんですか?」
「ユイの服を買いに、服屋に行くよ」
「え、私ですか? あんまり今はお金使いたくないんですけど」
メロウさんから大金をもらっているけど、どうなるかわからないので
着いた翌日にというのは気が引けた。少し様子を見たい。
「あ~、まあそうだよね」
「じゃあ私がユイに、好きな服、1つ買ってあげる!」とアミさん
「え」
「あ、それいいね、私も1つ買って上げるよ~」
「ええ、悪いですよ」
「ユイの服、ここでは浮くよ?」とアミさんが悪い顔をして言った。
「それは確かに・・・」
「ええと、じゃあ安いので」
「かわいいの!」
「そうよ、ちゃんと似合うものにしないと、プレゼントのし甲斐がないわ」
「そんな、この国まで連れてきてくれただけでもとても助かったのに」
「いいからいいから」
「ユイ気にしすぎ」
「・・・では二人とも、よろしくお願いしますね」
「うん」
「まかせて」
二人に悪意はなく、この国になじめるようにという配慮があるようなので任せてみることにした。