【第00話】プロローグ
ドリアー王国
今代の聖女が住んでいるおり、現時点で一番栄えている国である。
聖女の格によるが、大抵は聖女がそこにいればその周辺が豊かになる。
まず気候が安定し、嵐などが起きなくなる。
野菜を植えれば豊作になり、漁に出れば沢山の魚が捕れる。
毒で汚れた沼があれば底まで透き通り湖となったり。
現在の聖女は名をクレアといい、ドリアー王国の中心の、
やや東に位置する教会の本部に住み、王国の半分くらいにその恩恵を与えていた。
マカニロ村
ドリアー王国のはじっこの低い山の上にある村。
自給自足で成り立つこの村には、残念ながらその恩恵は届いていなかったが、
幸運にも害獣などがいなかったため、山肌に作られた畑だけで十分に成り立っていた。
それ以外にも、この山にのみ自生している調味料を売ることで資金を得ていた。
ユイ
マカニロ村の村娘のユイは、とても静かな子供だった。
トラブルを避け、平穏を愛した。
彼女には時折見せる知的さ、ミステリアスな魅力があった。
ユイはのどかなこの村が嫌いではなかった。
しかし不便なことが多すぎるとも思った。
お金をあまり必要とならない事は嬉しい。
その対価に自給自足があるが、許容範囲だ。
しかし前世では当たり前だった便利グッズはない。
日本で仕事に忙殺されていた記憶を持つユイは、これが前世の続きで、
ある意味ご褒美のフェーズに入ったのだと解釈した。
健康で体も自由に動く、老後のスローライフと考えればいいかと。
ユイは今年で14歳なのだが前世の記憶のせいで達観している。
ミステリアスの裏にはそういう秘密があった。