第9話 悪魔系美少女
遅くなりました。
ブックマークと評価、よろしくお願いします。
最近、お姉ちゃんの様子がおかしい。今までおしゃれなんてまるで興味なかったのに、私に今流行のファッションを聞いてきたり。時々上の空で私が話しかけても返事がなかったり。あのしっかり者のお姉ちゃんが、、、。まさか好きな人でもできた、とか?
そんなの、絶対に・・・・
俺達は無事に小学生達とのキャンプを終え、家へと帰った。帰る途中、紺野さんと上野先輩に会話が少なかったように感じたが、まぁ疲れていただけだろう。家に帰ると、既に時刻は午後7時。本来ならここから夜12時までゲームをしたりするのだが、今回は風呂に入ってすぐにベッドに横たわった。
「さすがに疲れた。」
ブーブーブー。
パッ。
「うーん。」
ポイッ。
ブーブーブー。
「うーん。あいつ朝から何のようだよ。」
俺は渋々さっき投げたスマホを手に取り、電話に出る。
「はい、もしもし。」
「あ、ようやく出た。
今からいつものセイゼリヤに集合。30分で支度して。」
「はぁ?
俺昨日帰ってきたばっかりなんだけど。」
「悪いとは思うわよ。
だから、ご飯奢る。まぁそれだけじゃあ無理、。」
「分かった、今すぐ準備する。」
「え?
あ、うん。待ってる。」
俺はすぐに顔を洗い、服を着替え家を出た。
今日は何の愚痴を聞かされるのやら。まぁセイゼの飯が食えるならいいか。
カランカラン。
「いらっしゃいませー。
お一人ですか?」
「あ、伺っております。
お席、ご案内しますね。」
「あ、はい。」
わざわざ店員さんに頼んだのか。それとも店員さんが優秀すぎるだけか。
すでに11時というのもあって店内にはお客さんが席の8割を埋めていた。
ていうか、もう昼飯だなこれは。まぁあいつの奢りだし、いくら食べてもいいか。
「どうぞ。」
店員さんに促されるまま、俺は席につく。
しかし、目の前にいたのは想定していた人物とは全く異なっていた。
いや、正確にいうと綺麗な女の子という点は同じであった。
「何頼みますか?
今日は私の奢りなので遠慮なくどうぞ。」
「え?
いや、まず君は誰?」
「誰って、さっき話しましたよね?」
「え?」
ちょっと待て、どういうことだ。俺は確かにさっき北条と電話していたが。それ以外の人物だとお母さんか店員さんくらい。まさか、こいつ。
「ゆ、幽霊か?」
「幽霊?
ははっ。三上さんって面白いですねー。
普段幽霊さんとお話してるんですか?」
目の前の少女はケラケラと笑う。
「はぁ、じゃあ結局だれなんだよ。」
その子は急にスマホをカバンから取り出し、操作をし始める。
操作を終えると、そのまま俺にスマホの画面を見せてきた。
そこには絶賛売れ出し中の人気新人声優のネット記事が。
「えっと。
あらゆる役柄をこなせる若き天才声優、ねぇ。
最近の声優さんは可愛い子ばっかりだな。それで、それが何、、、。」
ちょっと待って。
この子、写真の子と凄い似ている気がするんだが。
新人声優「上野 有紗」。まさか、こいつ。
「はい、私はありさ。声優の卵です。」
それから俺達はドリンクバーと料理を注文した。
二人とも飲み物を取ってきて、一息つく。
「ふう、美味い。
て言ってる場合じゃねぇ!
なんでその人気声優さんが俺に会いにきてんだよ。
そもそも北条はどうした。」
「実は、彼女には色々協力してもらいまして。
説得するにはなかなか骨が折れましたが、家族の話題を持ち出したらあっさり折れてくれまし
た。良いお友達ですね。」
「あ、ああ。それは否定しないけど。
ん?まてよ、さっき俺と話したっていったけど。まさかあの時の北条って。」
「はい、私です。
電話越しならあれぐらい出来ますよ。私、天才なんで。」
「さ、さすが。
で、今日は何の用?
北条にも話した家族に関係ある、とか?」
「はい、実は私の姉があなたに騙されているようなのでそれを止めにきました。」
「そうかそうか、お姉さんが。
ん?俺、女の子を騙した覚えないけど。」
「いえいえ、騙されているようなものですよ。
私の姉があなたの良い面をたまたま目撃したばっかりにあなたをいい人だと勘違いしているよ
うで。私から姉に言っても意味ないので、なら代わりにあなたに言ってやろうと。」
この子、笑顔の割に言うことえげつないな。
しかし、誰の事を言っているのだろう。上野、上野、上野。
一人思い当たる人はいるが、この子とその人が兄弟なわけないしな。
でも、妹がいるって言ってたな。
「あのさ、もしかして君のお姉さんって。」
「ええ、生徒会副会長の上野 里香の妹です。」
「そっかそっか。
君のお姉さんにはお世話になってるよ。ここは俺が奢るから、もう帰ろうか。」
「いや、何勝手に帰ろうとしてるんですか。
それに今回は私が奢りますよ。お小遣い、あなたより多いと思うので。」
「え?でも年下に奢って貰うのはさすがに。」
「年下といっても一歳差。対して変わりませんよ。」
「なるほど、じゃあ来年からはウチの高校に?」
「そうなんです!
これで家以外でもお姉ちゃんに会えます!
最近は仕事が忙しくて家でもたまにしか話せていなかったので、もう辛くて辛くて。」
俺は彼女の熱量に驚きを隠せず、ただ呆然と聞いているしかなかった。
「あ、えっと。
とにかく、お姉ちゃんから離れて下さい、以上。」
「いや、離れるも何も。
普段会うことないし、そんな心配する必要は。」
「あなたの意見は聞いてません。いいですか、私は、、、。」
ブーブーブー。
「電話、鳴ってるぞ。」
「ちっ。仕事の人かな。」
嘘、この子ったら思いっきり舌打ちされましてよ。
「あ、お姉ちゃん!
ちょっと店の外行きますけど、逃げないで下さいね。」
俺は静かに頷く。
「あ、もしもしお姉ちゃん。、、、」
さてと、会計を済ませて逃げるか。
俺はレジへ行き、二人分の会計を済ませようと思ったが、レジにはすでにあの子の姿が。
あいつ、電話しながら会計を。
まずい、これじゃあこのまま帰るわけにはいかないな。
俺はおとなしく席へと戻った。
しばらくして、あの子が帰ってきた。
「はぁ、何か電話変わってほしいそうです。」
スマホを手渡され、耳に当てると上野先輩の声が。
「すまない、うちの妹が。
何か変な事言われたりしなかったか?」
「い、いえ。ただ楽しく一緒にご飯食べてただけですよ。」
「そ、そうか。
えっと、今そっちに向かっているから少し待っててくれないか。」
「は、はい。」
そして電話を切る。
「あなたのせいでお姉ちゃんに怒られました。」
「いや、俺何もしてないけどな。
というか、上野先輩のことになると急に子供になるな君は。」
「は?子供ですけど。」
機嫌悪!
これが俗に言うシスコンというやつか。
「あれ?三上君?」
「こ、紺野さん?
どうしてここに?」
「実は、沙也加とご飯食べに来てて。
えっと、そちらの方は、、、。」
「あ、この子は。」
俺が上野先輩の妹だというよりも早く、悪魔が口を開く。
「元カノです。」
その瞬間、時が止まったかのような静寂が訪れた。
何言ってんのこの子。
俺は恐る恐る紺野さんの顔を見ると、少し驚いた様子ですぐ立ち去ろうとした。
「そうなんだ。
じゃあ私はお邪魔だね、じゃあね三上君。」
「あ、いやちょっと待って。」
俺の声も届かず、紺野さんは行ってしまった。
「最悪だ。」
「いやー面白かったー。
今日は、これくらいで勘弁しときますね。」
こいつ、上野先輩の妹じゃなきゃ手が出てたかもしれないぜ。
5分後、上野先輩がやってきた。
悪魔はしばらく先輩のお説教を受けるようで俺は帰ってもらって大丈夫だと言われた。
自業自得だな。
俺は自分の食事代を先輩に渡し、その場を後にした。
しかし、まさか声優さんと知り合いになるとは。人生何があるか分からない。
まぁ正直、二度と会いたくないが。
次回、蒼空と北条と優悟の出会いの物語をやります。