第7話 熱き女達の戦い
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今日は面白いことが起きそうな予感がする。
いや、不幸なことの間違いだろうか。明日から春休み。今日は出来ればゆっくりしたいものだ。
長ったらしい校長先生の話とやけにテンションが高い生徒会長の話が終わり、俺は教室へと戻る。担任からの生活習慣に関するご忠告を賜り、ようやく解放される。
俺は課題をカバンに詰めて、席を立つ。さて、やりそびれていた積みゲーを消化しなくては。
ふ、忙しくなるな。
ちなみに俺の春休みには蒼空と遊ぶか、北条の愚痴をBGMに課題をやる予定しかない。
高校生なんてそんなもんだよな、うん。え?そうだよね?
いや、俺はそう信じてる。まぁ俺にいたっては失恋したばかりだ。穏やかに過ごすべきだろう。
しかし、俺の本日の平穏は今、崩れ去ろうとしていた。
『1年3組、三上 優悟君。今すぐ生徒会室まで来て下さい。』
なるほど、よし。聞きそびれたことにして今すぐ帰ろう。
俺が教室のドアを開け、急いで帰ろうとすると。
「あ、こんにちわ。」
「お、おう。」
そこには振られたばかりの相手、紺野さんがいた。
もう諦めたはずなのに、彼女をみると胸が熱くなる。
これはあれだ、心臓病かもしれない。春休み中に病院に行っておかねば。
「えっと、ごめんね。
どうぞ。」
紺野さんは後ろに下がり、俺に道を譲ってくれる。
「ありがとう。」
そのまま急いで立ち去ろうとしたが、彼女に声をかけられる。
「あ、そういえばさっき放送で生徒会室に呼ばれてたよ。」
「う、うん。聞いた。
でも俺、、、。」
言葉が出てこない。さすがにすぐには言い訳が思いつかないな。
「もしかして、生徒会室の場所が分からないとか?」
「じ、じつはそう。いやー行ったことないからさー。」
「だよね。めったにいかないもん。
じゃあ、私案内しようか?」
「え?あーうん。
よ、よろしく。」
「よし!じゃあ行こー。」
優しいな、紺野さんは。
いつでも明るく人にやさしい。ちょっと残念なところもあるけど。
ん?ていうか俺結局行くことになってる。はぁ、やっぱり振られても好きな子には良い格好したいもんなんだな。
道中、西条さんの可愛い失敗談を聞きながら生徒会室へ着いた。
やばい、どうしたもんか。別に悪いことしてないのに、めっちゃ怖い。
コンコン。
ノックして部屋を開ける。
「失礼します。先ほど呼ばれた三上ですけど。」
部屋の中には、ケラケラ笑いながらうずくまる生徒会長とそれを鬼の形相で睨み付ける上野先輩の姿が。
「おい、これで本当に来たらどうして。」
上野先輩はそこまで言いかけて、俺達を見つける。
すぐに顔は柔らかい表情に戻り、椅子を引いて手招きした。
「良く来たな、友達も一緒か。
ひとまず座ってくれ。」
「あ、はい。」
訳も分からず、俺と紺野さんは席へと着く。
生徒会長は先ほどまでではないが、顔をニヤニヤさせてこちらを見てくる。
「三上君しか呼んでないのに2人でくるとか、もしかして君たちそういう。」
なんとも嫌な質問をしてくる。すると、すかさず紺野さんが。
「いえ、そういうのではありません。
ただの友達で、私が彼を生徒会室まで案内しただけです。」
きっぱり言われると、若干きつい。まぁ事実なので訂正するわけにもいかず、俺は深く頷いた。
すると、生徒会長は姿勢を改め、俺達に向かった頭を下げた。
「ごめん。2人をからかったりして。
悪気はなかったの。」
俺達は顔を見合わせ、その謝罪を受け入れる。
どうやら、良識を持ち合わせた人ではあるみたいだ。
上野先輩にお茶を貰い、少し場が和やかになったところで生徒会長が本題に入る。
とその前に勢いよく生徒会室のドアが開かれる。
「ご、ごめんなさい。三上はちょっと誤解されやすいところがあるというか。
でも決して悪い奴では。」
汗だくになりながらそう話すのは北条だった。
「北条、どうしてここに。」
「いや、あんたが呼び出されたからてっきり悪いことしたのかと。
蒼空は家の用事で先に帰ったし、私が弁護しに行くしかないと思って。」
「お前、なんだかんだ良いやつだよなー。
でもどうやら、そうじゃないっぽい。」
北条も席に着き、ようやく話が始まる。
「実は、春休みに地域のイベントに生徒会で参加するんだけど。
その、生徒会の人手が足りなくて。三上君に手伝ってほしいなーと。」
「あの、事情は分かりましたけど。なんで俺なんですか?」
「男手が欲しかったんだけど、私男友達いなくてさ。
里香に聞いたら1人だけいるって。それで君を呼び出したの。」
「なるほど。」
生徒会長に男友達がいないのは意外だったが、事情は分かった。
「いいですよ。上野先輩には恩もありますし、一日くらいなら。」
「ありがとー。イベントは二日間の泊まり込みになると思うけどよろしくね。
ちなみに私は友達と京都に行くから参加できないんだ、ごめん。」
おお、さっきまでの好感度が一気に半減したな。
まぁでも二日泊まり込み、それはそれで楽しいかもな。
「あ、せっかくなら君たちのどっちか一緒に来てくれない?
参加するはずだった生徒会メンバーも1人急遽行けなくなっちゃって。」
「はぁ、しょうがないですね。じゃあ私が行きますよ。
三上1人じゃ心配なので。」
北条が一番に手を挙げた。
まだ何のイベントかも分かってないのにいいのか?あいつ。
まぁ手伝ってくれるのは素直に嬉しいが。
「あの、私もやってみたいです。
生徒会の仕事に興味があって。」
まじか、紺野さんも。
いや、でもなぁ。俺の精神状態を考えると北条の方がやりやすい。
「あのさぁ、紺野さん。
私と三上の方が仲は良いわけだから、ここはほら。
連携とか取れる方がいいじゃない?」
きっと北条は気を使ってそう言ってくれているのだろう。
「でも私だって三上君とは戦友だし。
恩人でもあるわけだから、手伝う義理があるっていうか。」
あら?これは急にバトル展開ですな。
どうしよう。よし、こういう時は。
「えっと、じゃあじゃんけんで決めるとか?」
するとすぐに生徒会長が反応した。
「いいね、じゃあ里香もやろうよ。
3人の内2人がイベントに参加ね。」
「わ、私もか?」
「それはそうだよ、副会長だからってそんな権限ありませーん。」
この人、絶対今の状況楽しんでるな。
3人が拳を握り、中間地点に生徒会長が立つ。
「じゃあ行くよー。じゃんけん、ぽん!!」
そしてイベント初日。
俺は少し大きめのリュックサックを持ち、集合場所に着いた。
まさかこうなるとは。
じゃんけんで決めるのは間違いだったかもしれない。
次回、あの2人が恋バナします。