第5話 諦めと始まりの予感
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「いいわ、手伝ってあげる。」
「いいの?」
「ええ、あなたの友達。ギリギリ補欠合格だから。」
「いや、ギリギリすぎない?それ。
というか何様なのよ。最後に決めるのは紺野さんでしょ?」
「そうね、私は彼女に救われている側の人間。
でもだからこそ、彼女に変な男を近づかせるわけにはいかないの。」
一切邪念のない、真剣な声音。
その気持ちは分かる。私も普段は言えないけど、あいつには助けてもらっているから。
「じゃあ後のことは任せていいのね?」
「ええ、あなたとこれ以上しゃべりたくないし。」
「同感ね。それじゃあ。」
教室でその様子をハラハラ見ていたクラスメイト達は後にこう言った。
この時の二大美女二人の邂逅を「龍と虎のにらみ合い」と。
それから西条さんは紺野さんを動物園に誘い、自分は急に来れなくなって代理を用意したことに。俺はそのことを知らず、半ば脅迫のような形で西条さんに動物園に呼び出された。
というのが今西条さんからのメッセージで判明した事実。
これからどうしよう。
「じゃあ行こっか。
私、今日コアラ見るの楽しみにしてて。」
「え?」
「ご、ごめん。急に来てくれたんだもんね。
動物園嫌い?」
「そんなこと全然ないよ。
俺、コアラとか好きだし。」
「よかったーー。
私はね、バンダが好き!!」
おいおい、めっちゃ可愛いな。
やっぱり女の子の笑顔を最強だ。
俺はとりあえず彼女についていくことに。
まずいったのが餌やり体験ができる場所へ。
今日はウサギか。
「うーーん、今日はやってないのかなー。」
「ん?やってないんじゃなくてまだ時間じゃないだけだと思うよ。」
「へ?」
紺野さんはスマホをスクロールしてホームページをじっと眺める。
顔を真っ赤にして、手をぶんぶんさせて顔を仰ぐ。
「ご、ごめん。
いつでもやってるものかと。」
「そ、そっか。」
このままポンコツな紺野さんを見てるのも俺得だけど。
「よし、じゃあ今度は俺がリードしていい?」
「う、うん。」
俺達はまずパンダを見に行く。
「最初にパンダ?
お昼後くらいにしようと思ってたんだけど。メインディッシュだし。」
め、メインディッシュって。まぁそう言えるか。
俺は吹き出しそうなのを堪えつつ、冷静に意見を述べる。
「一番人気のパンダは朝一で行く方が空いてていいと思う。
その後ちょっと早めのお昼を食べて、ウサギの餌やり体験。
そしたらコアラを見る道中で、色々見ていく感じでどう?」
「す、すごい。三上君って天才なの?」
「い、いやーそんな凄いもんでもないけど。」
紺野さんに褒められてまんざらでもない顔をしつつ、俺達は今決めたルート通りに動物園を回る。紺野さんは動物と見たりふれあったりして、とても楽しそうにしていた。
俺はというと正直紺野さんのことを見過ぎて動物のこととか覚えていない。
目を輝かせる彼女は俺の心を動かす。
このまま告白してしまいたい、とさえ思った。
きっと蒼空との事がなければそうしていただろう。
動物園を一通り見て回り、俺達は出口へ。
紺野さんは西条さんへのお土産にゴリラのキーホルダーを買っていたが、面白かったので口出しはしなかった。反応が楽しみだ。
そして、このまま別れる空気になったその時。
「あ、あのもう少し付き合ってくれる?」
「う、うん。」
そして俺達は近くのカフェに入る。
コーヒーを注文し、席につく。
「今日はありがとね、付き合ってくれて。」
「いいよ、そんなの。」
「実はその、三上君に言いたいことがあって。」
「うん。」
なんだろう。もしかして俺の気持ちに。
「もしかして、沙也加と良い感じなの??」
「へ?」
さ、沙也加って。西条さんのことだよな。
どういう意味?
「今日さ、沙也加が友達を代わりに向かわせるって聞いた時女の子だと思ってて。
でも、それが男の子でしかも三上君だった。」
「ほう。」
まだ分からん。
「私、沙也加が男の子に言い寄られても全部断ってるの見てきたから。
それで、もしかしてと思って。もし三上君もそうなら私応援するよ。」
ふんす、というような感じで元気よくそう言う。
そうか、俺に可能性はないのか。
はは、こんな形で知ることになるとは。せめて自分の気持ちくらい伝えたかったな。
「違うよ、俺と西条さんはただの友達。」
「そっか、私先走ったかー。」
コーヒーを飲み、俺達は駅まで一緒に行ってそこで別れた。
ほんとは同じ路線だったが、俺はあえて遠回りをする。
俺はその夜、二人に連絡をした。
まずは蒼空に。
蒼空には好きな人には振られたと伝えた。
優しい言葉で励ましてくれるから涙が出た。
次に北条に。
「なるほどね。
でも、ほんとにいいの?まだダメだと決まったわけじゃ。」
「いや、まぁ確かにそうなんだが。
その言葉を口にしたときの紺野さんの表情を見たら何となく、な。」
「そっか。
とりあえず、お疲れ。明日は蒼空も誘ってぱーっとカラオケでも行きましょう。」
「おお、ありがと。」
次の日、何とか学校に向かう俺は空を見上げながら歩いていた。
ふぅ、空が青いな。
「おい、君。」
「は、はい!」
俺は迫力のある声に呼び止められる。
ここは、校門か。もう着いてたのか。
俺を呼び止めたのは、この学校の生徒会副会長「上野先輩」だ。
「ネクタイが曲がっているぞ、それに髪の寝癖も。
なにより挨拶をされたらちゃんと返しなさい。」
「す、すみません。」
俺は1度上野先輩には会っているのだが、この様子ではどうやら覚えていないらしい。
「彼女がいるのだろう。
そんなことでは愛想を尽かされてしまうのではないか?」
「彼女?そんなファンタジーなもの居ませんけど。」
それを聞いた先輩は鳩が豆鉄砲を食らった顔をした。
なぜ、先輩は俺に彼女がいると?まぁいいか。とりあえず目立つ前にここを立ち去るとするか。
「それじゃあ上野先輩、俺はこれで。」
「なんだ、彼女いないんだ。」
彼女は彼を見送ってから、そう呟いた。
次回、二人目の負けヒロイン登場。




