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第21話 告白

ブックマークと評価、よろしくお願いします。

今日、私は三上君に告白する。

そう、心に決めた。場所はあそこにしよう。私にとっては、彼と沢山の作戦を考えた思い出の場所。



朝、登校するとクラスに行くまでの廊下で上野先輩とすれ違った。

「おはよう。」


「おはようございます。」


私たちはただ、挨拶だけ交わした。

それ以外はいらない。私たちは恋という名の戦場で戦う敵同士。

先輩に恩はあっても情けはかけられない。



登校すると、彼は眠そうに目をこすりながら自分の席に座っている。

私達が戦う原因なのに、呑気なものだと思う。でも、見ているだけでドキドキしてしまうから恋は怖い。


「おはよう、三上君。」


私は精一杯の笑顔を作り、彼に話しかける。

昔から笑顔は得意で、これだけは自信がある。まぁ彼の前だと、泣き顔や不満顔を見せてしまうことも多いけど。

彼は少し目尻を下げ、私に向き合って優しく話す。

「おはよう、紺野さん。」


「今日さ、放課後用事ある?」


「特にないよ。何か用事?」


「うん、大切な用事。」


きっとこの雰囲気だけでも伝わる人には伝わってしまうと思う。私が何をするのか。

でも、彼は自分のことに関しては鈍いから。


「はは、俺でなんとかなる用事なら良いんだけど。

 なんだったら蒼空とか北条も呼ぼうか?」


うん、友達を呼ぼうとしている。

「ううん、三上君と私だけがいい。」


私はハッキリとそう彼に伝える。


「了解!準備を整えて待っているであります!」


「ふふ、なにそれ軍隊?」


私は思わず笑ってしまった。


「うん、よかった。」


「へ?」


彼は満足げな顔で頷く。


「紺野さんにはそういう笑顔が似合うよ。

 何というか、思いっきり笑うみたいな。」


彼は気づいていたんだ。私が作り笑いしていることに。

全く、鈍いのか鋭いのか。やっぱり、好きだな。


「じゃ、放課後あの教室で待ってるから。」


「はーい。」


彼の呑気な返事を聞き、私は自分の席に行く。

座って教科書を鞄から取り出そうとすると、滑って床に落としてしまった。

手が震えていた。私は心を落ち着かせ、床の教科書を取り、授業の準備を始めた。






授業と帰りのホームルームが終わり、私は自分の教室を出る。

そして、決戦の場へ向かう。


その教室を開け、中を見渡す。

そこには私と三上君の思い出が詰まっている。

一杯迷惑をかけたけど、彼はまだ私を好きでいてくれているだろうか。




15分ほど待っても彼はやってこない。

何かあったのだろうか。私は様子を見に教室を出ようと思ったがその時、扉が開かれる。

三上君が来た。何やら、少し様子がおかしい。

目が泳いでいて、足取りもおぼつかない。


「遅かったね。何かあった?」


「何もないよ、ちょっと蒼空と話込んじゃってさ。遅れてごめんね。」


「ううん、大丈夫。」


私を息を整えて、大事な話を、したい。

のに、言葉が続かない。やばい、心臓が。宮澤君の時は振られるって何となく分かってたからか、ここまで緊張はしなかった。

何か、言わないと。


「来てくれてありがとう。」


「う、うん。」


「その、急にこんなこと言われて迷惑かもしれないんだけど。」


「・・・」


彼は黙って私の目を見て言葉を待ってくれている。

さすがに彼も気づいたようだった。

私は彼の顔が見れなくなり、床を見てしまう。

「実はね、私。

 三上君のことが好きなの。」


一呼吸おいて、続ける。


「だから、私と、、、。」


あれ?三上君がいない?

私の視界には彼がいなかった。

逃げられたと一瞬考えたが、床を見ると彼が倒れていたのだ。

私は慌てて駆け寄る。

すると息はしているし、心臓の音も聞こえる。脈も正常だ。


「とりあえず保健室に。」


私は彼を揺すって起こそうとした。


「三上君、起きて。」


すると、その口から衝撃の一言が。


「まさか、一日で2人に告白されるなんて。」


え?

まさか。。。












朝、彼女の顔を見て察した。

そうか、紺野さんは今日三上に告白するつもりなのか。

後追いでは不利になるだろうな、よし。


私は先手必勝で彼女より先に告白しよう。

しかし、タイミングはいつにしよう。普通に誘おうと思っても彼女に気づかれてしまうだろう。

いや、恐らく唯一気づかれないタイミングがある。それは、告白する直前だ。

きっと彼女はどこかに三上を連れ出して事を起こすつもり。そして、事を起こす前に心の準備をしたいはず。私だってそうだ。なら、先にその場所に行って三上を待つつもりだろう。



正直、告白するのは怖い。でも、彼がもしまだ彼女を好きなら私が取れる対抗策は一つだけ。

彼女より先に告白すること、それしかない。



放課後、私は彼の教室を訪れる。

「大事な用事があるんだが、一緒に来てくれないか。」


「すみません、先輩。

 実は紺野さんに呼ばれていてその後でもいいですか?」


やはり、今日するつもりだったか。


「心配ない、すぐ終わるから。」


「そうですか、じゃあ行きます。

 蒼空、もし紺野さんが教室に来たら上野先輩に呼ばれたと伝えてくれ。」


「うん、分かった。」


三上は宮澤君にそう伝え、私と教室を出る。

私はお昼の内に、生徒会室の鍵を借りておいた。そして、胡桃の協力により現生徒会メンバーを学校外に誘導することにも成功。準備は整った。


生徒会室に着き、私たちは中へと入る。

彼は脳天気に生徒会室を見渡してるようだ。

「実は、君に伝えたいことがあるんだ。」


私の真面目な雰囲気を感じ取ったのか彼はまっすぐ私の目を見て向き直る。

「その、えっと、、、。」


まずい、言葉が出てこない。

あれだけ何を言うか事前に考えていたのに。

選挙の時はここまで緊張しなかった。これが好きな人に気持ちを伝えるということか。


深呼吸をして、言葉を続ける。


「好きだ、三上。

 私と付き合って欲しい。」


彼は目を丸くし、身動きすら取らない。

まるで時間が止まったかのようだった。15秒ほど経ってようやく。


「えっと、ありがとうございます。」


「うん。」


これは、ダメなパターンだろうか。


「その、先輩のことは尊敬していて。

 でも、恋人としてどうかとはまだ考えたことがなく。

 なので、少し考える時間を頂いてもよろしいでしょうか。」


彼は途切れ途切れではあったが、彼自身の気持ちを伝えてくれた。



「うん。

 待ってる。」



彼は気まずそうな顔で、言葉を続ける。

「すみません、その紺野さんに呼ばれていて。

 えっと、その後で良ければ話の続きを。」



「いや、いい。

 後はじっくり考えて答えを出してくれ。」


「は、はい。」



彼は1度頭を下げてから、生徒会室を出ていく。


扉が閉まると同時に私はストンと床に座り込んでしまった。

「はは、腰が抜けるなんて本当にあるんだな。」


私はその初めての感覚に思わず笑ってしまった。

後は、祈るだけか。彼が私を選んでくれることを。



次回、優悟の心中やいかに。

完結まで、残り2話。

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