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第19話 少女たちの修羅場

ブックマークと評価、よろしくお願いします。

朝、目が覚める。

階段を降り、洗面台へ顔を洗いに行く。

鏡を見ると、俺のいつもの顔だ。少し髪が跳ねている部分を直す。

うん、そこそこの顔だ。イケメンとは言えないまでも、不細工とは言えない。俺はそんな感じの評価を自分にしている。蒼空のようにイケメンだったらと何度か思ったことはあるが、16年も自分の顔を見ていると愛着も多少は湧くもんだ。


俺は朝飯を食べ、学校へ行く準備をする。

母さんから雨が降るからと折りたたみ傘を持たされる。


いつも通りの通学路を歩き、学校に向かう。

教室に着くと、紺野さんの姿を見つける。一昨日トイレから戻った時にはすでに紺野さんの姿はなく、用事で先に帰ったと東条さんが言っていた。昨日付き合ってもらったお礼でも言っとくか。俺は彼女の元へ行き、声をかけた。


「おはよう。」


「お、おはよう。」


ん?様子がおかしい。目も全く合わないし、声に元気がない。


「昨日はありがとう。」


「え?ああ、うん。」


あれ?空気が重い。

最近は紺野さんと話す時、彼女は自分に笑顔を向けてくれることが多かったので違和感がある。

まぁたまたま今日だけ、ということも考えられるか。


「今日は数学の小テストあるよな。

 紺野さんは勉強した?」


「・・・」


返事がない。

完全に上の空で、あらぬ方向を見ている。


「美波さん。」


試しに名前で呼んでみる。もしかすると自分の名字を忘れてしまったのかもしれない。

そんな訳ないか。


今回はすぐに反応があり、紺野さんは目を丸くして俺の方を見る。


「ごめん。」


そう言い残し、彼女はその場を走って去って行く。


急に謝られても困るのだが。

何かされたっけ。一昨日途中で帰ったことだろうか。

別に一人になったわけではないし、謝る必要はないと思う。後で西条さんにでも聞いてみるか。



その日の放課後、クラスに西条さんがいないか探す。

クラスにはいないな。もう帰ってしまったのだろうか。

俺は蒼空に西条さんの行方を聞く。

「さっき、東条さんと出ていったよ。」


あの二人が仲良く下校?あまり想像できないが。

ひとまず校内を少し探してみるか。俺は校内で人通りが少ない場所を中心に探すことにした。

しかし、我ながら紺野さんのこととなると、どうも放っておけなくなるな。やはり、好きだったという気持ちを消すことはできないのか。などとポエムっぽいことを考えていると、誰かが言い争っている声が聞こえた。

どうやら、あの空き教室からの声みたいだ。あそこは北条や紺野さんと作戦会議をした場所。

北条と話をするために見つけたとっておきの場所だったのだが、他にも利用者がいたとは。


俺は悪いとは思いながらも、一様教室の様子を覗いてみる。

すると、そこには東条さんと西条さんの姿が。おいおい、やっぱり仲良くできてないじゃん。


俺は扉越しに声を聞けないか、聞き耳を立てる。

「どうして、美波に・・・・を言ったの?」


「私は彼の味方だからです。このままでは彼が・・・・です。」


くそ、二人とも重要そうな部分はトーンを落として話しているせいで全然聞こえない。

というか、俺が聞いてもいい内容なのだろうか。でも、紺野さんの名前が出てるしな。


トントン。

俺は突如肩を叩かれる。

ゆっくり振り向くと、そこには上野先輩の姿が。

「何をしているんだ?」


小声でそう問われる。少し顔をしかめているあたり、やはり変なことをしていると思われたか。

いや、盗聴はよくないことだからその通りなのだが。

俺は即座に紙とシャーペンを取り出し、紺野さんの様子がおかしくてその事情を知っていそうな二人の話を聞いていると書いて、先輩に見せる。


それを見て、上野先輩はため息をつき、頷く。

「君の教室で待っているから、終わったら事情を聞かせてほしい。」


俺は首を縦に振る。

上野先輩はその場を去って行った。


俺は今一度、左右を確認。

また、誰かに見られるわけにはいかないからな。ここは人があまり来ないから大丈夫だとは思うが。すると、今度は北条の姿が見える。何やら俯きながらこちらに歩いてきているようでまだ俺の存在には気づいていない。


俺は即座に隣の教室に駆け込む。

北条も二人に呼ばれた口か。まさか、南条先輩まで来るんじゃないだろうな。

「いやー面白いことになってるみたいだね。」


「これを面白いと思えるのは、南条先輩くらいですよ。」


ん?ええーーーー。

隣を見ると、そこには南条先輩の姿が。

俺は大声を出しそうになったが、咄嗟に自分の口を押さえて、最悪の事態を避ける。

「なんで、南条先輩がここに?」


「君が来る前に二人が重苦しい空気を放って教室へ入ってくのが見えてね。

 これでも元生徒会長だから、何かあったら危ないと思い、様子を見ていた。」


この人、面白半分で見てただけじゃなかろうか。

「で、君が来るのが見えて咄嗟にこの教室に隠れた、というわけさ。」


「なるほど。それならさっきあなたが大好きな上野先輩が居ましたよ。

 今は俺の教室にいるはずです。ここは俺に任せて二人でイチャイチャしててください。」


「何か私の扱い雑すぎない?

 まぁそうしたい所だけど、多分里香にも関係あることな気がするのよね。」


上野先輩にも関係あること?

そうなるとあの悪魔系美少女が首を突っ込んでくるかもしれない。

ここに奴を投入すれば、もはや目も当てられない大惨事。どうにかそれは避けよう。


北条が中に入ったことを確認し、俺と南条先輩は再び廊下に出て、扉ごしに聞き耳を立てる。


「ごめんなさい、私実は・・・」


北条が何かを謝っているようだが、謝罪内容は聞こえない。

南条先輩も顔を横に振る。これでは、作戦が失敗に終わる。一か八か扉を少し開けてみるか。

だめだ、さすがに気づかれる。


「そう、そのことは今は良いわ。

 今のあの子は・・・・・」


どうやら、西条さんは謝罪を受け入れたようだ。あの子とは紺野さんのことだろうか。


「ええ、随分と節操のない方ですね。」


「あんた、さっきから何?

 あの子が悪いとでも言いたいわけ?」


「悪い、わけではありませんが彼のことを考えると、良いことではないでしょう。」


「それは、そうだけど。」


話が全く見えない。

俺にできることがあるならしてやりたいが、話を聞く限り俺のできることはなさそうだ。

ここは南条先輩に任せよう。そう思ったが、次の瞬間。


「私は三上には傷ついてほしくない。」


北条が俺の名前を出した。俺にも関係ある話なのか。

しかし、あいつは何だかんだ優しいやつじゃのう。後でアイスでも奢ってやるか。


「優悟君は優しいですからね。

 心を痛める必要が無い場面でも心を痛めてしまうかもしれません。」


東条さんの声だ。俺が傷つくのは確定らしい。

心の準備をしておいた方がいいな。


「ひとまず、お互い頭を冷やして後日また場を設けましょう。」


まずい、話が終わった。

俺と南条先輩は音を立てないように細心の注意を払い、その場を後にした。





南条先輩は用事があるらしく、途中で別れた。

ひとまず、俺は教室へと戻る。

すると、クラスがなにやらざわざわしていた。すでに放課後なのにクラスのほとんどのやつが残っている。

教室へ入ると、クラス中の視線が集まる。

「お、戻ってきたか。」


その声は俺の席に座る上野先輩からのものだった。

なるほど、有名人が俺を訪ねに来たとなればこうなるか。

上野先輩はクラスの女子に囲まれている。

先輩は俺の方を指さし、周りの女子に何か言っている。するとクラス中にきゃーという悲鳴が巻き起こる。歓喜と悲劇の悲鳴が半々といったところか。


先輩は俺の方へ来ると、急に右手を差し出す。

「今週の土曜日、私と映画を見に行かないか?」


意図はさっぱりだが、先輩の申し出を断るなんて末代までの恥だ。

俺は上野先輩の手を右手で掴み、答える。


「分かりました、予定をこじ開けておきます。」


「いや、無理にとは言わないけど。」


そう言いながら、先輩は頬を赤らめておりとても嬉しそうだ。

うん、先輩が嬉しそうだと俺も嬉しいな。

その瞬間、またしてもクラス中からきゃーという悲鳴が上がる。

悲鳴は主に女子で、なぜか蒼空を除くクラスの男どもには鋭い目つきで睨まれていた。


次回、優悟は上野先輩と映画を見に行きます。

完結まで、残り4話。

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