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第18話 あの時の気持ち

ブックマークと評価、よろしくお願いします。

私は自分のことがよく分からない。

宮澤君が好きだったはずなのに、今では三上君を好きになってしまっている。

彼に振られてしまった時はもう恋なんてしないと思うほど、辛かった。

なのに今は、暇な時はつい三上君のことを考えてしまっている。


彼はどんな子が好きなのだろう。

やっぱり上野先輩みたいな余裕のある綺麗な人が好きなのかな。


そんな事を考えていた時、私は三上君と志藤君が話しているのを聞いた。

どうやら三上君と東条さんは週末買い物に行くらしい。




私は東条さんにその真意を聞いた。

「私、駆け引きとかできないから直球でいくね。

 三上君と買い物に行くって聞いたんだけど、東条さんは三上君をどう思ってるの?」


彼女は目を丸くし、少し驚いた様子を見せる。

しかしすぐに、私の目をまっすぐ見て。

「恩人であり、友人になりたいと思っています。

 彼のことは信頼しています。」


「そう、、、。

 ごめんね変なこと聞いて。」


「いえ、私からも一つ聞いていいですか?」


聞かれることは何となく分かっていた。

私は少し心の準備をしてから、頷く。


「好き、なんですか?」


何を、と聞くのはずるいよね。

彼のことに決まっている。彼女の顔は無表情でその質問にどんな意図が隠れているかは分からない、でも私はその質問に自分でも驚くくらい即答した。

「好き。」


「なるほど、それがあなたということですね。」


ん?どういう意味だろう。


「買い物、紺野さんも一緒に行きませんか?」


私は即座に頷いた。








東条さんが言うには、たまたま紺野さんも話を聞いていて、せっかくなら一緒に行こうという話になったらしい。俺に伝えていないのは、サプライズにしたかったからなのだとか。

東条さんもサプライズとかやったりするのか。東条さんが転校してきてまだ数週間しか経っていないが、やはり彼女はお嬢様というより、少し上品なただの女子高生といったところなのだろう。まぁ俺が彼女の何を知ってるんだという話だが。


しかし、俺は彼女の認識をすぐに改めることになる。


ショッピングモールに着くと、そこには人が全くいなかった。

正確に言うと、従業員はいたのだがお客さんらしい影が一つも無い。


「せっかくなので貸し切りにしました。」


笑顔でそう言う彼女に、俺と紺野さんは言葉を失った。



俺達はまず、服を見ようということで高級ブランドのお店を訪れていた。

怖すぎて値札が見られない。


紺野さんと東条さんが楽しそうに服を見てはしゃいでいる。俺と志藤君はそれを何となく見ているという構図だ。せっかくだし、志藤君に色々聞いてみるか。

「志藤君は、いつも東条さんと一緒にいるの?」


「はい、お嬢様の側にいます。週に1度お休みはいただきますが。」


「週6勤務か、それは大変だな。

 学生のうちから働いているなんて尊敬しかないよ。」


「私は三上様に尊敬していただくような者ではありませんよ。」


謙遜がすぎるわ。

と思ったが、その真剣な表情を見るに本気で言っているようだ。

自分に厳しいタイプか、だからこそ東条家の執事が務まるのだろう。


ふと彼女たちの方を見ると、2人は紙袋を一つずつ手に抱えていた。

紺野さんが深々と頭を下げていることから、東条さんにプレゼントしてもらったのだろう。



「次は三上君の行きたい場所に行きましょう。」


「え?俺の行きたい場所?」


「はい!」


東条さんの期待に満ちたまなざしがきつい。

俺の行きたい場所、このショッピングモールだとあそこか。

でも、東条さんが興味あるとは思えないし。

まぁ言うだけ言うか。


「ゲームセンターとかかな。」


「行きましょう!」


え?いいの?

嬉しそうだし、いいか。






「クレーンゲームって意外に難しいのですね。」


東条さんは現在クレーンゲームに苦戦している。

すでに2000円以上使っているが取れる気配はない。狙うは大きなウサギのぬいぐるみ。


「ごめん、私も無理そう。」


紺野さんも何回か挑戦したが、取れそうにない。

紺野さんがこちらに懇願するような瞳で。

「三上君やってみてくれる?」


「いや、俺もそこまで得意では。」


東条さんも続いて。

「優悟君ならきっとできます。凄いできそうな雰囲気ありますし。」


「どういう根拠?

 やってはみるけど。」


俺はお金を入れてゲームをスタートさせる。

クレーンをゆっくりと右に動かす。狙うはぬいぐるみの紐だ。

ちょっとだけ、少し奥に移動。クレーンが降りる。そのままぬいぐるみの紐を掴むと思ったが残念ながら、それは外れる。しかし、隣の犬のぬいぐるみの足を掴む。そのまま出口へ。


「取れた。」


「すごーーーーい、やるじゃん三上!」


「さすが優悟君!

 かっこいいです!」


「おお、ありがと。」


女の子二人から褒められて悪い気はしない。

いや、すごい気分がいい。まぁたまたまな結果だが。狙ってたのはウサギだし。


俺はそのぬいぐるみを東条さんに渡す。

「はい、これ。

 狙ってたやつとは違うけど。」


東条さんは大事そうにそれを抱えて、満面の笑みになる。

「ありがとう!一生大切にするね。」


「敬語、いいの?」


「あ、ごめんなさい。」


「いや、いいよ。むしろそのままで。

 無理して敬語やめてとは言わないけど、友達だし、まぁ任せるけど。」


しどろもどろすぎるな。自分でも何が言いたいか分からん。


「分かった。これからは遠慮しないね!」


「その言い方だと怖いな。」




お昼の時間になっていたので、俺達はフードコートに行くことにした。

空いている席を探す、いや空いている席しかないな。

4人席に座り、俺は席を立つ。

「俺は先トイレ行ってくる。」


二人は大袈裟に手を振って送り出してくれたので、少し恥ずかしかった。


しかし、近くのトイレは清掃中だった。あら?

まぁこういうこともあるか。別のトイレを探そう。







「さて、そろそろ本題に入りましょう。」


「え?」


東条さんは正面から私に向き合う。いつの間にか志藤君の姿も見えなくなっている。


「今回、あなたを呼んだ本当の理由です。」


「本当の、理由。」



それから数十秒沈黙の時間が続いた。そこまで言いにくいことなのだろうか。

私はこころの準備をする。しかし、その準備は無駄に終わる。悪い意味で彼女は私の想像の上を行く話をした、いや、それが私にとっていい話なのか悪い話なのかもよく分からない。

ただ、私はこれまでの自分の行いを恥じることになる。



「優悟君は、あなたが好きだったんです。」


「・・・」


何も答えられない。

彼女はもう一度力強い声で正確な表現をした。


「優悟君はあなたが宮澤君を好きな時から、、、。

 あなたのことが好きだった。」






その頃、優悟は未だにトイレを探していた。

「どうなってんだ、この階のトイレ全部清掃中なんだけど。」

次回、上野先輩が優悟をデートに誘います。

完結まで、残り5話。変わったらごめんなさい!

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