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第16話 少女たちの気持ち

ブックマークと評価、よろしくお願いします。

あり得ないほど長い時間が過ぎた気がした。

これほど気まずい沈黙は生まれて初めてだと思えるほどの瞬間、実際は30秒にも満たなかったと思う。でもあまりにもそれを私は長く感じた。

答えは出ているはずだった。

私が彼、三上君をどう思っているのか。

もちろん友達であり、恩人でもある。今まで色々助けてもらったり、一緒に動物園に行ったり、ゲームを買いに行ったりした。


だから、この問いに即答できないのはおかしい。『友達』と答えればそれで済む。

もしかしたら上野先輩は友達では言い表せない感情を彼に持っているのかもしれない。

あの日、彼女の気持ちを聞いて、その相手はきっと彼なのだとそう思った。

だから、彼女が答えられないのは当然だ。



彼は私が好きだった人の友達。

彼は私の恋に協力してくれた男の子。

彼は私と遊んでくれた友達。

彼は私が今知りたいと思っている男の子。

彼は私が一緒にいて楽しいと思える人。





そうか、私は彼が、、、。




好き、なんだ。





「すみません、このような聞き方をしては困ってしまいますよね。

 忘れて下さい。私はただあなたたちと話して見たい、そう思っただけです。」



それを聞いて上野先輩が恐る恐る口を開く。

「あの、東条さんは三上君とはどういう関係なのですか?」


それは私も聞きたかった。


「彼のお母様は私が小さいころに使用人として東条家の屋敷で働いてもらっていました。

 その時、私は彼に出会いました。

 その時の彼はおかしな事に全力な少年で、正直少しバカにしていました。」


あれ?意外と辛辣。

二人は昔出会っていた。それは、少し羨ましい。


「でも、そのおかげで私は今もこうして幸せでいられます。」


彼女はそれから淡々と自分の過去を話し始めた。


「小学校2年生のころ、私は誘拐されたことがあります。

 東条家の跡取りの1人を誘拐して、身代金を得ようとしていたみたいです。

 当時、東条家のセキュリティは万全でした。だから、私が誘拐されたとは誰も思わなかった。

 唯一、気づいてくれたのが優悟君だった。

 彼は無謀にも私を誘拐した犯人の後を付け、私を助ける隙を伺った。

 犯人が身代金の話を持ちかけようと東条家に連絡を取ろうとする隙に私は彼に助けられた。

 それが、私が彼を誰よりも信用する理由です。

 根拠と呼べるかも怪しいですが、私にとってあの出来事はそれだけ辛く、でも希望を持てる出

 来事だったのです。」



とても辛い過去だろうに、彼女はただの世間話のようにすらすらと話し終えた。

失礼かと思ったけど、私は気になって聞いてしまった。


「あの、犯人は捕まったんですか?」


「ええ。

 身代金を受け取りに来た際に隠れて待っていた警察に。

 犯人はその瞬間、私が誘拐された場所に仕掛けられた爆弾のスイッチを押しました。

 そして私は木っ端みじんというのが本来の筋書きでした。

 しかもその犯人が東条家の執事だったのです。やはり名家は恨まれる運命なのですね。」


「え、えっと。」


私が何を言えば良いか分からないでいると、上野先輩が。


「話してくれてありがとうございます。

 三上君は昔からそんな感じだったんですね。」


「ということは今もそんな感じなのですか?」


それから私達は三上君の話を始めた。

人の捜し物のために、人の恋のために全力で頑張ったり。

人を助けるために危険な場所にも平気で飛び込んだり。

かと思ったら、ゲームのために朝から電気屋さんに並んだり。


そう、彼の話題は尽きることがなかった。



そうして上野先輩の家に着いた。

「ではこれで、外で怖い顔でこちらを心配なさっている妹様もいるようですし。

 話はまた今度。」


チラっと車の外を見ると、ニコニコしながらこちらを見ている有紗ちゃんがいた。

怖い顔?はしてないと思うけど。


「今日はありがとうございました。

 またお話しできる機会を楽しみにしています。」


「はい、またお話ししましょう。」


そして、私達は上野先輩と別れた。


それから少しして、私の家に着いた。

私は彼女の目を見て言う。

「今日はありがとうございました。」


「いえ、こちらこそ貴重なお話を聞けて嬉しかったです。」


彼女は何かまだ言いたげな目で私を見る。


「何か?」


「いえ、何でもありません。」



こうして私は自分の家へと帰った。

今日は私の気持ちに気づいた日。きっと私は今日のことを一生忘れないと思う。






「さて、どうでしたか?

 彼の話は。」


「はい、さすがでした。」


「ふふ、あなたが笑顔になるところなんて久しぶりに見ました。

 志藤、どう見ますか?」


「上野さんはやはり、三上様を好きでおいででしょう。

 紺野さんは分かりませんでした。」


「ほう、あなたにはそう見えましたか。」


「見立てを間違えてしまいましたか?」


「上野先輩の方は正しいでしょう。

 しかし、紺野さんの方はとても分かりやすかったので、不合格です。」


「申し訳ございません、精進いたします。」


「さて、ではどうやって彼を私の執事にするか考えましょうか。」


「やはり、諦めていなかったのですね。」


「当然です。」


彼女は、すでに勝ちを確信したような笑みで決意を新たにする。



次回、優悟対志藤。

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