第14話 お疲れ様会
ブックマークと評価、よろしくお願いします。
今日は、ついにお疲れ様会だ。
上野先輩も無事に誘うことができた。
放課後、先輩の教室に行き、彼女を呼び出して貰う。
上級生の教室って何であんなに緊張するんだろうな。
先輩は椅子から転げ落ち、俺の方に目を向ける。
慌てて立ち上がり、スカートの裾や髪を直す。
そして小走りでこちらに駆け寄る。
「ど、どうしたの?」
「えっと、場所を変えてもいいですか?」
先輩たちが沢山居る場所だと何か話しづらいし、ちゃんと説明したほうがいいだろう。
しかし、俺はこの発言で墓穴を掘ってしまった。
みるみるうちに先輩の顔が赤くなり、急にあわあわしてしまっている。
おかしい、先輩はいつも冷静沈着。普段からは考えられない状況だ。
ん?俺今の発言だとまるで。
告白、するみたいじゃないか。いや、うん。確実にそう思われてるな。
まぁ俺が告白したところで玉砕確実だが。ここは否定しておかねば。
「実は、生徒会関連でお話したいことが。」
嘘は言ってない。
俺のその発言を聞くと、先輩は後ろを向いてしまった。
先輩は頬を叩き、すぐに振り返る。そこには凜々しい顔をしたいつもの先輩の姿があった。
「行こうか。」
場所を生徒会室に移した。
実は生徒会の鍵を生徒会長から預かっており、ここで話して良いという許可を貰っている。
部外者の俺に渡して良いのか聞いたが、「まぁ君は関係者みたいなもんだし。」と言われてしまった。
さしずめ先輩の協力者といったところか。無駄にかっこいいな、その響き。
俺が長机の一席に座ると、先輩はどこに座るか一瞬悩み俺の向かいの席についた。
そして俺は今回のお疲れ様会の件を話した。
「ありがとう、まさか三上君に労って貰えるとは。
予算とか大丈夫か?もちろん、私もできるだけだすつもりだが。」
「大丈夫です、生徒会のお疲れ様会用の経費を分けて貰ってますし。
強力なスポンサーが付いてますので。」
俺は経費じゃ足りない部分を払うつもりだったが、有紗ちゃんに止められた。
姉のために金を使うのが楽しいらしい。
重度のシスコンだな。まぁ俺も上野先輩が姉だったら、シスコンになっていたかもしれない。
うん、めっちゃ悩みとか聞いてくれそう。
俺がそんな妄想を始めようとしていると、先輩が心配そうな顔で俺の顔を覗く。
「もしかして体調悪い?」
「いえ、そんなことないです。
先輩は大船に乗ったつもりで居て下さい。
まぁ俺の舟は小舟程度かもしれませんけど。」
「ふっ。
そんなことない、心から信頼しているよ。」
「あ、ありがとうございます。」
かっこいいな、さすが先輩。
そんなことがあり、無事に本日開催される運びとなった。
呼んだメンバーは紺野さん、北条、蒼空、西条さん、南条先輩、有紗ちゃんの6人だ。
西条さんには私はあまり関わりなかったと断られてしまった。まぁ確かにな。
そういう意味だと、蒼空と北条もそこまで関係はない。
蒼空の場合は俺の顔を立ててくれて、北条はハンカチを探してもらったお礼といったところか。
店に全員が集まったところで、俺は席を立つ。
初めに俺が乾杯の挨拶をするのだ。
「では、これよりお疲れ様会を行います。
これは俺が個人的に上野先輩を労いたいと開催したもので、本日は集まっていただきありがと
うございます。
先輩には捜し物を手伝ってもらった縁で仲良くなりました。」
と、ここから先輩の素晴らしさを説いてもよかったが、有紗ちゃんに「その程度ですか?」と言われそうなのでやめておこう。
「その後も色々お世話になり、先輩には本当に感謝しています。
では、上野先輩と南条先輩。
生徒会お疲れ様でした!乾杯。」
「「「乾杯!」」」
会は意外に盛り上がった。
関係性が薄い人も多かったので不安しかなかったが、そこは生徒会長と副会長。
会話を上手くリードできており、何の問題もなかった。
いやー、先輩たちさすがっす。本来なら俺が盛り上げるべきだが、今回はこれでいいだろう。
そして食べ放題の時間が終わり、会がお開きになる。
だが、今回はこれでは終わらない。
皆とは解散し、俺と有紗ちゃんは次の計画へと移行する。
俺は先輩たちに最後にサプライズがあるとついてきてもらうことにした。
そこは温泉、所謂裸の付き合いというやつだ。
合ってる?合ってるよね?
不安はあったが、計画は実行だ。
有紗ちゃんはエステに行きたいということで、
それを待つ間に俺が温泉にでも入りませんかと提案した。
俺は入り口で二人と別れ、男湯の方に入る。
後は神に祈るのみ。
合ってる?合ってるよね?
まさか、胡桃と温泉に入ることになるとは。
私は服を脱ぎ、タオルを身体に巻く。
隣を見ると、胡桃が着替えるのに戸惑っている。
「どうした?
もしかして温泉苦手とか?」
「えっと、そうじゃなくて。
里香に裸を見られるのは恥ずかしいなーって。」
「ふっ。
胡桃もそういうの気にするのか。
意外だ。」
「気にするって。
里香は、、、特別だし。」
「そうか。
私は胡桃になら何を見られても恥ずかしくないけど。」
「え?」
彼女は驚いた顔でこちらを見る。
そんなに変なことを言っただろうか。
一瞬何か言いたげだったが、胡桃はすぐに服を脱ぎ、タオルを持って私の手を引く。
「ここ、露天風呂もあるらしいよ。
早く行こ!」
「ああ。」
そして私たちは湯に浸かっている間に他愛もない話をした。
最近ハマっている動画だとか、将来のことだとか。
彼女は1年ほど世界を見てくるらしい。大学はいいのかと聞くと。
「行きたくなったらいけばいいよ。」と言っていた。
彼女らしい。
「で、里香はどうするの?」
「私は大学には行くつもりだ。
その先はよく分からない。」
彼女はそれを聞き、急にニヤニヤしながら肩に手を置いた。
「三上君のお嫁さんとかは?
どうよ。」
「な?
それはまぁ考えたことはあるけど、心の準備が。
そもそも私だけの考えで決めるわけにはいかないし。」
慌てる私を見て満足したのか、彼女は手を下ろし、真面目な顔で正面を向く。
「親友のわたしとしては、彼になら里香を任せてもいいなって思えたよ。」
「そうか、親友のお墨付きなら心配はいらないな。」
そう、私達はこれからも相棒で、親友だ。
俺はドキドキしながら二人が出てくるのを待つ。
すると入り口から二人の美少女が出てきた。
仲よさそうに手を繋いでいる。どうやら上手くいったようだ。
こちらに気づくと、二人が手を振ってくれたので俺も振り返す。
ちょうど、有紗ちゃんも戻って来ていた。
「今日のところは大成功ですね。」
「ああ、お疲れ。」
俺は手を差し出し、握手を求めたが彼女は軽くそれを無視して上野先輩の元に駆け寄る。
やはり奴は俺にとって悪魔だ、こんちくしょう。
二人の姉妹が仲良さそうに話しているのをみていると、南条先輩に声をかけられた。
「今日はありがと。さすが三上君だ。」
「いえいえ、誤解も解けたようでよかったです。」
「そうだね、私達親友だった。」
「知ってます。」
俺がそういうと、彼女はとても嬉しそうに笑った。
可愛い、何だこの人。可愛くて生徒会長とか最強だろ。
「実は三上君には頼みたいことがあるんだ。」
「はい。俺にできることならやってみますけど。」
彼女は真面目な顔で俺を見る。
その顔はいつになく真剣だ。どんな無理難題を吹っかけられるのだろうか。
「里香を不幸にしないでほしい。
幸せにできなくてもいい、傷つけるなとは言わない。
ただ、彼女を不幸にしないで。」
何を言ってるのだろう。
俺が上野先輩を幸せに出来るとは思えないのでそこはいい。
俺は上野先輩を傷つけたくもないし、不幸にもしたくない。
むしろ彼女には笑っていてほしいのだが。
俺は南条先輩の目を見て、はっきり答える。
「俺は上野先輩には笑顔でいてほしい。
そのために俺が出来ることはするつもりです。」
「そっか。
それを聞けて安心したよ。
でも、まるで彼氏の台詞みたいだね。」
「はは、上野先輩と俺とじゃ釣り合わないでしょ。」
「そうかな?
私はお似合いだと思うけど。」
からかってるのかと思ったが、そんな雰囲気ではなかった。
そうか、先輩にはそう見えるのか。
俺達は駅で解散した。
俺は家へと戻ると、携帯に一件のメッセージが。
『今日はありがとうございました。
先輩のこと、少しだけ見直しました。』
有紗ちゃんからだった。
素直じゃないな、あの悪魔は。
東京都にはある名家の大きな屋敷がある。
そこに、一人の少女がいた。
「お嬢様、転入手続きが整いました。」
「そう。
ようやく会えるのね。」
「くれぐれも東条家のご令嬢だということを忘れずに。」
「分かっているわ。
私の目的はただ一つ、三上 優悟君。
彼だけ。」
次回、謎の女の子が優悟の元に。彼女の目的とは。




