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第12話 好きなものと好きだった人

遅くなりました。ブックマークと評価、よろしくお願いします。

高校2年生になった今、ゲームに夢中になるということはあまり無くなっていた。

もちろん、高校入学当初念願のゲームの続編が出た時は寝る間も惜しんでやるなど、少年の心をなくしたわけではない。


しかし、男にはやれなばならぬ時がある。

あの伝説のゲーム「ドラゴンファンタジー」の最新作。

基本的には王道のRPGもので、最後にドラゴンを倒すのがお約束。

このゲームの凄いところは途中で二人のヒロインから一人を選ぶルート分岐があるのだが、一通りだけハーレムルートが存在する。最後には二人と結婚し、3人で仲良く暮らすのだ。

だが、このルートに入るのが非常に難しく、ゲームの発売当初に攻略できる者はほとんどいない。

つまり、その攻略法を見つけるのがこのゲームの醍醐味の一つだ。そのため、いち早くこのゲームを手にいれようとする猛者たちが発売日当日に朝から並ぶという事態も起きる。

最近は発売日からダウンロードできるゲームも多いが、このゲームはパッケージ版の一週間後にダウンロード版が出る。


俺は今週の土曜日、このゲームを手に入れるためにハマダ電気へ向かうつもりだ。

しかし、ここで一つ問題がある。

このゲームは整理券を手に入れてからの抽選になる。団体で並ぶ場合は人数分整理券を手にいれることができる。つまり、ベストなのはゲームに興味はないが俺と一緒に朝から並んでくれる人物。ちなみに朝の6時から並ばないと整理券を手に入れることすら難しいらしい。


前作は朝から並んだものの、ゲームをに入れることはできなかった。

今回こそは手に入れたい。




すでに蒼空には声をかけてみたが、その日は用事があると断られてしまった。

予定をずらしてもいいと言ってくれたが、さすがに悪いので蒼空以外に頼むことにした。

しかし、残念なことに相手がいない。親にも頼んだが、二人とも午前中に用事があり断られてしまった。


まずい、非常にまずい。

後からどんな謝礼を要求されるか分からないが、北条に頼むか。


俺は北条に声をかけようとしたが、生憎今日は休むだ。

明日聞いてみるか。いや、今日電話するか。でも、体調不良だったら申し訳ないし。


そんなことを考えながら廊下を歩いていると、ある女の子と目があった。

「こ、こんにちは。」



「こんにちは。」


紺野さんはそう言い、すぐにその場を後にした。


紺野さんには頼めないよなぁ。

そう思った次の瞬間、俺は誰かに肩を叩かれた。

振り返ると、そこには何とか笑顔を作り、俺の目をまっすぐ見つめる紺野さんがいた。

別に無理して笑顔にならなくてもと思ったが、彼女には嫌な場面をこの前見られたばかりだし、仕方ないのかもしれない。でも、一体何の用だろう。急用ならさっき話しかけてきただろうし。


「あの、三上君。」


「うん。」


「この前ファミレスで一緒にいた子って三上君の彼女?」


「え?」


彼女?

俺にそんなものいたっけ?

あーーー。あれか、あの子か。上野先輩の妹の。

悪魔系美少女。とりあえず事実を伝えないとな。


「いや、実はあの子は上野先輩の妹で俺をからかいたくてあんなことを言ったんだ。

 だから、あの子は俺の今カノどころか元カノでもない。」


「そ、そうなんだ。

 そっかそっか。」


ん?先ほどよりは自然な笑顔だな。

とにかく誤解が解けたならよかった。


「それで、どうしたの?

 何か頼みごと?」


「へ?」


彼女はきょとんとした顔で俺を見る。

今のはただの会話の糸口でこれから本題だと思ったのだが。


「えーっと、その。」


そんなに話しにくいことなのだろうか。

一様心の準備をしておこう。紺野さんに彼氏ができたとか。

う、さすがにまだきついな。


「み、三上君は今週の土曜日何か予定ある?」


「土曜日?」


いきなりどうした?

と言いたくなりそうだったが、ぐっと我慢した。

よく分からないが正直に答えよう。


「実は欲しいゲームの発売日で朝からハマダ電気に並ぼうかと。」


「あ、朝から?

 そんなに人気のゲームなの?」


「そう、その人気の理由が」


まずい、女の子にハーレムルートの話しは。


「ドラゴンのイラストとストーリー性がね。

 人気の理由なんだ。」


「へぇー。」


「実は整理券を手に入れるために一緒に並んでくれる人を探してるんだけど見つからなくて。」


あ、これは言わなくてもよかったな。

それを言うと、紺野さんは何やら考えるように俯いた。

笑いでも堪えているのだろうか。まぁゲームに全力出しすぎだよな。


「私、一緒にいこうか?」


「え?

 いいの?やった!!」


ついに見つけた、よし。これなら確率は2倍だ。


俺達はその場で集合場所と集合時間を決めた。




帰宅後。

俺は興奮していたため、考えていなかったが、家に帰り冷静に考えるとなぜ紺野さんが付いてきてくれるのか検討がつかない。

まぁ、きっと暇だったんだろう。

俺はゲームに夢中で細かいことが気にならなくなっていた。





次の日、俺達は駅で朝5時に集合し、ハマダ電気に並ぶ。

隣であくびをする彼女に急に申し訳ない気持ちが出てくる。

「ごめんね、こんなことに付き合わせちゃって。」


「ううん、私が言い出したことだし。

 でも朝早いのにすでにこんなに並んでるなんて驚いたよ。」


「それはそうだよ。

 なんたって3年ぶりの最新作だからね。

 俺もこのゲームにはまったのは前前作からだけど、凄いんだよ。

 ストーリーは面白いし、敵の種類も多いし、育成もやりがいあるし。

 いやー、今からやるの楽しみだ。」


彼女はそれをポカンとした顔で見ている。

あ、まずい。つい語ってしまった。


「ごめん。」


「ごめんって何が?」


「いや、つい熱くなって長話を。」


首を振り、爽やかな笑顔で彼女は言う。

「三上君、あんまり自分のこと話してくれないから聞けて嬉しい。」


「え?そうだっけ?」


「そうだよ、今まで私の話を聞いてばっかりだったじゃん。」


「そっか。」


意識してなかったな。

でも、そうか。彼女には蒼空に関して相談されたのが最初だったから、自然とそうなっていたのかも。まぁ俺が自分の話をする相手は蒼空と北条しかいないのだが。



「だからさ、今日来れてよかったなって。

 ゲーム、絶対ゲットしようね。」


やばい、惚れそう。

いやもう手遅れか。

気持ちに整理をつけたはずだったが。難しいものだ、人の心は。



そして俺達はゲームの話をしながら順番を待った。



ついに、その時がきた。

俺は先ほど受け取った整理券を握りしめ、今か今かとその時を待つ。

メガホンを持った店員さんが店から出てくる。

「では、番号を読み上げます。

 3番の方、15番の方。」


整理券は全部で250枚。そのうちゲームが買えるのは50人。

確率は20%。俺の番号は199番。


「192番。」


来るとしたらそろそろか。


「200番。」


あー、惜しい。今回もだめか。誰だよ俺の後ろのやつ。

いや、ここは素直に祝福しよう。

ん?隣の紺野さんがまじまじと整理券を見ている。

そして俺の顔を見て、満面の笑顔に。

可愛い。

いや、まてよ。俺の後ろの人は紺野さんだ。

つまり、紺野さんが当たったということか。


「やったね!

 三上!」


紺野さんは右手を挙げて何かしたそうにしている。

ああ、あれか。

俺も右手を挙げ、俺達は気持ちの良いハイタッチをした。




帰りの電車。

いくらなんでも紺野さんが当てたものを遊ぶのは気が引けてきて、一旦貸してもらう形にしようとしたが、あっさり断られてしまった。

「ちょっとやりたい気もするけど、私は三上君に遊んで欲しいな。 

 だって好きな人がやるのが一番だし。」


そう言われ、俺は何も言えなくなってしまった。


電車の揺れが眠気を誘発する。

さすがに眠いな。

トン。

何かが肩に乗っかったな。

恐る恐る隣をみるとそこには紺野さんの頭が。

どうやら寝てしまったらしい。

凄いな、とんでもなく良い匂いがする。

集合した時から思っていたが、今日の紺野さんの服装はとても可愛いと思う。

緑色のワンピースに白いブラウス。

朝早かったのに、髪は寝癖一つ無い。俺には恐らくあった。


「三上君。」


俺の名前。寝言だろうか。


「私ね、ハーレムルートはよくないと思うなぁ。」


はい、本当にその通りです。

しかし、俺は自分で見つける快感を味わいたい。

俺は必ず、二人の嫁をゲットしてみせる。


何言ってんだ、俺。

次回、再び悪魔がやってくる。

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