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第11話 文化祭と二人の嘘

ブックマークと評価、よろしくお願いします。

俺は約束通り、グループワーク以降は北条さんと関わらないようにした。

いつも一人でいる彼女に思うところはあったが、俺にできることはなにもない。


「優悟、今日って小テストあったよね?」


「ああ」


「優悟ってバカだよね?」


「ああ」


「はぁ、今日の優悟変だよ。」


今まではそう思えていた。しかし、昨日。





2学期初日。

俺は憂鬱な気分になりながら教室に入る。

今日から学校か。夏休みというゴールデンタイムが終わった今、モチベーションが上がらないのは当然だ。


教室に入ると、何やら妙な空気が漂っている。

皆スマホを見ながらひそひそしている。なにかあったのだろうか。


有名人の不倫でもばれたのだろうか。


俺は席につくと、斜め前の席に座っている少女の肩が少し震えている気がした。

何かに感動しているわけではなさそうだ。まさか。



俺は先に来ていた蒼空に事情を尋ねた。

原因は彼女にまつわるある噂にあるらしい。


夏休み、彼女がある男と援交していた。

この手の噂は尾ひれがつくものだ。でも、彼女がクラスメイトと関わりを持っていないのも原因の一つだろう。


だが、俺にできることはない。する義理もない。

彼女が望んでいるわけでもない。



昨日はそう思えていた。




しかし、人間はそう簡単にはいかない。

昨日と今日は違う。


俺は彼女の席の前に立つ。

「さっき先生に職員室までくるようにって。」


「う、うん。ありがとう。」


そう言い、彼女は席を立つ。

前に話したような高圧的な態度とは違い、随分素直だな。



彼女は職員室に向かった。

俺はその少し後に教室を出て、職員室の近くで彼女を待つ。

すぐに彼女は不満そうな顔で職員室を出てきた。


「何であなたがここに。

 どういうこと、私呼ばれてなかったんだけど。」



「ああ、あれは嘘だ。」


「は?どうしてそんな嘘を。」


「北条さんを教室の外に出すため。」


「な、、、。

 頼んでないでしょ!

 あのことなら気にしてないし、ほっといてよ。」


確かに。俺は何もできない。

するべきじゃない。


「知るか、あんな泣きそうな顔しといて。

 助けて欲しかったら素直にそう言え。」


「泣きそう?この私が?」


そう言いながら、彼女の目からは涙がぽろぽろ落ちてくる。

俺は場所を変えた方が良いと判断し、空き教室へ入った。


「いいの?もうすぐ1限はじまるけど。」


「泣いてる奴放っておけるかよ。」


「泣いてないから!」


鼻声の奴に言われても説得力皆無だが。

まぁいいか。


「で、誤解を解く方法だが。

 正直、すぐには無理だと思う。」


「え?

 まぁそれはそうかも。」


「だから、勝負は文化祭だ。」


「文化祭?」


「俺に言い案がある。」



こうして、俺は文化祭でメイド喫茶をやることにした。

男子から反発意見はあまり出ないだろうから、問題は女子。

女子を説得するには。


「頼んだぞ、蒼空。」


「やってはみるけど、あんまり期待しないでね。」


蒼空の熱心な説得により、何とかメイド喫茶の案は通った。

よし、後は。


「北条、コレに着替えてくれ。」


「は、はぁ?

 コレに着替えろって、本当にこれで噂が何とかなるの?」


「ああ、多分。」



北条が着替えた姿に俺も思わず見とれてしまう。


「ちょっと何とか言ってよ。」


「わ、悪い。

 可愛いな、うん。」


「ありがと。」


「よし、じゃあこれを言ってくれ。」


俺は魔法の言葉が書かれた紙を見せる。


「え?マジ?」





そして、文化祭当日。

「お帰りなさい、ご主人様。」



「ではこちらに愛情を注ぎますね。

 おいしくなーれ、おいしくなーれ。」


そう言いながら、ハートマークをオムライスに書くメイドさん。


その立ち振る舞いからはもはや本場の人かと思えるほどの気品の高さを感じる。


「北条さんってすごい人だったんだね。」


「ええ、美人とはいえあそこまで完璧にメイドをこなすなんて。」


「よし、私達も頑張ろう。」



北条にメイド姿はあらゆる所で広まっていき、俺達のメイド喫茶は大繁盛した。






文化祭後、クラスの打ち上げに行こうとしている北条に俺は声をかけた。

「お疲れ、メイドさん。」


「三上、あんた一生許さないから。」


鬼の形相で俺を睨む北条。

まじ怖い。


「まぁまぁクラスの皆から感謝されてたみたいだし、結果オーライだ。」


「はぁ、そうね。

 一様お礼は言っとく。ありがと。」


「おう。

 あ、そうそう。仕事が忙しくてあんまり店回れなかったろ。」


俺は北条にドーナツを手渡す。


「これいくら?」


「いいってこれくらい。」


「そう?」


北条はドーナツを頬張り、幸せそうな顔をした。


どうやら、今後あんな辛そうな顔をすることはなさそうだな。


「この後の打ち上げ、あんたも行くの?」


「えっと、行きたいのはやまやま何だが。

 今回先生にメイド喫茶の案をごり押しした時に文化祭の見回りを手伝えって言われてて。」


「そ、そう。

 じゃあ待ってる。」


「え?

 打ち上げはいいのか?」


「顔は出すわよ、その後学校戻ってくる。」


「いやいいよ、悪いし。」


「あんたの意見は聞いてない。」


彼女はそう言い、教室を出て行った。

ま、あんな強気な態度を取れるならもう心配ないか。



見回りを終えると、本当に北条が校門の前で待っていた。

その後俺達は一緒に帰った。

その途中半ば強引に連絡先の交換をさせられたのだった。







文化祭が終わり1週間が経ったころ。

「ねぇ、宮澤君。

 ちょっといい。」


「うん。」


場所を教室から空き教室に移す。


「イケメンは女の子にモテて大変そうね。」


「それは、君もでしょ?」


「まぁ。

 文化祭きっかけに告白されることも多くなったわ。」


「うん、優悟から最近距離を感じるのは恐らくそのせいだし。

 正直どうにかしたい。」


「私も。

 三上とこのままただのクラスメイトのままは嫌。

 だから、取引しない?」


「取引?」


「私達で付き合うフリをする。」


「それは、まぁありだけど。」


宮澤君は私の顔をじっと見る。


「な、なに?」


「いや、何でもない。

 その取り引き、応じるよ。」


「よかった。これからよろしく。」



こうして自然な形で付き合ったことにするために、2人はクリスマスから交際する計画を立てた。




過去の話は今回で終わりです。次回、紺野さんがモヤモヤします。

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