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喋る女  作者: 青山えむ
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最終話 ケーキ屋

 じゃあ行きましょう。車で街中を少し走り、国道を目指します。しかしなんだか様子が変です、車がなかなか進みません。

 検問です。なにかあったのでしょうか。不安なまま私の番になりました。


「隣町で殺人事件が起こりました、車のなかを確認します」

 私の車のトランクを確認すると言い、警察官はトランクを開けます。

 異常なしと呟き、次は後ろの座席を確認すると言いました。後ろは毛布やゴミ箱が置いてあります。ちょっと、いやかなり散らかっています。恥ずかしいです。窓を開けてと言われて助手席側の窓を開けます。


「お一人ですね?」

 警察官は最後の確認をします。私は「はい」と答えます。怪しい点は見つからず、私はすぐに解放されました。それはそうです、私はなにもしていません。

 

 少ししたら電話が鳴りました。知らない番号からです。ハンズフリー機能で一応でてみると、例のストーカーからでした。まだそこに警察がたくさんいるという安心感からか、ストーカーの話を聞いてみました。


「雪子さん、僕は君の持ち物に盗聴器をつけていたんだ。それプラス君のアパートの見張りをしていたんだよ。君は隣に誰かがいるように話していたけれども、盗聴器には雪子さんの話し声しか入っていなかったしアパートに出入りするのも雪子さんだけだったね。つまり君はずっと独り言を喋っていたんだ。怖いね、病気じゃないの?

 この間デートに誘ったのは取り消すよ。君みたいな気味の悪い女はお断りだね。この番号も消してもらえるかな? 君みたいに思い込みの激しい女は怖いからね、はっきり言ったほうがいいと思って電話しただけだから。僕は君に一切好意を抱いていない。これっきり縁を切ることにしたよ。いいね? 僕は君とは関係のない人間だ、さようなら」


 一方的に喋って勝手に切るとは失礼な男です。しかも「君」なんてドラマの見すぎではないでしょうか。だいたいお前はストーカーなんだから、縁が切れて喜ばしいことこの上ないです。

 それよりも盗聴器だとか見張りだとか、それは犯罪ではないですか? ストーカー行為をしているお前が問題ではないのですか?

 私は誰にも迷惑をかけていません。許せないです。私の生活を脅かすなんて。口を封じてしまおうか。けれどもそれを実行してしまったらあの検問を恐れる生活になってしまいます。やっぱりそんなことはよくないです。

 そんな下らない奴のことを考えるよりも彼のことを考えよう。彼のことで頭をいっぱいにしましょう。ハッピーな感情で溢れさせて幸運を引き寄せよう、確かなにかの本に書いていました。


 まだ少し嫌悪感といら立ちが残っています、払拭(ふっしょく)したいです。

 彼に会いたいです。そうだ、私は今から彼の家に向かうのでした。いつも私のアパートに来ているからたまには彼の家に行くことになったのです。あれ、私のアパートに泊まるんだっけ?

 まあいいや、とりあえず二人でスイーツを食べましょう。たまにはコンビニスイーツもいいかもしれないですね。

 さっき彼はスタバでシフォンケーキを食べていました。おいしそうでしたね、私はシフォンケーキにしようかな。コンビニに売っているでしょうか。なかったらがっかりするかな。じゃあ最初からシフォンケーキが売ってあるケーキ屋に行ったほうがいいでしょうか。

 行き先をケーキ屋に変更します。確かあそこを左折するとケーキ屋に向かうはずです。ケーキ屋なんて滅多に行かないのであいまいな記憶で向かいます。


 テンテロンテンテテン……。スマホの着信音が鳴りました。今度は()()()、電話が鳴りました。

 知らない番号なのででなくてもいいでしょう。それよりも喉が渇きました。そうですね、ずっと喋り続けていますから。

 自動販売機で飲み物を買いましょう。機械の前だと遠慮なく独り言が言えますからね。

 おひとり様の愉しみを邪魔する権限なんて誰にもないのですが、一応、人目を気にしておかないと。世知辛(せちがら)い世の中ですね。


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