2話「西の森での戦闘②」
その場に待機するように、火炎竜巻は動かず俺の射線へと突っ込んでは勝手に燃えていくというコンベア作業のような形になっていた。
「この場にいるだけで流れるように消えていく様はなんていうか……」
呆れながらもその光景を見ていると、まだまだ西の帝国領からはルビーデーモンたちがやってくる。その光景にげんなりしてくるが俺があいつらの後ろ側へと位置取りをしながら対処していく。
とにかく、森を庇うためには枯れた西側へと近寄らなければ……。
俺の動きで何をしているのか分かったのだろう続々と増えてくるエルフ族の戦士たちも俺の後方に位置を取り、抜かれるルビーデーモンたちを優先して対処していった。
どんどん西側へと進むと、やがて広い枯れた森のあたりに出てきた。
そこで待ってたかのようにルビーデーモンたちに動きがあった。
「なんだ、あのでかい木は?」
「あれは結界樹。いわばこの森を守りし結界を施した樹木だったものです……」
俺の方に駆け寄ってきたミーティアさんが伝えてくれた。
なるほどな……とそんなことを思っている間に、その枯れ果てた結界樹とやらに集まる――いや、あれは吸収されていってるのか。
それは東側の……俺たちが倒したルビーデーモンの遺体すらも吸収していき、やがて巨大な樹木へと姿を変えた。そして――
「ミーティアさん、離れて」
俺はそう言いながらもミーティアさんから距離を取り、巨大化した樹木ルビーデーモン・ロードの攻撃を速度など半減化させながら避けていく。
狙ってくる攻撃を避けながら、攻撃をさせやすいように奴の後方に回っていく。
すると、背中からメジェネア、ラビィたちやエルフ族の戦士たちも攻撃がしやすいだろうと思っての行動である。
俺の狙いに気づいたメジェネアたちは、後方から巨大樹に攻撃を与えていった。
だが――
蔓を伸ばした巨大樹は後方にも攻撃をするようになっていた。
軒並み詠唱の必要なエルフ族は距離を取り、メジェネアも自身の包帯に炎を纏わせる剣でその蔓を対処していっていくことになり、それなりの規模である攻撃は封印されつつあった。
知能が高いな……。
それほどまでに俺を捕らえようとする蔓と、後方への蔓の操作具合が巧みだった。
もちろん半減の力を使っているのだが、それでもこのレベルなのが驚きだ。
しかしこればかりは後方からダメージを与えていってもらうしか今のところ対処方法はなかった。
せめて後方からさっきのメジェネアが使った大規模魔法が使える隙くらいが作れればと思っているのだが……。フィーナに突撃させるか?
と、フィーナは何やらこっちに急いで飛んできた。
どうした?と思う前に俺の体が、ものすごい勢いで巨大樹に吸い込まれていく。
そんな俺の体を掴むのが飛んできたフィーナだった。
「何ぼーっとしてるのよ! バカね!」
「た、たすかった!」
吸い込む力をも半減させているのに、全然その吸い込む威力は衰えない。
ってことは半減しなかったら……と考えると、フィーナが飛んできた意味は大いにあった。
こんなやつが俺の精霊の力を取り込んだら、どうなるか……。
考えるだけでも悍ましい。
というわけで、俺も魔力によって身体強化して全力で抗うことにした。
だが――
そんな俺に、思いもよらぬ不幸が訪れた。
フィーナが掴んでいた俺の"服"が破れたのだ。
その結果……。
「おいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーー!」
見事に巨大樹へ吸い込まれる結果となったのだった。
▽
フィーナの服破きによって、瞬介は巨大樹へと吸い込まれていってしまった。
「フィーナ様! なにをなさってますのー!?」
「婿殿ー!?」
「ガルァァァァア!!」
「あ……ふ、ふん! シュンスケの服がショボいのが悪いのよ!」
先ほどまで続いていた緊迫は成りを潜め、茶番のような時間が辺りを包んだ。
だが、瞬介を取り込まれた空気は一瞬にして自分たちの不利を、そしてリーダーを失ったことを意味していた。
「見てください……変化いたしますわ」
瞬介を吸収した巨大樹は、自ら進化しようと動き始めた。
今でも瞬介がいなくなったことで膨大な精霊力や魔力を周囲にまき散らしているのに、これで瞬介を取り込んだらどうなるのか……と思ったその時だった。
―ドーン!
突如として巨大樹の一部がはじけ飛んだ。
「え?」
そんな風に疑問に思う者たちを置いて、さらに至る所がはじけ始め……そして、
急速に巨大樹は枯れ果てていき、そして人1人分の木に囲まれた何かが残った。
「一体どういうことですの?」
「ふん、だからあのクソババアこなかったのね! ……にしても」
フィーナは、ラビィの言葉を無視して言い放つ。
彼女にとっては予想できたことである。
それは、精霊たちを統べる女王――精霊女王の力であった。
自分たちのさらに上位、もはや最上位とすら言える力の精霊力など取り込もうとすらするのは滑稽すぎるのだ。
「シュンスケの力……精霊女王が関連してるのよ! あとは言わなくても分かるわよね!」
その問いに、ラビィ、メジェネアはハっとした。
ハーフリンカーの力……それは精霊女王の力である。
「そういうことですのね。 ……ところでシュンスケ様は」
そう言って瞬介のほうへ向くと、そこではコーディが自分の牙や爪で必死に木を剥していた。それを手伝い、蔦などを全て払いのけると眠る瞬介がいた。
息を吐き、力を抜いたメンバーは瞬介の様子を見ている。
「……その精霊女王の話、我らも興味があるな」
そこへやってきたのは、先ほどまで一緒に戦っていたエルフの少年――戦士団の隊長だった。




