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異世界”半”転移譚  作者: 武ノ宮夏之介
序章「現実世界と異世界と」
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6話「冒険者としての初依頼」

妖精女王が姿を消した後のこと。


まぁそれは、やかましく飛び回っては暴言を言いまくってる小さいのがブンブンとうっとおしいことうっとおしいこと。だからといって俺にできることは何もないので、とりあえず好き勝手にさせておくことにした。


その間に俺は、先ほど伝えられたことをまとめることにした。


まずあらゆる事象を半減するという力。

それは自分が意識した相手もそうだし、無意識でも発動することはさっき目覚めた時に発揮されたようだった。鈍痛程度だし。

ただしデメリットもあって、自分のあらゆる感覚から実体までもが半分になってるらしいこと。だからあらゆる事象っていう説明なのかと理解もできた。


……もちろん、知力も半減してるので結構な時間を使って、だ。


にしても、前世が冒険者って知れたのはいいが罠にハマって今の自分になってると思うと微妙な感じがする。


用心しないとなと気を引き締めていると、そういえば先ほどから静かになっているのに気づいた。……こういうとこも感覚が鈍ってるのかな?


フィーナと呼ばれた妖精は、いつの間にかベットですやすやと眠っていた。

そりゃあれだけ暴言吐きまくっては飛びまくってたし……。


窓の近くに行って外を見ると、いつの間にやら夜になっていたので俺も今日は寝ることにした。

……もちろん妖精は、つまんで近くのテーブルに置いてどかしておいた。




翌日のこと。

朝からやかましいことこの上ない妖精を無視して、今日からの冒険者生活に胸を弾ませた。次にいつになったら現実世界に戻るのか分からないが、とりあえずそれまでは冒険者生活を楽しもうと思っている。


「あんた本当にいい度胸してるわね! このあたしを無視なんて」


「あ~、まぁもう自分にチョッカイかけられないって思ったらな~って」


と、協会に行くまでの間に妖精とダベりながら向かうことにした。




そして、協会に辿り着いたと思ったら妖精の登場に建物内がざわついた。

……ああ、昨日のことが広まってるんだね。

だがおかげでこちらを避けてくれるおかげで、協会内のボードへと迎えるというものだ。


さて、正冒険者として初依頼だ!

と思った俺だったが、こちらに近寄ってくるのを感じた俺はそちらに顔を向けると、女性が向かってきた。受付嬢のリエナさんだ。


「あなたには気づきませんでしたが、その……妖精さんがいらっしゃったので」


という感じで話しかけてきたので俺は、ああそうですよねって感じで地味にショックを受けていた。これも存在感の半減効果らしいので仕方ない。


「それで、何か要件が?」


「ええ。妖精さんを連れたあなたに、ということで」


(そうだよね。俺自体、何の武器も使いこなせないし……今まで配達ばかりやってたし)


俺はため息を吐くと、その依頼を聞くことにした。


「西に、2日行った先にある村の近くでオークたちの集落が発見されたとのことで今朝依頼がありました。それを……その、どれくらいの規模なのかといった情報収集のために向かってほしいのです」


俺の存在感の薄さを利用した依頼らしい。

鈍くなった俺の頭でもその意図が読めた。


「ふふふ……2日ね!」


リエナさんの言葉を聞いて、妖精がニマニマし始めた。

何やらこの妖精、企んでる感じがする。


「わ、分かりました。その依頼受けます!」


「ありがとうございます。討伐は考えなくて結構なので、偵察を主に考えてください」


そういうと、依頼書をかざしてきたので俺も自分のネックレスをかざした。

これで依頼受付完了となる。


「結構です。それでは、お気をつけて……もっとも、そちらの方を連れている時点で問題はないと思いますが」


昨日の出来事の一部始終を見られていたらしい事柄からの信用だろうか。

そんな感じで依頼を受け、俺たちは外に出た。




「さ、それじゃあ早速行くわよ」


「いや、門を抜けないといけ――」


俺が何かをいう前に、フィーナは俺の背中に回って持ち上げると、飛び出した!


「おおおおおおおおおおいいいいいいいぃぃぃぃぃ……」


という言葉を残して俺たちは旅立つのだった。




「おえっ、うえっうぷっ……」


空を自由に飛ばされた俺は、一旦休憩ねというこのクソ妖精の言葉とともに地上に降ろされた。もちろんあり得ない速度だったことは言うまでもなく、そのせいで降ろされたところで這いつくばって吐きに吐いていた。


「あは、あはははは! あたしに逆らうのがいけないのよ! バーカ!」


というフィーナの声に俺は、いらだちを覚えるがとにかくこの吐き気を収めるためにしばらく蹲っていた。そして――


「いふぁい、いふぁい!はにふんのよ!」


「お前のせいで、今朝食べたもの!全部吐いちまったじゃねえか!飛ぶなら言えよ!」


吐き気も収まり、何とか落ち着いた俺はフィーナの餅のような頬を詰まんで引っ張りながら文句を言いまくった。


上空100mの急な空の旅は、半減した俺の力をもってしてもインパクト大だった。

これが正常な状態だったらと思うと俺が頬を引っ張るのは仕方ないだろう。


「あたしを無視するシュンスケが悪いのよ! ふん!」


妖精号令とかいうモノによってフィーナは俺を害することはできないが、こういう間接的な方法では可能というのが分かった。……ほんと最悪な検証だ。


「……で、ここはどこだ?」


「あの人間が指した場所の半分といったところね!ふん、あたしの飛行能力をもってすれば2日もかからないわよ!」


あの時見せた怪力と、妖精の羽による飛行能力。

体験することによって恐ろしいことを思い知った俺は、もう少しだけこいつに優しくしようと思ったのは言うまでもない。







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