12話「砂漠の冒険⑦」
「こやつじゃ……こやつによって……わらわの国は……」
そうつぶやいたのは、メジェネアだった。
そこに現れたのは、体長100mは超える超大きな巨人だったからだ。
「ど、どういうことだ?」
「わらわの国を滅亡させんとする血塗られし魔物――ルビーデーモンの真の姿がこやつなのじゃ……。こやつを倒すためにわらわ自身を人柱、贄としてこやつごと封印したのじゃが……」
「シュンスケ! 面白そうな奴が現れたわね!」
と言って、東に行っていたフィーナが帰ってきた。
真の姿となった超巨大巨人ルビーデーモンロードとでも言えばいいのか、こいつを前に相変わらずフィーナは凶悪な顔でワクワクして対峙していた。
ぶれないなぁと思いながらも、ここでこいつが来たことは大きいと思った。
「フィーナ! 良く帰ってきた! あいつ、倒せるよな?」
面倒な敵はフィーナに限るとばかりに、奴へと充てようと……そしてフィーナ自身も飛び込んでいった。
「……あの妖精でも無理なのじゃ」
メジェネアが言うと、その結果がどういうことかがここからでも分かった。
確かにフィーナによって奴の"一部"は吹き飛んだが、まるで逆再生をするようにそこが治っていったのだ。
そうか、フィーナの体躯では線攻撃は可能でも面攻撃ができない。
つまり奴の100mは超える体長全てをカバー攻撃できているわけじゃないのだ。
「なら、核とかはどうだ?」
「……わらわも考えたのじゃ。しかし、奴に核などはない。しいて言えば――」
俺はゴクっとつばを飲み込むと、メジェネアは呟くように言い放った。
「あの体自体が核となるのじゃ」
絶望的な状況に、フィーナは楽しそうに"遊んでいる"が遊んでいる暇じゃない。
フィーナにも消耗というか……飽きとかが出るかもしれないと考えた俺は、フィーナを呼び寄せ戦いを辞めさせた。だが――
その有り余る体長による巨大な一撃が襲ってきた。
帰ってくる途中のフィーナは、その攻撃の拳を攻撃して弾き飛ばした。
それによって俺たちは無事だったのだが――
「はぁ……はぁ……はぁ……」
半減の力を使っていた俺は、疲労の蓄積がとんでもなかった。
「シュンスケ様」
と、そんなところへラビィたちも異変に気づいたのだろう西から戻ってきた。
「はぁ~……、ああラビィ。悪い、ちょっとしんどい」
「半減の力ですの?」
ああ、と応えてつたってきた額からの汗を拭って、腰に指していた水差しを口に含む。奴にかけた半減の力による疲労度はとんでもないものだった。
てことは何か、と俺は考える。
「相手の体積によって……ということか?」
いや、それだけじゃないだろう。
なんせ正方形のピラミッドみたいなところからここまで、ずっと半減の力を使っていたし、その分の蓄積した疲労というのもあると思った。
俺は考える。
奴は再び、再生するとこちらへと叩き込もうとしていた。
半減の力。
半減された力?
俺が半減した力というのは、どこに行く?
今までそれを考えられなかったのは俺の知力が自動的に半分になっていたからだろう。故に……まさかと俺はメジェネアにあることを聞いた。
「メジェネア! あんた、魔法が使えるんだよな?」
今更な質問だが、大事なことだ。
「……わらわは元々魔術を使う。それがどうしたのじゃ」
俺はそんなメジェネアに前を向いてもらい、後ろから肩に手を乗せた。
「む、婿殿……今、子作りをしている場合で「違うわ!……いいから前向け!」」
こいつはなんてことを言うんだ。
見ろ、周りの人間たちの白い目を……。
とにかく俺は、半減された力ではなく考え方を変えて"半減した力"を"メジェネア"へと送り込むように念じた。半減させる力は目の前のルビーデーモンロード。
その力を取り込んでメジェネアへと送るイメージを作り上げた。
すると――
「な、なんじゃ……この……ちから……」
「気を失うな! あいつから奪った力を……、あんたへと上乗せ……ぐっ、きつい」
俺への負担がものすごいことになっている。
それだけの力を俺自身にも負担になっているが、メジェネア自身にも負担になっているんだろう気を失いそうになるのを、声をかけてなんとか意識を保ってもらう。
「魔法を……頼む……」
「わかった……のじゃ……」
そうして、俺がぎりぎりの意識で保っている力によって増大した力を持ってメジェネアは魔法の詠唱を始めた。
「古き渇きの中に恵をもたらさん者――わが呼びかけに応え、大いなる敵を穿つ災とし……くっ!」
周囲から、歓声のような怒号のような様々な声が聞こえていた。
それは頑張れだったり、やれーだったり、倒せーだったり色々だ。
しかしもう限界を超えた力を中継し続けている俺も受け取るメジェネアも、ぎりぎりだった。
「メジェネア!!」
「! かのモノを打ち払わん! ――メジェ・ネ・カレーサ・タベエッサ!(女王の天災)」
その魔法が発動した瞬間のことだった。
砂塵が突如として大巨人を取り囲み、砂嵐となった。
それによって砂同士がこすれ合ってか周囲の温度が一気に上がり、それらは大巨人を取り囲むと揺らぎをもたらす。
火が付き始めたのか明るい赤に染め、そして巨大なる超大巨人を中心として劫火の炎が強烈に差し込みやがて、そのまま全体長を包んでは赤く染め上げ燃やしていった。
ドサっと上半身がミイラのように干からびたメジェネアと力を使い尽くした俺が横に倒れた。
「わらわ……の炎は呪いを帯びた炎……じゃ……」
「そ、それって……」
そのまま大巨人が燃える様を見つめていると赤い劫火の炎の大巨人となったそれはそのまましばらく燃え続け、暴れ、地を揺らしながらもだんだん崩れていき、そのまま消失するように消えていったのだった。
その光景を見て、俺は安心して気を失った。
母さんの飯が食べたいと、そう思いながら。
▽
その様子を、フィーナに持たせた珠を見て安堵のため息をつく存在がいた。
『その力の使い方に気づけて、今回は助かりましたね……それにしても』
見守っていた存在――妖精女王は、正方形の建物のほうを厳しい目線で見ていた。
そこにはいないはずの存在達。
2万5千年もの間、どうやっても人類などが辿り着けないところにいた謎の5人組。
そして――あの悪魔のようなもの。
『……少し探る必要がありそうですね。次の"全王会議"にでも』
そうつぶやくと、手をスライドさせて珠との通信を消した。




