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異世界”半”転移譚  作者: 武ノ宮夏之介
第三章「砂国の冒険」
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9話「砂漠の冒険④」

そこに現れたのは、両腕に包帯をし瑞々しくも肉欲をそそる褐色の肌。

髪は黒く、しかし艶やかなその髪は腰の辺りまで伸びていた。

肉欲の塊である両胸にも、その包帯によって包まれていた。


下半身には装飾過多とも言える飾りがされており、そこから見える褐色の太ももから素足に至るまで完璧なスタイルだ。

……緊迫感のなか、なんで俺はこんなにマジマジとその肉欲をそそるスタイルを見ていられるんだろう。


と、敵対者である悪魔のような姿をした者が先に動いた。

なんと今出現した美女に襲い掛かったのだ。


だが――


「痴れ者が……」


そういうと褐色美女は片腕の包帯をシュルシュルと外すと、手に巻くと炎が生み出されそのままその炎を悪魔のほうへとかざした。すると――


「ガ……ベ……」


という声とともに、悪魔があっという間に燃え尽きてしまった。

なんていう火力なんだと驚きとともに、今度はこちらとばかりに視線を向けてくる。


「して、異邦の者よ。ぬしらもわらわに……敵対するのかの?」


「し、しません!」


別に敵対するためにここにきたわけではなく、どちらかと言えば探検のつもりだった。……まぁ眠りを覚ましたのは俺なんだが。


「……ふむ。お主」


「へ?」


俺のほうに指を指して、何やら考えた褐色美女が言い放った。


「わらわの夫にならぬか?」



…………え?



その唐突なプロポーズにフリーズしたのは仕方のないことだろう。

……なんかリンスが呆れた視線を向けてる気がするが。




しばらくして俺は、NOという答えを突き付けた。


「な、なぜじゃ? わらわのこの容姿そそるであろう? ……夫になれば――」


「いや、確かにそうだけど……」


確かにそうだろう。

だけど、なんというか……ちょっと年が過ぎるというか包帯に包まっていたということはずっとここで眠っていたってことだろう。ということはだ、彼女はきっととんでもない年齢だと過程できる。


見た目は確かにいい線いっている。

だが、惜しいことに俺は褐色よりも白い肌が好きで……こんなこと言うのは、大変に本当に辛いのだが、見た目だけならドストライクなのがフィーナなのだ。


「その昔、求婚が絶えなかったわらわを振るとは……ふふふ、面白いやつじゃの」


「えと、なんかすいません。ところであなたは?」


褐色美女にそう質問をすると、そういえばそうじゃったなと自己紹介を始めた。


「わらわの名は、メジェ・ネ・アラシア21世……今がいつの世かは知らぬが、その昔女王の座についておったものじゃ」


女王……。

てことは、元女王か?


「俺は、シュンスケ。こっちがリンスだ。よろしく」


「メジェネアと呼ぶがよい! 末永くよろしくじゃ、婿殿♪」


「いや、それはいいとして……なんでここで眠りに?」


と、軽く彼女の婿殿をスルーしてここで眠りについていた理由は聞いた。


――その時だった。


―ズズーン、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!


地震のような揺れが建物を襲った。

それに反応したのは、メジェネアだった。


「しもうた。もう"復活"が始まりおったのか……戦力は」


などと言って棺から降り、出口のほうへと走り出した。

俺たちも俺に続き、そして走りながらも事情を聞いた。


それによると――

彼女が戴冠をし、順風満帆かに思われた彼女の統治はわずか数か月と持つことはなく、突如現れた魔物たちによって遮られてしまったそうだ。

未だその頃は安定していたのだが、魔物の増殖が止まらずにいてだんだん戦力が削られていったという。


「わらわも前線で戦っておったのじゃが……明らかに戦力が足らずにおった」


走りながらも息を乱さずに話すメジェネアは、悔しそうに当時のことを語っていた。


「後戻りできぬ状況になった時、わらわは太古の昔にも同様の処置を行ったことによってその後に連なる勇者たちによって魔物を壊滅させたという石板を発見した」


そして、女王メジェネアは自身に流れる太古の血を呼び起こした上で後々の勇者によって再び彼女をおこし、そしてともに討伐をという作戦をとったそうだ。

つまり、彼女は魔物たちの封印を自身の半身――彼女の場合、上半身を――を贄として施したそうだ。


それからは眠りについたので知らないがと話した上で、俺たちに聞いてきた。


「あ、えっと……この建物の周囲には町は――」


と、俺が答えようとするのを遮るようにリンスが答えた。


「ラビィお嬢様を近くに感じます。なので、町自体はこの付近には存在するかと」


「そ、そうなの?」


「はい」


ということだった。

いや、それなら合流してここにくればよかったなと思ったがまぁ仕方ない。


「この揺れは、魔物の復活の予兆じゃ……残念ながらわらわの町が滅びた今、お主らとお主らの仲間、それからわらわの意思を継いだものたちによってあの魔物どもを駆逐せねばならん!」


そうして、走る速度を上げたメジェネアに俺たちも急いでついていくことにしたのだった。







―ズズーン! ズゴゴゴゴゴゴ!!!


「! 地揺れですの?」


その揺れは、外の町にいたラビィたちの元にも訪れていた。

周囲を見れば彼ら彼女らは慌てて避難を、戦えそうなものはこの町の中央にある大きな建物へと向かっていった。


「ちょっとあなた、これはどういうことですの?」


「……女王の眠りが覚めた! あんたらも戦えるんだろ!? 頼む力を貸してくれ! あの中央の建物に集まるんだ!」


と言ってラビィが話しかけた武装した者が駆けだしていった。


(お嬢様、いえ――ラビィ聞こえますか?)


リンス? と声が出てしまい、慌ててイヤリングに集中して心で声をかけた。

そうして事情を聞いたラビィはそうなんですのねと納得し、そのまま合流をするようにリンスに伝えた。


「フィーナ様!コーディ様! ……どうやら――」


先ほどからブンブン飛び回っているフィーナと何やら不穏な感じが下のだろう先ほどから唸って周囲を見渡すコーディに話しかけリンスから聞いた事情を話すと、フィーナは凶悪そうに笑い、コーディは剣を咥えて抜き戦闘準備を開始した。




そして、瞬介たちと合流した冒険者パーティ"Halfassハーファス"+メジェネアが暴れることとなるのだった。

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