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異世界”半”転移譚  作者: 武ノ宮夏之介
第三章「砂国の冒険」
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8話「砂漠の冒険③」

休憩をしながらも、包帯男などの魔物を倒したりして順調に進んでいった。


迷宮都市の迷宮とは違い、あっちこっちという感じではなく道が一本道で、しかも狭いのでリンスにとっては戦いやすいらしい。

そんな感じでこの正方形の一本道迷宮を順調に奥の方へ行っている。


あいつらはどうしてるのだろうか。

たまにそんなことを思う。

フィーナは自分勝手に行動して、ラビィに迷惑をかけてなければいいが。

いや……それよりも、コーディとケンカして迷惑かけてる気がする。


とにかく背中に背負ってるこれと何やら関連がありそうなこの建物を攻略して、それから合流できるなら合流したいところだ。


そしていよいよ、行き止まりらしきところへと着いた。

奥からは何やらブツブツという声が聞こえてくる。


なんらかの呪文だろうか、複数人の声が聞こえてくるためリンスがどうなさいますか?的な視線を向けてきたので、俺はその場で止まり考える。

とはいっても、考えるのは敵対者ではありませんようにということだけ。


「行ってみよう。それで友好的に接して……」


「かしこまりました」


そして奥へと向かう。


奥の空間は、大きさ的には20畳ほどもある広さでその中央には何やら魔法陣の中に人1人が入るくらいの棺が置かれていた。それを囲うのが5人――


と、1人がこっちに気付いたようだ。


「あ、あの!」


俺の言葉など聞かないというように、全員が武器を手に取りこちらへとやってきた。

残念ながら敵対者だったようだ。


リンスが先行するタイミングで、俺は全員に半減の力を使った。

すると途端に動きが鈍くなった自分に違和感を感じたのか、それぞれの反応がおかしくなる。それとともにリンスが1人目に拳を叩き込んだ。


リンスが1人を叩いてる間、抜き身の武器を手にこちらに1人来ていた。

俺は明花とのトレーニングを思い出して、手を取りそのままねじって相手の呼吸に合わせてちょっと強めに投げる。


ぐっというくぐもった声で壁にぶつかった相手へ、交互に襟を引っ張り頸動脈を一気に締めて落とす。


その間にどうやら残り3人をリンスが倒したらしく、お疲れ様ですという感じで頭を下げていた。


「……ふぅ~。実戦では初めてだったけどうまくいって良かった」


「どうなさいます?」


「とりあえず殺すのはなしで。……色々聞きたいし」


ということで5人を縛り上げ、そしてそっと中央の棺に近づいた。

棺から見て北側には祭壇のようなものがあり、ここが特別な部屋だというのが分かった。


重かったが、なんとか棺の蓋をずらして調べようとしたその瞬間――


「ぐぇんごあg;jwぼsp;kヴぁ@」


意識を奪ったはずの5人が気づいた様子で何やら訳の分からない文言で呟くと5人全員が血を吐きそのままずずずーっと力を失ったようにした。


何だという言葉を言う間もなく、突然5人が急速に枯れるように朽ちていくとそこから黒い何かが噴き出して姿を現した。


「なんだ、あれは」


「……わかりません、ですが――」


「ピピー」


という声とともに、何やら衝撃波っぽいものを繰り出してきた。


まともにくらう俺たちだったが、それほどの威力ではない。

どうやら俺の半減の力が見事にハマっているらしい。しかし――


「ガー」


という声というか何かの鳴りモノというかそんな音とともに放ってきた光る何かはびっくりするくらい早くて、外れたがこの建物に穴を開けていった。


あれは、ヤバイ……。


俺は半減の力をあの化け物に使ってるはずなんだけど。


てことは、それでもあの威力ってことか?


姿は何かの書物で出てくる羊の顔をした悪魔のようだが……なんでそれであの声なのかという感じの違和感がある敵だった。


――ガンッ!


「……これは、少々私でも荷が重いかもしれません」


とりあえず、リンスの負担を下げるために体力などバフになるように半減の力を味方側にも使っておくことにした。ただ意識をするだけなんだが、さっきよりも辛い。


そんな中でもリンスは攻撃をするのを辞めず、相手を肉弾戦に持ち込もうとしていた。というかもうしているのがすごい。

相手も相手で、リンスに対して拳や蹴りなどの攻撃をしかけているのだが、ダメージ的には圧倒的にリンスのほうが多い。


それというのも、相手には一切ダメージらしきところはなく、逆にリンスのほうには生傷というかそういうのが増えてきたからだ。


なんて頑丈なんだという言葉がついつい出ちゃうくらいには、相手の攻撃が重い音がしていた。


俺も投げるタイミングや、キメるタイミングなどを探っているのだがその隙が全然ないし、そもそもプロ同士のリングに未だ素人同然の俺が入って行けるとは思えない。


時間と共にジリジリと危険が差し迫っている。

リンスは何度かいいのをもらったのか、途中で拾ったトランクケースを盾替わりにしては蹴りで相手を牽制するという守りの戦いに入っていた。


どうする……どうする……。


と、背中に括りつけていたは使えないかとやけになって背中から外して、包帯を取ろうとしたがなかなか外せない。これ以上半減の力に意識を費やせない俺は、なんとかその固く縛られた包帯を中央のちょっと開いた棺に乗せて、作業をしようとした矢先――なんと手が滑って落としてしまった。


慌てて取ろうとした俺だったが、落とした瞬間にものすごい光が襲ってきて後ろに飛びのいて転んでしまった。


それに驚いたのはおそらく俺以外にも、今現在戦っていた2人もそうだったのだろう。


互いに距離を取り、事の成り行きを見守っている。


そんな中で、光輝いた棺が魔法陣に触れるとまたそのまま黄金の光を放ち、そして棺の蓋に"手"がかかるとそれをそっと押しのけて自ら外した。




そして、聞こえてきた。




「わらわの眠りを妨げるのは誰じゃ?」




棺の中から現れた人影に俺とリンスは互いに守るようにして、壁側に立った。

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