6話「母さん救出作戦」
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瞬介は、角を曲がり数日前に訪れた建物の前に立った。
そしてインターフォンに自らが訪れたことを告げると、しばらくして固く締められた門が開かれた。
「小僧、父親は一緒じゃないのか」
と、周囲を用心深く探りながらも男が瞬介に声をかける。
「まずは俺だけで母さんに会いに来ました。その上で――」
「お前、まだ家にいたんじゃないのか?」
「家? なんのことっすか?」
「……いやいい、こっちのことだ」
入れと言われ、瞬介は何かを扉の向こうへと投げ入れた。
それに不審を覚えた男たちは投げたほうと瞬介のほうに視線が釘付けとなる。
「! 何をしやがった!?」
「す、すいません……虫が袖についたので振り払っただけです」
と、周囲を男たちが見張りがどこかに電話をかけて、特に何もないことが分かると安堵した様子で、瞬介を奥へと通した。
「こっちだ」
建物の中は、いたるところに男がいてこちらを警戒していた。
瞬介はわざと音が立つように歩いているのが気になる男たちだが、やせ我慢がと男たちは静かに忍び笑いをする。
そして――
「親分、小僧が1人できました」
「入れ」
その声に男たちは静かに襖を開けて、首で瞬介に入れと促す。
瞬介は分かったとでもいうように頷いて中に入った。
そこにいたのは、椅子に座りでっぷりと太った腹を撫でその指には、豪華な宝石をあしらった指輪がいくつも付いてて瞬介は思わず悪趣味なと悪態を尽きそうになる。
顔もガマガエルのような顔をして、これでもかというほどの悪人面をしていてなんというか分かりやすいなというのが瞬介のイメージだった。
「手紙は読んでくれたようだが――はて? 小僧、貴様1人か?」
「……ああ、まずは俺が確認して――」
というと、突然傍にいた男に殴られる瞬介。
「小僧、ふざけたことをぬかすんじゃねえぞオラ!」
瞬介は殴られた顔を撫で、す、すいませんと言って再び目の前の男を見る。
「こらこら、いけないよ。子供がこんなところまで1人で勇気を持ってきたんだぞ? あんまり乱暴にしたら――ねぇ?きみぃ?」
そのねっとりとした言葉に、思わずキモっと言いそうになるのを抑えると瞬介ははなしはじめた。
「あの、それで……母さんはどこに?」
「ぬふふ、お母さんのおっぱいが恋しくなったのかね? 安心しなさい。おい」
後ろを振り向き、そこにいた男に声をかけるとしばらくして瞬介の母親・判子を伴って男が現れた。瞬介の目に映ったのは特に怪我やらひどいことをされた様子はないが、かわりに両手を縛られているのが見えた。そして――
「母さん!」
瞬介は思いの限り、その場で大声を出した。
それを抑えようと傍にいた男が瞬介を取り押さえる。
だが、瞬介は叫ぶのを辞めない。
「母さん! ごめん! 俺のせいで!……"ぶきなし"でごめん!」
「瞬介!」
それに痺れを切らしたのか、抑えていた男は一度瞬介の頭を掴むと地面に叩きつけた。
「ガッ!」
「やめて! 相手は子供なのよ! 瞬介っ!」
ようやく叫びが収まったのを確認した男は、体を抑えながらも瞬介の頭を持ち上げた。
「ぐふふ、安心しろ。こうして君の家族は無事なんだ。分ったな?これに懲りたら――」
黙って父親を連れてくるんだと伝えた瞬間――
瞬介は、男の隙をついて振り払いそして目の前に駆けだした。
まさかの行動に男たちが瞬介を抑えようとするが、"いつの間にか"いた少年と少女によって男たちは倒された。
そのままの勢いで、瞬介は駆けつづけてようやくといったところで、何を思ったのか親分と呼ばれた男は、慌てて瞬介の母親である判子に隠し持っていた銃をつきつけ、
そして――
引金を引いたのだった。
それに瞬介は、倒れようとする母親の姿に……その場で立ち止まるのだった。