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異世界”半”転移譚  作者: 武ノ宮夏之介
第二章「現実世界の依頼」
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プロローグ「瞬介のいない異世界で②」

瞬介の意識が"あちら"に行っている間のことだった。


ちなみにこの場にフィーナはいない。

いつものことだ。瞬介さえ無事であれば、彼女は自分たち――ラビィとは一緒にもいたくないらしくどこかへとフラっと出かけては、食料を採ってきて瞬介に食べさせなさい!といってまた出かける。


この5日の間、起きた瞬介がぼーっと外を見て話しかけても何も応答をしないし、何も話しかけてこないなどフィーナが言っていた抜け殻モードな瞬介の対応などといったそんなやり取りをしててすっかり慣れたラビィであったが、その日は少し違った。


それらは突然、瞬介たちを乗せた馬車の前に現れた。


「何ですの? ……リンス」


御者をしている自分の半身に声をかけると、リンスは冷静に答えた。


「この先で戦闘が起こっております」


そう、馬車の前で戦闘が起こっていた。


「盗賊の類ですの? でしたら――」


「いえ、違います……というか、襲われているのはどうやら魔物のようで」


その言葉に不思議な声色が乗っていた自分の半身に疑問を抱いたラビィは、馬車を降りると前へと歩いていく。


そこにいたのは、一匹の獣――魔獣の類だった。

しかも相当戦ったのだろうか、毛皮が血だらけになっていて瀕死とでもいうべき状態だった。

その姿も妙だ。

何せ、剣を"咥えて"威嚇しているからだ。


「へっへっへ……、もう諦めてその剣を渡しやがれ!そしてお前の毛皮もな!」


冒険者という感じでもなく、どこかの衛兵という感じでもない――下品な身なりのそれはまさに盗賊といった連中の恰好だった。

ラビィは、魔獣らしきもののほうと盗賊のほうへ目を向けそしてため息を吐く。


どちらにも興味はない。

ゆえに、この場は去ろうと。


だがしかし……1人、その光景を許せないとここに来るはずのない人間が現れた。


「シュンスケ様!?」


それは誰あろう、瞬介だった。

起きていてもぼーっとして動かず、騒がず、応答もしないはずの瞬介がなぜか動いているのだ。


「! なんだ、てめぇは!?」


それは、遮るラビィを振り払って一匹の魔獣の前に手を広げた。


なぜ?

それがラビィの率直な感想だった。


「……それがシュンスケ様の「シュンスケーーーーー!」……って、遅いですわ」


そこに現れたのは、瞬介の護衛を務める妖精フィーナだった。


「人間! なんでシュンスケが動いているの!!」


「わたくしにも分かりませんわ……突然、こうなりましたの」


「てめぇら……妖精!? なんだ一体こいつらは」


その突然の出現に盗賊たちも唖然とするしかなかった。


動いたのは呻いていた魔獣が、咥えた剣を離したのが切っ掛けだった。


「野郎共! 妖精と上玉のご令嬢様までついてきたぜ!やれー!」






「……ま、こんなものですわね」


「ふん! クソな人間たちが! お前たち人間があたしに敵うはずないでしょうが!」


瞬殺だった。

フィーナが殴りかかり、ラビィとリンスが蹴ったりトランクケースを振り回したりとであっという間にカタがついた。


盗賊たちを片付けたフィーナやラビィたちが、ため息をついて振り返るとそこには涙を流して何かを呟く瞬介の姿があった。魔獣は気を失ったのか、瞬介に撫でられるままにされて大人しくなっていた。


「シュンスケ! 起きてるなら……って、なんて?」


「フィーナ様、少し黙っててくださいな。何かシュンスケ様がおっしゃってますわ」


「に、人間の――」


それはラビィに怒りの言葉をぶつけようとしたフィーナの耳にも聞こえた。







「い……やだ……もう……二度と……」




パチパチとたき火をしている音がする静かな夜の帳。

ラビィは一度、寝ている瞬介と魔獣のいる馬車のほうへ視線を向けると、フィーナのほうへと視線を向けて質問をした。


「……シュンスケ様が、ああやって何か行動をすることはないとお聞きしましたが?」


フィーナは面白くもなさそうに、飛び回って答えた。


「その通りよ! ……今までシュンスケがああやって何か行動することはなかったのよ! あたしもびっくりしたわよ。なんであんな獣を」


「そうでしたのね。……わたくしもずっとぼーっとされているシュンスケ様でしたから、ああまであの魔獣を庇いなおかつ涙まで浮かべてらっしゃる様子というのは、初めてですわ」


そう。

あの時、瞬介は泣いていた。

そして嫌だもう二度とと何かから魔獣を守るようにしていた。

ラビィが何度も、もう大丈夫ですわよと声をかけることでようやく力を抜き、

そして魔獣に向かって倒れ込んだのだ。


その後は瞬介を寝かせ、その後に魔獣の手当をして魔獣が咥えていた剣を魔獣が装備していた鞘に収めた。


「……あの魔獣、何者でしょうか」


「ふん! 知らないわ! もうあたしは寝るわ」


そう言ってフィーナも瞬介の乗る馬車に向かって飛んでいった。


その態度に、未だに受け入れられてないのですねと呟くとラビィも寝ることにした。


そして翌日――

瞬介はなぜか魔獣を撫でて、魔獣も瞬介の撫でられるままにされていた。

ラビィも撫でようとしたが、なぜか威嚇されたためあえなく断念したのは言うまでもなくそうしているうちに瞬介が目を覚まして、この魔獣は何ー!? と慌てたのはフィーナも、ラビィも驚くこととなったのだった。

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